令和7年-問29 民法 物権
Lv3
問題 更新:2026-01-12 01:16:48
即時取得に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア.Aは、相続により、被相続人Bが現に占有していた動産甲を、それが設置された不動産と共に承継したが、甲はCの所有物であった。この場合、甲がBの所有物でないことにつきAが善意・無過失であれば、Aは甲を即時取得する。
イ.Aは、売買により動産乙を、現にそれを占有する未成年者Bから購入して現実の引渡しを受けたが、その後、Bの法定代理人Cが、AB間の売買契約を未成年を理由に取り消した。この場合、Bが未成年者であったことにつきAが善意・無過失であれば、Aは乙を即時取得する。
ウ.Aは、売買により動産丙を、現にそれを占有するBから購入して現実の引渡しを受けた。丙が自動車である場合、丙が登録済みであるか否かにかかわらず、Aは丙を即時取得しない。
エ.Aは、売買により動産丁を、それを占有代理人Cによって占有するBから購入し、BはCに今後Aのために占有するように指示してAがそれを承諾した。丁はAからBに寄託されているものであった場合、承諾時において丁がBの所有物でないことにつきAが善意・無過失であれば、後にその事実を知るに至ったとしても、Aは丁を即時取得する。
オ.Aは、売買により動産戊を、現にそれを占有するBから購入したが、その際、AがBの元に戊を引取りにいくこととし、それまでの間、BがAのために占有することが合意された。戊はBが他から賃借したものであった場合、AがBから戊の現実の引渡しを受ける時点において、戊がBの所有物でないことにつきAが善意・無過失であれば、Aは戊を即時取得する。
- ア・ウ
- ア・オ
- イ・ウ
- イ・エ
- エ・オ
正解 5
解説
妥当なものは、エ・オである。
即時取得とは、無権利者の動産占有者と取引をした者に権利取得を認める制度で、民法は、「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」(民法192条)としている。
| 即時取得の要件等 |
|---|
|
①対象が動産であること(例外:登録制度のある、自動車、船舶などは対象外) ②前主が無権利者であること ③取引行為によること ④平穏、公然、善意、無過失に占有開始したこと |
※制限行為能力者、詐欺、錯誤、強迫、無権代理人である場合などはそれらの制度を適用させることから対象外としている。
Aは、相続により、被相続人Bが現に占有していた動産甲を、それが設置された不動産と共に承継したが、甲はCの所有物であった。この場合、甲がBの所有物でないことにつきAが善意・無過失であれば、Aは甲を即時取得する。 ア.妥当でない
相続は上記③の取引行為ではないため、要件を充足せずAは甲を即時取得しない。
冒頭解説・表を参照。
Aは、売買により動産乙を、現にそれを占有する未成年者Bから購入して現実の引渡しを受けたが、その後、Bの法定代理人Cが、AB間の売買契約を未成年を理由に取り消した。この場合、Bが未成年者であったことにつきAが善意・無過失であれば、Aは乙を即時取得する。 イ.妥当でない
制限行為能力者や無権代理人による処分の場合、意思表示の瑕疵、欠缺の場合、即時取得の制度の適用はない。
なぜなら、制限行為能力者制度や無権代理人制度等が無意味になってしまうからである。
冒頭解説・表を参照。
Aは、売買により動産丙を、現にそれを占有するBから購入して現実の引渡しを受けた。丙が自動車である場合、丙が登録済みであるか否かにかかわらず、Aは丙を即時取得しない。 ウ.妥当でない
「自動車が登録済みであるか否かにかかわらず、Aは丙を即時取得しない」は妥当でない。
道路運送車両法による登録を受けている自動車は、登録制度によって公示されているものなので即時取得における対象となる動産には含まれない(最判昭和62年4月24日)。
しかし、未登録の自動車については、即時取得における対象となる動産には含まれる(最判昭和45年12月4日)。
なお、同様に登録制度によって公示されている船舶、航空機なども即時取得における対象となる動産には含まれないことになる。
Aは、売買により動産丁を、それを占有代理人Cによって占有するBから購入し、BはCに今後Aのために占有するように指示してAがそれを承諾した。丁はAからBに寄託されているものであった場合、承諾時において丁がBの所有物でないことにつきAが善意・無過失であれば、後にその事実を知るに至ったとしても、Aは丁を即時取得する。 エ.妥当である
代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する(民法184条)。
指図による占有移転は、上記④の占有開始したことと、判例において認められている。
「寄託者が倉庫業者に対して発行した荷渡指図書に基づき倉庫業者が寄託者台帳上の寄託者名義を変更して寄託の目的物の譲受人が指図による占有移転を受けた場合には、即時取得(民法192条)の適用がある」(最判昭和57年9月7日)
Aは、売買により動産戊を、現にそれを占有するBから購入したが、その際、AがBの元に戊を引取りにいくこととし、それまでの間、BがAのために占有することが合意された。戊はBが他から賃借したものであった場合、AがBから戊の現実の引渡しを受ける時点において、戊がBの所有物でないことにつきAが善意・無過失であれば、Aは戊を即時取得する。 オ.妥当である
即時取得の成立には無権利者からの譲受人が一般外見上従来の占有状態に変更を生ずるような占有を取得する必要があるため、占有改定の方法による占有取得は認められない。
しかし、現実の引渡しを受ける時点において、無権利者であることにつき善意無過失であれば、即時取得の要件を充足する。
冒頭解説・表を参照。