令和7年-問19 行政法 行政事件訴訟法
Lv3
問題 更新:2026-01-12 00:49:58
処分差止めの訴えに関する次のア~オの記述のうち、法令および最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア.処分差止めの訴えは、一定の処分がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるときに限り提起することができる。
イ.処分差止めの訴えは、対象となる処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができないときに提起することができるとするのが判例である。
ウ.処分差止めの訴えは、義務付けの訴えと同様、申請に対する処分を対象にする場合とそれ以外の処分を対象にする場合に区分され、訴訟要件と本案勝訴要件につき、それぞれ別個の定めが置かれている。
エ.取消しの訴えについては、処分または裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する旨の規定が置かれているが、この規定は、処分差止めの訴えには準用されていない。
オ.仮の差止めは、処分差止めの訴えを提起する前においても申し立てることができるが、本案について理由がないとみえるときは、仮の差止めの決定をすることができない。
- ア・イ
- ア・オ
- イ・エ
- ウ・エ
- ウ・オ
正解 3
解説
妥当なものは、イ・エである。
処分差止めの訴えは、一定の処分がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるときに限り提起することができる。 ア.妥当でない
「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるときに」という点が妥当でない。
処分差止めの訴えは、一定の処分または裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでない(行政事件訴訟法37条の4第1項)。
なお、「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要」という表現は、仮の義務付けおよび仮の差止めの要件の一つである(行政事件訴訟法37条の5第1項、2項)。
「償うことのできない損害」とは、一般に「重大な損害」よりも損害の回復困難の程度が著しいと解されており、その要件は厳しいものになっている。
処分差止めの訴えは、対象となる処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができないときに提起することができるとするのが判例である。 イ.妥当である
処分差止めの訴えについては肢1解説参照。
判例は「行政事件訴訟法37条の4第1項の差止めの訴えの訴訟要件である、処分がされることにより『重大な損害を生ずるおそれ』があると認められるためには、処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けるなど救済を受けることが容易なものではなく、処分がされる前に差止めを命ずる方法でなければ救済を受けることが困難であることを要する」(最判平成24年2月9日)とした。
処分差止めの訴えは、義務付けの訴えと同様、申請に対する処分を対象にする場合とそれ以外の処分を対象にする場合に区分され、訴訟要件と本案勝訴要件につき、それぞれ別個の定めが置かれている。 ウ.妥当でない
差止めの訴えは、義務付けの訴えのように非申請型と申請型に区分されていない。
義務付けの訴えは、行政庁に一定の処分または裁決をせよと判決を求める訴えであって、非申請型(1号義務付け訴訟)と申請型(2号義務付け訴訟)の2種類に区分されている(行政事件訴訟法37条の3)。
一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる(行政事件訴訟法37条の2)。
差止めの訴えは、行政庁が一定の処分または裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合に、行政庁がその処分または裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟であり(行政事件訴訟法3条7項)、一定の処分または裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる(行政事件訴訟法37条の4第1項)。
取消しの訴えについては、処分または裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する旨の規定が置かれているが、この規定は、処分差止めの訴えには準用されていない。 エ.妥当である
差止めの訴えでは、判決の拘束力の規定が準用される一方、取消判決の第三者効を定めた規定(行政事件訴訟法32条1項)は準用されていない(行政事件訴訟法38条1項)。
仮の差止めは、処分差止めの訴えを提起する前においても申し立てることができるが、本案について理由がないとみえるときは、仮の差止めの決定をすることができない。 オ.妥当でない
「処分差止の訴えを提起する前においても申し立てることができる」という点が妥当でない。
まず差止の訴えが提起されていなければ申立てをすることはできず、処分等がされることにより生ずる償うことのできない損害を避ける緊急の必要があって、本案について理由があるとみえるとき、と要件が厳格になっている。
差止めの訴えの提起があった場合において、その差止めの訴えに係る処分または裁決がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、仮に行政庁がその処分または裁決をしてはならない旨を命ずることができる(行政事件訴訟法37条の5第2項)。