令和7年-問34 民法 債権
Lv4
問題 更新:2026-01-12 01:19:51
不当利得に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 盗品である動産甲を、盗品とは知らずに、甲と同種の物の販売業者から購入して引渡しを受けた買主が、所有者に甲を返還すべき場合、その買主は、所有者に対して、返還するまでの間における甲の使用利益相当額を支払わなければならない。
- 他人物である動産乙の売買契約に基づいてその引渡しを受けた買主が、その後乙を所有者に返還して売買契約を解除した場合、その買主は売主に対して、返還するまでの間における乙の使用利益相当額を支払う義務を負わない。
- 違法な賭博を目的とする契約に基づいて賭金を支払った者は、いつでも当該契約が無効であることを理由として、相手方に対して賭金の返還を求めることができる。
- 不倫関係の維持を目的として丙建物(既登記建物)の所有者Aが丙建物を受贈者Bに贈与してこれを引き渡したが、所有権移転登話手続が未了であった場合、その贈与者Aは当該契約が無効であることを理由として、Bに対して丙建物の返還を求めることができる。
- Aを貸主、Bを借主とする金銭消費貸借契約において、AがBに対して有する貸金債権につき、BがCから騙取した金銭をもって弁済を行った場合、Cは、弁済として受領した金銭が騙取金である旨をAが知っていたか否かを問わず、Aに対してその返還を求めることができる。
正解 4
解説
盗品である動産甲を、盗品とは知らずに、甲と同種の物の販売業者から購入して引渡しを受けた買主が、所有者に甲を返還すべき場合、その買主は、所有者に対して、返還するまでの間における甲の使用利益相当額を支払わなければならない。 1.妥当でない
「返還するまでの間における甲の使用利益相当額を支払わなければならない」は妥当でない。
盗品または遺失物の占有者は、民法194条に基づきその盗品等の引渡しを拒むことができる場合には、代価の弁償の提供があるまでの使用収益権を有する(最判平成12年6月27日)。
したがって、本肢の買主は、所有者が代価の弁償をするまでは使用収益を行う権限を有するので、使用利益相当額を支払う義務を負わない。
| 民法194条 |
|---|
| 占有者が、盗品または遺失物を、競売もしくは公の市場において、またはその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者または遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。 |
他人物である動産乙の売買契約に基づいてその引渡しを受けた買主が、その後乙を所有者に返還して売買契約を解除した場合、その買主は売主に対して、返還するまでの間における乙の使用利益相当額を支払う義務を負わない。 2.妥当でない
「返還するまでの間における乙の使用利益相当額を支払う義務を負わない」は妥当でない。
当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。
この場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない(民法545条1項本文、民法545条3項)。
そして、他人物売買であったときにも使用利益の返還義務が適用されるかについて、判例は「売買契約が解除された場合に、目的物の引渡を受けていた買主は、原状回復義務の内容として、解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主に返還すべき義務を負うが、これは、他人の権利の売買契約において、売主が目的物の所有権を取得して買主に移転することができず、契約が解除された場合についても同様である」としている。
さらに、他人物売買が債務不履行を理由として解除されたときに、買主が目的物の使用利益を売主に対して返還するべきか、所有者に対して返還するべきかについて、「解除によって売買契約が遡及的に効力を失う結果として、契約当事者に該契約に基づく給付がなかったのと同一の財産状態を回復させるためには、買主が引渡を受けた目的物を解除するまでの間に使用したことによる利益をも返還させる必要があり、売主が、目的物につき使用権限を取得できず買主から返還された使用利益を究極的には正当な権利者からの請求により保有できない立場にあったとしても結論を左右するものではない」(最判昭和51年2月13日)とした。
違法な賭博を目的とする契約に基づいて賭金を支払った者は、いつでも当該契約が無効であることを理由として、相手方に対して賭金の返還を求めることができる。 3.妥当でない
賭博行為は公序良俗違反にあたり(民法90条)、不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない(民法708条)。
不法原因給付にあたる場合、互いに履行の請求はできないばかりか、その給付したものの返還を請求することもできない。この考えは、裁判所は不法な請求には関与しないというクリーン・ハンズの法理(法廷に出てくる者は「きれいな手」でなければならない、というイギリスの法理)が根底にある。
もっとも、不法の原因が受益者についてのみ存した場合には、給付者からの不当利得返還請求を認めている(民法708条ただし書き)。
不倫関係の維持を目的として丙建物(既登記建物)の所有者Aが丙建物を受贈者Bに贈与してこれを引き渡したが、所有権移転登話手続が未了であった場合、その贈与者Aは当該契約が無効であることを理由として、Bに対して丙建物の返還を求めることができる。 4.妥当である
愛人関係を維持するために、物を贈与する行為は、公序良俗違反にあたり(民法90条)、不法原因給付としてその給付の返還を請求することができなくなる(民法708条)
不法原因給付に基づく既登記建物の贈与において、給付がなされたというには、引渡しのみでは足りず、所有権移転登記手続がなされていることをも要するとされている(最判昭和46年10月28日)。
本肢の事例では、丙建物は既登記建物を引き渡しただけで、所有権移転登記手続きが終わっていないことから、給付したとはみなされず、AはBに対して丙建物の返還を求めることができる。
なお、未登記建物については、引渡しだけで給付がなされたとされるため、不当利得による返還請求はできない(最判昭和45年10月21日)。
Aを貸主、Bを借主とする金銭消費貸借契約において、AがBに対して有する貸金債権につき、BがCから騙取した金銭をもって弁済を行った場合、Cは、弁済として受領した金銭が騙取金である旨をAが知っていたか否かを問わず、Aに対してその返還を求めることができる。 5.妥当でない
「Aが知っていたか否かを問わず」というのは妥当でない。
Aが悪意または重過失のときに返還を求めることができる。
BがCから騙取または横領した金銭により自己の債権者Aに対する債務を弁済した場合において、当該弁済の受領につきAに悪意または重大な過失があるときは、Aの当該金銭の取得は、Cに対する関係においては法律上の原因を欠き、不当利得となる(最判昭和49年9月26日)。