令和7年-問17 行政法 行政事件訴訟法
Lv3
問題 更新:2026-01-12 02:21:48
抗告訴訟の対象に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
- 関税定率法(当時)の規定に基づく輸入禁制品に該当する貨物と認めるのに相当の理由がある旨の税関長による通知は、いわゆる観念の通知と見るべきものであるが、当該通知があった場合には、輸入申告者は貨物を適法に輸入する道を閉ざされるのであって、これは当該通知によって生ずるに至った法律上の効果と見るのが相当であり、当該通知は行政処分にあたる。
- 交通反則金の納付の通告は、通告を受けた者において通告に係る反則金を納付すべき法律上の義務を生じさせるものであるから、行政処分にあたる。
- 地方公共団体の水道事業において、水道料金を条例の適用範囲全域につき一律に値上げすることを内容とする水道給水条例が制定された場合、水道の利用者はかかる条例の施行によって値上げされた水道料金の支払義務を負うこととなるため、当該条例の制定行為は行政処分にあたる。
- 登録免許税を過大に納付して登記を受けた者が、登記機関に対して税務署長への還付通知を行うように登録免許税法に基づいて請求した場合、当該通知を拒否する旨の登記機関による通知は、登記等を受けた者の手続上の地位を否定する法的効果を有さないため、行政処分にあたらない。
- 都市計画法に基づく都市計画決定としてなされる工業地域指定は、これによって当該地域内において、建築物の建築を制限する法的効果が土地所有者等に対して生じることとなるため、具体的な権利侵害を伴うものであるから、行政処分にあたる。
正解 1
解説
抗告訴訟の対象について、行政事件訴訟法3条2項では、行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為と定める。
この行政庁の処分について、判例は「行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」(最判昭和39年10月29日)としている。
以上を踏まえて、各肢が抗告訴訟の対象にあたるのか検討することになる。
関税定率法(当時)の規定に基づく輸入禁制品に該当する貨物と認めるのに相当の理由がある旨の税関長による通知は、いわゆる観念の通知と見るべきものであるが、当該通知があった場合には、輸入申告者は貨物を適法に輸入する道を閉ざされるのであって、これは当該通知によって生ずるに至った法律上の効果と見るのが相当であり、当該通知は行政処分にあたる。 1.妥当である
税関長の決定およびその通知は、処分性を肯定し、抗告訴訟の対象となる。
「被上告人の関税定率法による通知等は、その法律上の性質において被上告人の判断の結果の表明、すなわち観念の通知であるとはいうものの、もともと法律の規定に準拠してされたものであり、かつ、これにより上告人に対し申告にかかる本件貨物を適法に輸入することができなくなるという法律上の効果を及ぼすものであるから、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為」に該当する」(最判昭和54年12月25日)
交通反則金の納付の通告は、通告を受けた者において通告に係る反則金を納付すべき法律上の義務を生じさせるものであるから、行政処分にあたる。 2.妥当でない
道路交通法127条1項の規定に基づく反則金の納付の通告は、抗告訴訟の対象とならない。
「道路交通法は、通告を受けた者が、自由意思により、通告に係る反則金を納付し、事案の終結の途を選んだときは、もはや通告の理由となった反則行為の不成立等を主張して通告自体の適否を争い、抗告訴訟によってその効果の覆滅を図ることは許されず、そのような主張をしようとするのであれば、反則金を納付せず、後に公訴が提起されたときに開始された刑事手続の中で争い、裁判所の審判を求める途を選ぶべきである」(最判昭和57年7月15日)
通告の相手方に反則金納付義務を生じさせるものではなく、相手方の自由な意思に任されているとして抗告訴訟の対象にはならないとした。
地方公共団体の水道事業において、水道料金を条例の適用範囲全域につき一律に値上げすることを内容とする水道給水条例が制定された場合、水道の利用者はかかる条例の施行によって値上げされた水道料金の支払義務を負うこととなるため、当該条例の制定行為は行政処分にあたる。 3.妥当でない
「普通地方公共団体が営む水道事業に係る条例所定の水道料金を改定する条例の制定行為は、同条例が上記水道料金を一般的に改定するものであって、限られた特定の者に対してのみ適用されるものではなく、同条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできないから抗告訴訟の対象となる行政処分にあたらない」(最判平成18年7月14日)
なお、本判決では、適法な無効等確認訴訟とした原審の判断の要旨を最高裁はこれを是認できないとして破棄しているが、結論は、是認できるとして、住民に準じる別荘の給水契約者が、他の給水契約者の3.57倍の基本料金という料金改定は、不当な差別的取扱いにあたり無効として、原告側の別荘の給水契約者は改定前との差額分について支払義務を負わないとした。
登録免許税を過大に納付して登記を受けた者が、登記機関に対して税務署長への還付通知を行うように登録免許税法に基づいて請求した場合、当該通知を拒否する旨の登記機関による通知は、登記等を受けた者の手続上の地位を否定する法的効果を有さないため、行政処分にあたらない。 4.妥当でない
登記等を受けた者に対する登記機関の拒否通知は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたる。
登録免許税の付通知とは、納め過ぎた登録免許税を還付する旨を知らせる通知書のことで、不動産登記の申請が却下されたり、取り下げられたりした場合、あるいは税額を誤って過大に納付してしまった場合に送付されるものである。
この通知を登記機関から税務署長へ還付通知をするよう請求するよう求めた事案に対して、判例は以下のように判示している。
「登録免許税法31条2項は、登記等を受けた者に対し、簡易迅速に還付を受けることができる手続を利用することができる地位を保障していると解される。
同項に基づく還付通知をすべき旨の請求に対してされた拒否通知は、登記機関が還付通知を行わず、還付手続を執らないことを明らかにするものである。これにより、登記等を受けた者は、簡易迅速に還付を受けることができる手続を利用することができなくなる。
したがって、この拒否通知は、登記等を受けた者に対して手続上の地位を否定する法的効果を有するから、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたる」(最判平成17年4月14日)
都市計画法に基づく都市計画決定としてなされる工業地域指定は、これによって当該地域内において、建築物の建築を制限する法的効果が土地所有者等に対して生じることとなるため、具体的な権利侵害を伴うものであるから、行政処分にあたる。 5.妥当でない
都市計画法に基づく都市計画区域内での用途地域の指定については、処分性が否定され、抗告訴訟の対象とならない。
用途地域とは、都市計画法に基づき、住居・商業・工業などの建物の用途や規模を制限し、計画的な街づくりと良好な住環境を確保するために都市計画で定められたエリアを分けるルールをいう。
用途地域を指定することが抗告訴訟の対象になるのかについて、判例は以下のように判示している。
「都市計画区域内において工業地域を指定する決定は、都市計画法8条1項1号に基づき都市計画決定の一つとしてされるものであり、この決定が告示されて効力を生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用され、これらの基準に適合しない建築物について建築確認を受けることができず、建築等をすることができないことになるから、この決定が当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生じさせることは否定できない。
しかしその効果は、新たな制約を課する法令が制定された場合のように地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なものにすぎず、このような効果を生ずるというだけで直ちに地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったとする抗告訴訟をすることはできない」(最判昭和57年4月22日)
上記判例のほか、都市計画法の決定が抗告訴訟の対象となる処分にはあたらない例として、道路に関する都市計画変更決定(最判昭和62年9月22日)、都市計画法に基づく地区計画(最判平成6年4月22日)がある。