令和7年-問6 憲法 内閣
Lv3
問題 更新:2026-01-12 00:36:11
内閣総理大臣に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 内閣総理大臣は、大日本帝国憲法では内閣の首長と位置づけられていたが、実際の運用では、他の国務大臣と対等な地位にあるものとして扱われていた。
- 内閣総理大臣は、衆議院議員の中から国会の議決により指名されるが、衆参両院で指名の議決が異なった場合には、衆議院の議決が優越する。
- 内閣総理大臣に事故のあるときは、予め指定された国務大臣が臨時にその職務を行うが、その場合でも、衆議院の解散のような内閣総理大臣に一身専属的な権限は行使できないと解されている。
- 国務大臣は、内閣総理大臣の同意がなければ、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された国務大臣は、内閣総理大臣の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。
- 法律および政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
正解 5
解説
内閣総理大臣は、大日本帝国憲法では内閣の首長と位置づけられていたが、実際の運用では、他の国務大臣と対等な地位にあるものとして扱われていた。 1.妥当でない
大日本帝国憲法下の内閣総理大臣は、憲法で定められたものではなく「内閣官制」(明治22年12月発布)という勅令で定められた官職だった。
この中で、内閣総理大臣は各大臣の首班と定められていたものの、単なる手続き的な意味でしかなく、同輩中の首席にすぎなかった。
したがって、天皇の権能行使に対して助言する関係においては、内閣総理大臣も国務各大臣の一人として他の国務大臣と同格扱いであり、内閣の首長に位置付けられていたわけではない。
内閣総理大臣は、衆議院議員の中から国会の議決により指名されるが、衆参両院で指名の議決が異なった場合には、衆議院の議決が優越する。 2.妥当でない
内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だって、これを行う(憲法67条1項)とし、衆議院議員の中から指名されるわけではない。
逆を言えば、参議院議員の中からも指名することが認められているが、戦後現憲法下で選ばれた者はいない。
もっとも、衆議院と参議院とが異なった指名の議決をした場合は、両議院の協議会を開き、そこでも意見が一致しない、または衆議院が指名の議決をした後10日以内に参議院が指名の議決をしないときは、衆議院の議決が国会の議決となる(憲法67条2項)。
内閣総理大臣に事故のあるときは、予め指定された国務大臣が臨時にその職務を行うが、その場合でも、衆議院の解散のような内閣総理大臣に一身専属的な権限は行使できないと解されている。 3.妥当でない
内閣法9条に基づいて臨時代理が内閣総理大臣の職務を行う場合、一般論としては臨時代理は内閣総理大臣のすべての職務を行うことになる。ただし、国会において指名された内閣総理大臣の地位に基づく一身専属的な職務権限については臨時代理が行使することができないものとされている。
もっとも、衆議院の解散の決定権は、内閣にのみあると解されており、内閣総理大臣の権限とは解されていない。そのため、衆議院の解散のような内閣総理大臣に一身専属的な権限という本肢の記述は妥当でない。
国務大臣は、内閣総理大臣の同意がなければ、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された国務大臣は、内閣総理大臣の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。 4.妥当でない
憲法上、本肢のような規定はない。
両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない(憲法50条)とし、国会議員とは異なり、国務大臣には認められていない。
この
①会期中は逮捕されないこと
②会期前に逮捕された場合、所属する議院の要求があれば、会期中釈放しなければならないこと
をあわせて不逮捕特権という。
会期中とは、国会の会期中は当然ながら休会中であっても不逮捕特権は認められる。
また、参議院の緊急集会は国会そのものではないが、緊急集会の期間中は国会の会期中と同様と考えられるため、緊急集会中の参議院議員には、議員の有する不逮捕特権(憲法50条、国会法100条)や発言・表決に対する免責特権(憲法51条)も認められている。
なお、「法律の定める場合を除いては」とあるが、国会法33条によると、院外における現行犯逮捕の場合と、所属する議院の許諾がある場合は、不逮捕特権の例外が認められている。
法律および政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。 5.妥当である
法律および政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする(憲法74条)。
この主任の国務大臣の署名は、憲法74条に基づく法律への署名であり、法律の執行について責任の所在を明らかにするものであると解されている。
もっとも、主任の国務大臣と内閣総理大臣は、署名および連署を拒否することはできないが、仮に拒否したとしてもこれらがあることが有効要件ではないため、効力に影響はないとされている。