令和7年-問30 民法 物権
Lv5
問題 更新:2026-01-12 01:17:26
Aは、Bとの間でA所有の建設機械甲(以下「甲」という)をBに売却する旨の本件売買契約を締結し、甲をBに引き渡したが、弁済期が徒過したにもかかわらずBから代金の支払を受けていない。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- AはBに対して、催告した上で代金不払を理由として本件売買契約を解除する旨の通知を行った場合、その後Bは甲をCに売却して引き渡したとしても、Aは、Cに対して甲の返還を求めることができる。
- DがBから甲の修理を請け負い、修理を終えて甲をBに返還したが報酬の支払を受けていない場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使して、Dに先立って優先弁済を受けることができる。
- BがEのために甲に質権を設定した場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使して、Eに先立って優先弁済を受けることができる。
- BがFのために甲を譲渡担保に供して占有改定の方法により引き渡した場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使することができ、Fはこれに対して異議を述べることはできない。
- 本件売買契約において所有権留保特約が設けられていた場合、BがGのために甲を譲渡担保に供して占有改定の方法により引き渡したとしても、Aは、Bに対して留保所有権に基づいて甲の引渡しを求めることができ、Gはこれに対して異議を述べることはできない。
正解 5
解説
AはBに対して、催告した上で代金不払を理由として本件売買契約を解除する旨の通知を行った場合、その後Bは甲をCに売却して引き渡したとしても、Aは、Cに対して甲の返還を求めることができる。 1.妥当でない
動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない(民法178条)。
売買契約が解除され、その所有権がAに復帰した場合でも、Aに対して引き渡しがない以上、Aは引渡しを受けているCに対して、甲の返還を求めることはできない。
DがBから甲の修理を請け負い、修理を終えて甲をBに返還したが報酬の支払を受けていない場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使して、Dに先立って優先弁済を受けることができる。 2.妥当でない
「Aは、甲につき先取特権を行使して、Dに先立って優先弁済を受けることができる」は妥当でない。
Dの債権は目的物の財産価値を維持増加させる動産の保存により生じた債権であるため、Aの動産の売買により生じた債権よりも、Dの債権の方が優先弁済を受けることになる。
動産の保存、動産の売買によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する(民法311条4号・5号)。
そして、同一の動産について特別の先取特権が互いに競合する場合、優先権の順位は、動産の保存の先取特権が動産の売買に優先する(民法330条1項2号・3号)。
BがEのために甲に質権を設定した場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使して、Eに先立って優先弁済を受けることができる。 3.妥当でない
「Aは、・・・、Eに先立って優先弁済を受けることはできる」は妥当でない。
Eの質権は第一順位の先取特権者と同一の権利を有するので、Aの動産の売買よりも優先することになる。
先取特権と動産質権とが競合する場合には、動産質権者は、動産の先取特権の順位の規定により、動産の売買よりも優先する権利を有する(民法334条、民法330条1項3号)。
BがFのために甲を譲渡担保に供して占有改定の方法により引き渡した場合においても、Aは、甲につき先取特権を行使することができ、Fはこれに対して異議を述べることはできない。 4.妥当でない
「Aは、甲につき先取特権を行使することができ、」は妥当でない。
先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない(民法333条)。
Fが第三者に該当するかについて、判例は「集合物譲渡担保者について、特段の事情がない限り、第三取得者にあたる」(最判昭和62年11月10日)としている。
そして、この「引き渡し」には、占有改定を含む(大判大正6年7月26日)。
以上のことから、Aは、甲について先取特権を行使することはできない。
本件売買契約において所有権留保特約が設けられていた場合、BがGのために甲を譲渡担保に供して占有改定の方法により引き渡したとしても、Aは、Bに対して留保所有権に基づいて甲の引渡しを求めることができ、Gはこれに対して異議を述べることはできない。 5.妥当である
動産の割賦払約款付売買契約において、代金完済に至るまで目的物の所有権が売主に留保され、買主に対する所有権の移転は代金完済が停止条件としている場合、代金完済に至るまでの間に買主の債権者が目的物に対して強制執行に及んだとしても、売主あるいは売主から目的物を買い受けた第三者は、所有権に基づいて第三者異議の訴えを提起し、その執行の排除を求めることができる(最判昭和49年7月18日)。
したがって、所有権の留保特約が付された売買契約の売主であるAは、Bに対して留保所有権に基づいて甲の引渡しを求めることができ、Gはこれに対して異議を述べることはできない。