令和6年-問37 商法 会社法
Lv3
問題 更新:2025-01-10 01:05:12
株主の議決権に関する次のア~オの記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。
ア.株主総会における議決権の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を生じない。
イ.株式会社は、自己株式については、議決権を有しない。
ウ.取締役候補者である株主は、自らの取締役選任決議について特別の利害関係を有する者として議決に加わることができない。
エ.監査役を選任し、または解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
オ.役員等がその任務を怠ったために株式会社に生じた損害を賠償する責任を負うこととなった場合に、当該責任を免除するには、議決権のない株主を含めた総株主の同意がなければならない。
- ア・ウ
- ア・エ
- イ・エ
- イ・オ
- ウ・オ
正解 4
解説
イ・オが正しい
株主総会における議決権の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を生じない。 ア.誤り
株主総会における議決権の全部を与えない等を定款に定めることは、会社法上許されている(会社法105条)。
議決権行使に関心がなく株式配当などの経済的な利益のみを目的とする株主に、株主総会における議決権の全部を与えない等を定款に定めることで異なる種類の株式を発行することができる(会社法108条1項3号)。
なお、「剰余金の配当を受ける権利」と「残余財産の分配を受ける権利」のどちらもない株式を発行するという定款の定めは無効となる(会社法105条2項)。
株式会社は、自己株式については、議決権を有しない。 イ.正しい
株式会社は、自己株式については、議決権を有しない(会社法308条2項)。
自己株式に議決権を認めてしまうと、株式会社の所有と経営の分離という原則が崩れ、経営の透明性や公平性を害することになるからである。
取締役候補者である株主は、自らの取締役選任決議について特別の利害関係を有する者として議決に加わることができない。 ウ.誤り
株主総会等の決議については、特別の利害関係を有する者も議決権の行使は認められており、議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたときはその決議を取消し得るにすぎない(会社法831条1項3号)。
なお、混同しやすい点として、取締役会の決議について、特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない(会社法369条2項)。
「特別の利害関係を有するもの」とは、会社に対して競合取引や利益相反を行うおそれのある取締役であり、株主である取締役が自らの取締役選任決議について特別の利害関係があるとはいえない。
日本の中小企業では取締役=株主であることが多く、そのような会社で自らの取締役選任決議について特別の利害関係を有する者として議決に加わることができないということはありえない。
監査役を選任し、または解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。 エ.誤り
監査役の選任については正しいが、解任については誤り。
監査役の選任については、本肢のとおり普通決議で行われるが、解任については、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の2/3以上にあたる多数をもって(特別決議)行わなければならない(会社法309条2項7号)。
なお、取締役については選任・解任ともに普通決議によって行われるが、累積投票によって選任された取締役についての解任は特別決議で行われることに注意。
会社法テキスト1参照。
役員等がその任務を怠ったために株式会社に生じた損害を賠償する責任を負うこととなった場合に、当該責任を免除するには、議決権のない株主を含めた総株主の同意がなければならない。 オ.正しい
役員等(取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う(会社法423条1項)。
その責任は、総株主の同意がなければ、免除することができない(会社法424条)。
株式会社に生じた損害を受けるのは株主なので、その株主全員が同意すれば、役員等の損害賠償責任は免除される。