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令和6年-問27 民法 総則

Lv3

問題 更新:2025-01-10 01:51:06

失踪の宣告に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 不在者の生死が7年間明らかでない場合において、利害関係人の請求により家庭裁判所が失踪の宣告をしたときは、失踪の宣告を受けた者は、7年間の期間が満了した時に、死亡したものとみなされる。
  2. 失踪の宣告を受けた者が実際には生存しており、不法行為により身体的被害を受けていたとしても、失踪の宣告が取り消されなければ、損害賠償請求権は発生しない。
  3. 失踪の宣告の取消しは、必ず本人の請求によらなければならない。
  4. 失踪の宣告によって失踪者の財産を得た者は、失踪の宣告が取り消されたときは、その受けた利益の全部を返還しなければならない。
  5. 失踪の宣告によって失踪者の所有する甲土地を相続した者が、甲土地を第三者に売却した後に、失踪者の生存が判明し、この者の失踪の宣告が取り消された。この場合において、相続人が失踪者の生存について善意であったときは、第三者が悪意であっても、甲土地の売買契約による所有権移転の効果に影響しない。
  解答&解説

正解 1

解説

不在者の生死が7年間明らかでない場合において、利害関係人の請求により家庭裁判所が失踪の宣告をしたときは、失踪の宣告を受けた者は、7年間の期間が満了した時に、死亡したものとみなされる。 1.妥当である

不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる(民法30条1項)。
この場合、失踪の宣告を受けた者は7年の期間が満了した時に、死亡したものとみなされる(民法31条)。

失踪宣告には2種類あり、1つ目は、生死不明者が戦地に臨んだ、沈没した船舶の中に在った、またはその他死亡の原因となるべき危難に遭遇した場合である。これを特別失踪という。2つ目は、本肢のような場合で、これを普通失踪という。
家庭裁判所により失踪宣告の審判が確定すると、失踪者は、特別失踪の場合には危難の去った時に、普通失踪の場合には失踪期間満了時に、死亡したものとみなされる(民法31条)。これにより、相続が開始し、また、残存配偶者は再婚が可能になる。

失踪の宣告を受けた者が実際には生存しており、不法行為により身体的被害を受けていたとしても、失踪の宣告が取り消されなければ、損害賠償請求権は発生しない。 2.妥当でない

「失踪の宣告が取り消されなければ、損害賠償請求権は発生しない」は妥当でない。

失踪宣告を受けた者は死亡したものとみなされるが(民法31条)、この効果は、失踪宣告された土地や従来の住所において有していた法律関係を終了させるだけで、失踪宣告を受けた者の権利能力や行為能力を奪うものではない。
たとえば失踪宣告によりAが死亡したものとみなされた後、実際には別の場所にて生存していた場合、その時Aが行った契約等は有効であるということになる。

失踪の宣告の取消しは、必ず本人の請求によらなければならない。 3.妥当でない

「必ず本人の請求によらなければならない」わけではない。
失踪宣告の取消しは、本人または利害関係人により請求可能である。

失踪者が生存すること、または失踪宣告により死亡したとみなされた時とは異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人または利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない(民法32条1項)。

失踪の宣告によって失踪者の財産を得た者は、失踪の宣告が取り消されたときは、その受けた利益の全部を返還しなければならない。 4.妥当でない

「その受けた利益の全部を返還しなければならない」は妥当でない。利益の全部を返還する必要はない。

失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う(民法32条2項)。

なお、失踪の宣告の取消しにおける善意者の返還義務は現存利益の範囲にとどまるが、遊興費として消費した金銭は現存利益に含まれないとされている(大判昭和14年10月26日)。一方、生活に欠かせない費用にあてられたときには、現存利益があるとして、その分については返還義務を負うことになる(大判昭和8年2月23日)。
遊興費(ギャンブル等)は返さなくてよくて、生活費は返さなければいけないという、一般的な感覚とずれた結果ともいえるが、その理屈としては、「生活費は、利得がなくとも支払うはずのもので他の財産による出費を免れているから、その額の利益は現存している」と考え、生活費は返還義務を負うことになる。

失踪の宣告によって失踪者の所有する甲土地を相続した者が、甲土地を第三者に売却した後に、失踪者の生存が判明し、この者の失踪の宣告が取り消された。この場合において、相続人が失踪者の生存について善意であったときは、第三者が悪意であっても、甲土地の売買契約による所有権移転の効果に影響しない。 5.妥当でない

「第三者が悪意であっても、甲土地の売買契約による所有権移転の効果に影響しない」は妥当でない。
第三者が悪意であれば、所有権移転の効果に影響がある。

失踪宣告に基づいてその取消前になされた法律関係について、失踪者の財産を受けた者とその相手方(第三者)の双方について善意であれば(大判昭和13年2月7日)、その効力に影響を与えない(民法32条1項)。
失踪宣告が取り消されたにもかかわらず、その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさないとなると、本来の権利者が権利を失うことになる。そのためには、本来の権利者から権利を奪ってでも保護に値するものでなければならない。よってそのようなものと認められるのは、双方が善意でなければならないのである。

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