令和7年-問22 行政法 地方自治法
Lv3
問題 更新:2026-01-12 00:51:50
条例の適法性に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- ため池の破損等の原因となる堤とうの使用行為は憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外にあることから、これを条例をもって禁止し、処罰の対象にしても憲法および法律に抵触するものとはいえない。
- 地方自治法の定める相当に具体的な内容の事項につき、同法に基づき限定された刑罰の範囲内において、条例をもって罰則を定めることは憲法31条に反するとはいえない。
- 暴走族による集会等を規制する暴走族追放条例は、その規制対象が本来的な意味における暴走族およびその類似集団による集会に限定されると解されることから、憲法21条1項、31条に反するとはいえない。
- 国民健康保険の保険料率を定める国民健康保険条例が、市長に対して、条例の定める基準に基づき保険料率を決定・公示することを委任したとしても、そのことが憲法84条の趣旨に違反するとはいえない。
- 集団行進および集団示威行為における交通秩序の維持を目的とする条例は、道路交通法と同一の行為を処罰することになるため、憲法31条に違反する。
正解 5
解説
ため池の破損等の原因となる堤とうの使用行為は憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外にあることから、これを条例をもって禁止し、処罰の対象にしても憲法および法律に抵触するものとはいえない。 1.妥当である
憲法29条2項は「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」としているが、条例で財産権の規制を行うことができるのか問われている。
「ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていないものであって、憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外にあるものというべく、従って、これらの行為を条例をもって禁止、処罰しても憲法および法律に抵触またはこれを逸脱するものとはいえない。」
その理由として、「本条例(ため池の保全に関する条例)は、災害を防止し公共の福祉を保持するためのものであり、ため池の堤とうを使用する財産上の権利の行使を著しく制限するものではあるが、結局それは、災害を防止し公共の福祉を保持する上に社会生活上やむを得ないものである。
そのような制約は、ため池の堤とうを使用し得る財産権を有する者が当然受忍しなければならない責務というべきであり、憲法29条3項の損失補償は必要でない」(奈良県ため池条例事件:最大判昭和38年6月26日)からである。
地方自治法の定める相当に具体的な内容の事項につき、同法に基づき限定された刑罰の範囲内において、条例をもって罰則を定めることは憲法31条に反するとはいえない。 2.妥当である
憲法31条は「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命もしくは自由を奪われ、またはその他の刑罰を科せられない。」としているが、法律ではない条例で罰則を定めることは憲法31条の罪刑法定主義の原則に反しないかどうか問われている。
白紙委任は許されないとするが、憲法31条は必ずしも刑罰がすべて法律そのもので定められなければならないとするものではなく、相当に具体的な内容の事項につき、限定された刑罰の範囲内において、条例をもって罰則を定めることができるとしたのは、憲法31条の意味において法律の定める手続によって刑罰を科すことができるのであって、同条に違反するとはいえない(最判昭和37年5月30日)。
暴走族による集会等を規制する暴走族追放条例は、その規制対象が本来的な意味における暴走族およびその類似集団による集会に限定されると解されることから、憲法21条1項、31条に反するとはいえない。 3.妥当である
憲法21条1項は「集会、結社および言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」としているが、条例の定める定義が広く、これが憲法21条1項、憲法31条に違反しているのではないかどうか問われている。
広島市暴走族追放条例16条1項1号にいう「集会」は、暴走行為を目的として結成された集団である本来的な意味における暴走族の外、服装、旗、言動などにおいてこのような暴走族に類似し社会通念上これと同視することができる集団によって行われるものに限定されると解され、このように解釈すれば、憲法21条1項、憲法31条に違反しない(最判平成19年9月18日)。
国民健康保険の保険料率を定める国民健康保険条例が、市長に対して、条例の定める基準に基づき保険料率を決定・公示することを委任したとしても、そのことが憲法84条の趣旨に違反するとはいえない。 4.妥当である
憲法84条は「あらたに租税を課し、または現行の租税を変更するには、法律または法律の定める条件によることを必要とする。」としているが、保険料のような分担金を条例で定めることは租税法律主義に反しないかどうか問われている。
市町村が行う国民健康保険は、保険料を徴収する方式のものであっても、強制加入とされ、保険料が強制徴収され、賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有するものであるから、これについても憲法84条の趣旨(租税法律主義)が及ぶと解される。
一方、保険料の使途は、国民健康保険事業に要する費用に限定されているのであって、国民健康保険法81条の委任に基づき条例において賦課要件がどの程度明確に定められるべきかは、賦課徴収の強制の度合いのほか、社会保険としての国民健康保険の目的、特質等をも総合考慮して判断する必要がある。
本件条例が保険料率算定の基礎となる賦課総額の算定基準を定めた上で、市長に対し、同基準に基づいて保険料率を決定し、決定した保険料率を公示することを委任したことが国民健康保険法81条に違反するとはいえず、また、憲法84条の趣旨に反するともいえない(旭川市国民健康保険条例事件:最大判平成18年3月1日)。
集団行進および集団示威行為における交通秩序の維持を目的とする条例は、道路交通法と同一の行為を処罰することになるため、憲法31条に違反する。 5.妥当でない
憲法94条は「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、および行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」としているが、条例で上乗せ条例や横出し条例を定めることは、法律と条例とが同じ事柄について規制する場合、両者の関係をどのように考えるべきか問われている。
条例が法令に違反しているかどうかについて、判例は「法令と条例の規制目的に共通点があったとしても、条例が直ちに法令違反となるものではなく、条例が法令の規定に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみならず、それぞれの趣旨、目的、内容および効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによって決定しなければならない」(徳島市公安条例事件:最判昭和50年9月10日)としている。