令和7年-問9 行政法 行政総論
Lv3
問題 更新:2026-01-12 02:10:14
行政罰に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア.財団法人の理事の就任に関する登記が法定期間内に行われなかったことに対して科される過料は、非訟事件手続法に基づく手続によって科されるが、中立性のある裁判所によって、当事者の陳述の機会を設けた上で科されるものであり、かつ即時抗告も可能であることから、憲法上の適正手続の要請に反しているとはいえない。
イ.カルテル行為を行ったことによって独占禁止法* 違反被告事件において罰金刑が確定している者に対し、さらに独占禁止法の規定に基づき課徴金の納付を命ずることは、課徴金を課せられるべき違反者の行為を犯罪とし、それに対する刑罰として、これを課する趣旨でないことは明らかであるから、二重処罰の禁止には違反しない。
ウ.所得税の確定申告において虚偽記載を行い所得税を脱税したことにより、懲役刑と罰金刑を併科された者に対して、さらに重加算税を科すことは、重加算税が申告納税を怠った者に対し、その行為の反社会性ないし反道徳性に着目し、これに対する制裁として科せられるものでもあるから、二重処罰の禁止に抵触する。
エ.刑事裁判において正当な理由がなく証言を拒んだ場合に、刑事訴訟法に基づき裁判官により秩序罰として科される過料と、同法に基づき通常の刑事手続により科される罰金は、法廷秩序の維持という点で目的が共通しているから、両者を併科することは許されない。
- ア・イ
- ア・ウ
- イ・ウ
- イ・エ
- ウ・エ
(注)* 私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律
正解 1
解説
妥当なものは、ア・イである。
財団法人の理事の就任に関する登記が法定期間内に行われなかったことに対して科される過料は、非訟事件手続法に基づく手続によって科されるが、中立性のある裁判所によって、当事者の陳述の機会を設けた上で科されるものであり、かつ即時抗告も可能であることから、憲法上の適正手続の要請に反しているとはいえない。 ア.妥当である
財団法人の理事の就任に関する登記が法定期間内に行われなかったことに対する過料について、判例は以下のように判示している。
「過料は非訟事件手続法の定めより裁判所が科し、その手続は原則、過料の裁判をする前に当事者の陳述を聴くべきものとし、当事者に告知・弁解・防御の機会を与えている。
例外的に当事者の陳述を聴くことなく過料の裁判をする場合においても、当事者から異議の申立があれば、陳述を聴いたうえで改めて裁判をしなければならない。
しかも、過料の裁判の決定理由に不服のある者は即時抗告ができ、抗告により過料の裁判の執行停止の効力を有するなど違法・不当に過料に処せられることがないよう十分配慮されていることから、非訟事件手続法による過料の裁判は、法律の定める適正な手続による裁判であり、憲法31条に違反するものではない」(最大決昭和41年12月27日)
カルテル行為を行ったことによって独占禁止法違反被告事件において罰金刑が確定している者に対し、さらに独占禁止法の規定に基づき課徴金の納付を命ずることは、課徴金を課せられるべき違反者の行為を犯罪とし、それに対する刑罰として、これを課する趣旨でないことは明らかであるから、二重処罰の禁止には違反しない。 イ.妥当である
「追徴税は、過少申告や不申告による納税義務違反の発生を防止し、納税における結果を出そうとする目的であるから、犯罪行為を罰する罰金とは性質が異なる。よって、刑罰である罰金と追徴税の併科は憲法39条の二重処罰の禁止にあたらない」(最大判昭和33年4月30日)。
この判例をふまえ、本肢のような事例について、判例は「本件カルテル行為について、私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律違反被告事件において上告人に対する罰金刑が確定し、かつ、国から上告人に対し不当利益の返還を求める民事訴訟が提起されている場合に、課徴金の納付を命ずることは、憲法39条、憲法29条、憲法31条に違反しない」(最判平成10年10月13日)としている。
所得税の確定申告において虚偽記載を行い所得税を脱税したことにより、懲役刑と罰金刑を併科された者に対して、さらに重加算税を科すことは、重加算税が申告納税を怠った者に対し、その行為の反社会性ないし反道徳性に着目し、これに対する制裁として科せられるものでもあるから、二重処罰の禁止に抵触する。 ウ.妥当でない
重加算税を課すことと、刑罰を科すことは趣旨、性質が違うから二重処罰の禁止に抵触しない。
「重加算税は、各種の加算税を課すべき納税義務違反が課税要件事実を隠ぺいし、または仮装する方法によって行なわれた場合に、行政機関の行政手続により違反者に課せられるもので、これによってかかる方法による納税義務違反の発生を防止し、徴税の実を挙げようとする趣旨に出た行政上の措置であり、違反者の不正行為の反社会性ないし反道徳性に着目してこれに対する制裁として科せられる刑罰とは趣旨、性質を異にするものであるから、同一の脱税行為について重加算税のほかに刑罰を科しても憲法39条に違反するものではない」(最判昭和45年9月11日)
刑事裁判において正当な理由がなく証言を拒んだ場合に、刑事訴訟法に基づき裁判官により秩序罰として科される過料と、同法に基づき通常の刑事手続により科される罰金は、法廷秩序の維持という点で目的が共通しているから、両者を併科することは許されない。 エ.妥当でない
秩序罰として科す過料と、刑罰としての罰金の併科は目的、要件および手続きが違うから許される。
「刑事訴訟法160条は、訴訟手続き上の秩序を維持するために秩序違反行為に対して当該手続きを主宰する裁判所または裁判官によって直接科せられる秩序罰としての過料を規定し、同法161条は、刑事司法に協力しない行為に対して通常の刑事訴訟手続きによって科せられる刑罰としての罰金、拘留を規定したものであって、両者は目的、要件および実現の手続も異なるから、二者択一の関係にあるものではなく、併科を妨げない」(最判昭和39年6月5日)