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令和6年-問35 民法 相続

Lv3

問題 更新:2025-01-10 01:04:17

共同相続における遺産分割に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 共同相続人中の特定の1人に相続財産中の不動産の所有権を取得させる一方で当該相続人が老親介護を負担する義務を負う内容の遺産分割協議がなされた場合において、当該相続人が遺産分割協議に定められた介護を行わない場合には、他の共同相続人は債務不履行を理由として遺産分割協議自体を解除することができる。
  2. 被相続人が、相続財産中の特定の銀行預金を共同相続人中の特定の1人に相続させる旨の遺言をしていた場合、当該預金債権の価額が当該相続人の法定相続分の価額を超えるときには、当該預金債権の承継に関する債権譲渡の対抗要件を備えなければ、当該預金債権の承継を第三者に対抗できない。
  3. 共同相続人の1人が、相続開始後遺産分割の前に、被相続人が自宅に保管していた現金を自己のために費消した場合であっても、遺産分割の対象となる財産は、遺産分割時に現存する相続財産のみである。
  4. 共同相続人は、原則としていつでも協議によって遺産の全部または一部の分割をすることができ、協議が調わないときは、家庭裁判所に調停または審判の申立てをすることができるが、相続開始から10年以上放置されていた遺産の分割については、家庭裁判所に対して調停または審判の申立てを行うことができない。
  5. 相続財産中に銀行預金が含まれる場合、当該預金は遺産分割の対象となるから、相続開始後遺産分割の前に、当該預金口座から預金の一部を引き出すためには共同相続人の全員の同意が必要であり、目的、金額のいかんを問わず相続人の1人が単独で行うことは許されない。
  解答&解説

正解 2

解説

共同相続人中の特定の1人に相続財産中の不動産の所有権を取得させる一方で当該相続人が老親介護を負担する義務を負う内容の遺産分割協議がなされた場合において、当該相続人が遺産分割協議に定められた介護を行わない場合には、他の共同相続人は債務不履行を理由として遺産分割協議自体を解除することができる。 1.妥当でない

遺産分割協議自体を解除することはできない。

「共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人が他の相続人に対して協議において負担した債務を履行しないときであっても、他の相続人は民法541条によって遺産分割協議を解除することができない」(最判平成元年2月9日)
その理由として、遺産分割はその性質上協議の成立とともに終了し、その後は、協議において債務を負担した相続人とその債権を取得した相続人間の債権債務関係が残るだけと解すべきであり、しかもこのように解さなければ、遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるとする民法909条本文により遡及効を有する遺産分割の再分割を余儀なくされ、法的安定性が著しく害されることになるからである。

被相続人が、相続財産中の特定の銀行預金を共同相続人中の特定の1人に相続させる旨の遺言をしていた場合、当該預金債権の価額が当該相続人の法定相続分の価額を超えるときには、当該預金債権の承継に関する債権譲渡の対抗要件を備えなければ、当該預金債権の承継を第三者に対抗できない。 2.妥当である

相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、法定相相続分および代襲相続人の相続分の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない(民法899条の2第1項)。

共同相続人の1人が、相続開始後遺産分割の前に、被相続人が自宅に保管していた現金を自己のために費消した場合であっても、遺産分割の対象となる財産は、遺産分割時に現存する相続財産のみである。 3.妥当でない

「遺産分割の対象となる財産は、遺産分割時に現存する相続財産のみ」は妥当でない。

遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる(民法906条の2第1項)。

共同相続人は、原則としていつでも協議によって遺産の全部または一部の分割をすることができ、協議が調わないときは、家庭裁判所に調停または審判の申立てをすることができるが、相続開始から10年以上放置されていた遺産の分割については、家庭裁判所に対して調停または審判の申立てを行うことができない。 4.妥当でない

相続開始から10年以上放置されていた遺産の分割についても、家庭裁判所に対して調停または審判の申立てを行うことができる。

共同相続人は、原則としていつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる(民法907条1項)。
そして、遺産の分割について、共同相続人間で協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部または一部の分割を家庭裁判所に請求することができる(民法907条2項本文)。

家庭裁判所に対して調停または審判の申立てを行うことができないケースは、遺産の一部分割により、他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合である(民法907条2項ただし書き)。

相続財産中に銀行預金が含まれる場合、当該預金は遺産分割の対象となるから、相続開始後遺産分割の前に、当該預金口座から預金の一部を引き出すためには共同相続人の全員の同意が必要であり、目的、金額のいかんを問わず相続人の1人が単独で行うことは許されない。 5.妥当でない

「目的、金額のいかんを問わず相続人の1人が単独で行うことは許されない」は妥当でない。
相続財産中の銀行預金については、相続人の1人が単独で行うことができる場合がある。

各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の1/3に法定相続分および代襲相続人の相続分により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする)については、単独でその権利を行使することができる(民法909条の2)。

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