令和7年-問37 商法 会社法
Lv4
問題 更新:2026-01-12 01:30:50
発起人に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。
- 発起人とは、定款に署名、記名押印または電子署名をした者をいうが、定款に署名、記名押印または電子署名をしていないものの、実質的に設立を企画し尽力した者であれば、会社の設立事務を行う義務と権限を有する発起人とみなされる。
- 発起人は、設立時発行株式と引換えにする金銭の払込みまたは財産の給付についてあらかじめ定めた期日またはその期間内に出資の履行をしないときは、直ちに当該出資の履行により設立時発行株式の株主となる権利を失う。
- 設立時募集株式と引換えに給付した現物出資財産の価額が当該現物出資財産について定款に記載され、または記録された価額に著しく不足するときは、当該現物出資財産を給付した引受人は、発起人および設立時取締役と連帯して、株式会社に対し当該不足額を支払う義務を負う。
- 株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益について定款の定めがない場合には、株式会社の成立の時までに、発起人の全員の同意または創立総会の決議によって当該事項を決定することができる。
- 設立時発行株式を引き受ける者の募集をする場合には、発起人は、設立時募集株式と引換えにする金銭の払込みの期日または期間の末日のうち最も遅い日以後、遅滞なく、創立総会を招集しなければならない。
正解 5
解説
発起人とは、定款に署名、記名押印または電子署名をした者をいうが、定款に署名、記名押印または電子署名をしていないものの、実質的に設立を企画し尽力した者であれば、会社の設立事務を行う義務と権限を有する発起人とみなされる。 1.誤り
実質的に設立を企画し尽力しても、定款に署名、記名押印または電子署名をしていなければ、発起人とみなされない。
発起人とは「定款に発起人として署名した者」と定義されるが(会社法26条1項)、会社設立の際に発起人らしい行動をしても、定款に住所・氏名を記載して署名をしなかった者は発起人ではない(大判明治41年1月29日)。
なお、募集設立においては、募集広告やその他書面等に賛同者として氏名を記載することを承諾すると、定款に署名していなくても設立に関する義務と権利を有す。これを「疑似発起人」という。
疑似発起人は募集設立においてのみ適用され、不特定多数の出資者に対して広告などで賛同者として名を出す事で発起人と同様の責任を負うものである(会社法103条4項)。
発起人は、設立時発行株式と引換えにする金銭の払込みまたは財産の給付についてあらかじめ定めた期日またはその期間内に出資の履行をしないときは、直ちに当該出資の履行により設立時発行株式の株主となる権利を失う。 2.誤り
権利株の失効について、まず、発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、またはその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない(会社法34条1項本文)。
しかし、発起人があらかじめ定められた期日または期間内に出資の履行を怠ったとしても、直ちに権利を失うわけではなく、他の発起人による期日を定めた通知という催告の手続きが必要となる(会社法36条1項)。
そして、この通知による最終期限を過ぎて初めて権利が喪失するため(会社法36条3項)、本肢の記述は誤り。
設立時募集株式と引換えに給付した現物出資財産の価額が当該現物出資財産について定款に記載され、または記録された価額に著しく不足するときは、当該現物出資財産を給付した引受人は、発起人および設立時取締役と連帯して、株式会社に対し当該不足額を支払う義務を負う。 3.誤り
会社法34条が発起人の金銭以外の財産の給付について定めているのに対し、会社法63条では設立時募集株式を引受けるための払い込み方法として金銭のみについて定めていることから、募集設立における現物出資は発起人のみが行える。
そして募集設立は、まず発起人が設立時発行株式を引受け、その後、発起人以外の設立時募集株式の引受人の割り当てを行う。
そのため、設立時募集株式を引き受けるのは発起人以外の者となる。
①募集設立における現物出資は発起人のみが行える。
②設立時募集株式を引き受けるのは発起人以外の者となる。
問題文は「設立時募集株式と引換えに給付した現物出資財産」とあり、設立時募集株式を引き受けるために現物出資を行ったような記述があるが、これは①②に矛盾し誤りである。
また設立時募集株式の引受方法として現物出資が可能であったと仮定して、その現物の価額に不足が生じたとしても、その引受人は株主となれないだけで他の発起人や設立時取締役と連帯して不足額を支払う義務はないため誤りである。
なお、「設立時募集株式」を「募集設立株式会社による設立時発行株式」と広く誤認すれば、①のとおり現物出資した引受人は発起人であるので、他の発起人および設立時取締役と連帯して不足額を支払う義務を負うと答えを導いてしまうだろう。すんなりと解けない後味の悪い問題である。
株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益について定款の定めがない場合には、株式会社の成立の時までに、発起人の全員の同意または創立総会の決議によって当該事項を決定することができる。 4.誤り
定款の定めがない場合に、発起人の全員の同意または創立総会の決議によって当該事項を決定することができる旨の規定はない。
株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益およびその発起人の氏名または名称は、定款に記載し、または記録しなければ、その効力を生じない(会社法28条3号)。
設立時発行株式を引き受ける者の募集をする場合には、発起人は、設立時募集株式と引換えにする金銭の払込みの期日または期間の末日のうち最も遅い日以後、遅滞なく、創立総会を招集しなければならない。 5.正しい
会社法65条1項に、「会社法57条1項の募集をする場合には、発起人は、会社法58条1項3号の期日または同号の期間の末日のうち最も遅い日以後、遅滞なく、設立時株主の総会(創立総会)を招集しなければならない」と定められている。
「会社法57条1項の募集」とは、設立時発行株式を引き受ける者の募集を指す(募集設立)。
「会社法58条1項3号の期日または同号の期間の末日」とは、募集に応じて株式を引き受ける者が、その払込金額の全額を払い込むべき期日または期間の末日を指す。