令和7年-問28 民法 総則
Lv3
問題 更新:2026-01-12 01:15:55
代理人の行う代理行為に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア.任意後見契約に基づく任意代理人は、任意後見契約で定められた被後見人の財産に関する代理行為を行うのに対し、家庭裁判所の審判により選任された法定代理人である後見人は、家庭裁判所の審判において定められた被後見人の特定の財産行為についてのみ代理行為を行う。
イ.法定代理人は、任意代理人と異なり、いつでも復代理人を選任することができるが、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任および監督についての責任のみを負う。
ウ.法定代理人も任意代理人も、本人が死亡した場合には当然に代理権を失うが、任意代理については、本人と任意代理人との間に本人が死亡した後も代理権が存続する旨の合意がある場合には、本人が死亡した後も代理権が存続する。
エ.代理人であった者がその代理権が消滅した後に、その代理権の範囲内において代理行為を行った場合、その者が当該代理人が任意代理人であったか法定代理人であったかを問わず、本人は、代理権の消滅について善意・無過失の第三者に対して、その責任を負う。
オ.代理人が制限行為能力者であったとしても、当該代理人の代理行為を制限行為能力を理由として取り消すことはできず、これは当該代理人が他の制限行為能力者の法定代理人である場合でも同様である。
- ア・エ
- ア・オ
- イ・ウ
- イ・オ
- ウ・エ
正解 3
解説
妥当なものは、イ・ウである。
任意後見契約に基づく任意代理人は、任意後見契約で定められた被後見人の財産に関する代理行為を行うのに対し、家庭裁判所の審判により選任された法定代理人である後見人は、家庭裁判所の審判において定められた被後見人の特定の財産行為についてのみ代理行為を行う。 ア.妥当でない
「法定代理人である後見人は、・・・被後見人の特定の財産行為についてのみ代理行為を行う」というのは妥当でない。
任意後見制度とは、本人が自己の判断能力が不十分になる場合に備えて、任意後見受任者と任意後見契約を締結し、自己の法律行為を代理でしてもらうことを、他人に委ねる制度である。
任意後見契約は、生活や財産の管理に関する事務を委託する任意契約であり、任意後見人は契約に委ねられた事項について代理権を有する。
一方、家庭裁判所の審判により選任された法定代理人である後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する(民法859条1項)とし、被後見人の財産に関する行為について包括的な代理行為を行う。
法定代理人は、任意代理人と異なり、いつでも復代理人を選任することができるが、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任および監督についての責任のみを負う。 イ.妥当である
法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任および監督についての責任のみを負い(民法105条)、委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない(民法104条)。
法定代理人の本人は、基本的に自由に代理人を選任する自由を持っていないため、本人に効果が帰属する行為を法定代理人の判断に委ねても支障はないと考えられる。
また、親権者のような代理人の意思とは関係なく選任される法定代理人にとって、本人に代わり行為を行うことは過度な負担となる場合もあることから、法定代理人は自己の責任で自由な復代理人の選任が認められている。
一方、任意代理人の本人は、基本的に本人の意思に基づいて自由に代理人を選任する自由ができる。
任意代理人による本人の意思に反した復代理人を選任することは妥当でないことから、許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。
なお、上記以外でされた選任は無効となり、復代理人が本人を代理してした法律行為は無権代理行為となる。
法定代理人も任意代理人も、本人が死亡した場合には当然に代理権を失うが、任意代理については、本人と任意代理人との間に本人が死亡した後も代理権が存続する旨の合憲がある場合には、本人が死亡した後も代理権が存続する。 ウ.妥当である
| 代理権の消滅事由(民法111条1項・2項、民法653条) | |
|---|---|
| 本人 |
|
| 代理人 |
|
また、判例は「任意代理について、本人と任意代理人との間に本人が死亡した後も代理権が存続する旨の合憲がある場合には、本人が死亡した後も代理権が存続する」(最判昭和31年6月1日)としている。
代理人であった者がその代理権が消滅した後に、その代理権の範囲内において代理行為を行った場合、その者が当該代理人が任意代理人であったか法定代理人であったかを問わず、本人は、代理権の消滅について善意・無過失の第三者に対して、その責任を負う。 エ.妥当でない
「任意代理人であったか法定代理人であったかを問わず」というのは妥当でない。
他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない(民法112条1項)とし、他人に代理権を与えた者すなわち、任意代理人について定めている。
では、法定代理人に当該条文が適用されるかについては、法定代理権は、本人が与えるものではないことから、法定代理人の本人は、法定代理権の消滅後にした行為について責任を負わない。
代理人が制限行為能力者であったとしても、当該代理人の代理行為を制限行為能力を理由として取り消すことはできず、これは当該代理人が他の制限行為能力者の法定代理人である場合でも同様である。 オ.妥当でない
「当該代理人が他の制限行為能力者の法定代理人である場合でも同様である」というのは妥当でない。
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない(民法102条)。
制限行為能力者を任意代理人として選任した場合、本人は代理人が制限行為能力者と分かったうえで選任しているのだから、制限行為能力を理由に意思表示を取り消すことができないが、本人の意思によって選任することができない法定代理人が制限行為能力者の場合は例外が認められる。
これは、取り消しが認められないと、本人の保護という制限行為能力制度の目的が達せられないおそれがあることと、本人が代理人を選任したわけではないのに、代理人が制限行為能力者であることのリスクを本人に負担させることを防ぐためである。
例えば、未成年者である子の父親が成年被後見人の場合、父親が子を代理して行った法律行為については取消しができる。