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  4. 問25

令和6年-問25 行政法 その他

Lv3

問題 更新:2025-01-10 00:58:18

公立学校をめぐる裁判に関する次のア~オの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.公立高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分または退学処分を行った場合、裁判所がその処分の適否を審査するにあたっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきである。

イ.教育委員会が、公立学校の教頭で勧奨退職に応じた者を校長に任命した上で同日退職を承認する処分をした場合において、当該処分が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するものといえないときは、校長としての退職手当の支出決定は財務会計法規上の義務に違反する違法なものにはあたらない。

ウ.公立学校の学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、当該施設の管理者の裁量に委ねられており、学校教育上支障がない場合であっても、学校施設の目的および用途と当該使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により許可をしないこともできる。

エ.公立高等学校等の教職員に対し、卒業式等の式典における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の校長の職務命令がなされた場合において、当該職務命令への違反を理由とする懲戒処分の差止めを求める訴えについて、仮に懲戒処分が反復継続的・累積加重的にされる危険があるとしても、訴えの要件である「重大な損害を生ずるおそれ」があるとは認められない。

オ.市立学校教諭が同一市内の他の中学校教諭に転任される処分を受けた場合において、当該処分が客観的、実際的見地からみて勤務場所、勤務内容等に不利益を伴うものであるとしても、当該教諭には転任処分の取消しを求める訴えの利益が認められる余地はない。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・ウ
  4. ウ・エ
  5. エ・オ
  解答&解説

正解 3

解説

イ・ウが妥当である。

公立高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分または退学処分を行った場合、裁判所がその処分の適否を審査するにあたっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきである。 ア.妥当でない

判例は、裁判所が校長と同一の立場に立って判断等すべきであるとはしていない。

いわゆる「エホバの証人剣道受講拒否事件」である。

「高等専門学校の校長が学生に対し原級留置処分または退学処分を行うかどうかの判断は、校長の合理的な教育的裁量にゆだねられるべきものである」
「裁判所がその処分の適否を審査するにあたっては、校長と同一の立場に立って当該処分をすべきであったかどうか等について判断し、その結果と当該処分とを比較してその適否、軽重等を論ずべきものではない」
「校長の裁量権の行使としての処分が、全く事実の基礎を欠くか、社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超えまたは裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り、違法であると判断すべき」(最判平成8年3月8日)

教育委員会が、公立学校の教頭で勧奨退職に応じた者を校長に任命した上で同日退職を承認する処分をした場合において、当該処分が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するものといえないときは、校長としての退職手当の支出決定は財務会計法規上の義務に違反する違法なものにはあたらない。 イ.妥当である

教育委員会が教頭を退職前の1日だけ校長に任命した行為を前提に、地方公共団体の長が行った退職手当の支給は、任命行為が違法であっても退職手当の支給行為自体が財務会計法規上の義務に違反するものでなければ当然に違法とはならない。

「事実関係ならびに原審の適法に確定した本件昇格処分および本件退職承認処分の経緯等に関するその余の事実関係の下において、昇格処分および退職承認処分が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するものとは解し得ない」
「支出決定が、その職務上負担する財務会計法規上の義務に違反してされた違法なものということはできない」(最判平成4年12月15日)

公立学校の学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、当該施設の管理者の裁量に委ねられており、学校教育上支障がない場合であっても、学校施設の目的および用途と当該使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により許可をしないこともできる。 ウ.妥当である

公立学校の学校施設の目的外使用は、原則として、管理者の裁量にゆだねられ、学校教育上支障がない場合であっても、合理的な裁量判断により許可をしないこともできる。

学校教育上の支障がある場合とは、物理的支障がある場合に限られるものではなく、教育的配慮の観点から、児童、生徒に対し精神的悪影響を与え、学校の教育方針にもとることとなる場合も含まれ、現在の具体的な支障がある場合だけでなく、将来における教育上の支障が生ずるおそれが明白に認められる場合も含まれる(最判平成18年2月7日)。

なお、この判例では、公立小中学校等の教職員の職員団体が教育研究集会の会場として学校施設を使用することを不許可とした市教育委員会の処分が、裁量権を逸脱したものであるとされた。

「裁量判断が、重要な事実の基礎を欠くか、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合には、裁量権の逸脱または濫用として違法となる。」
「妨害行動のおそれが具体的なものではなかったにもかかわらずそれを主な理由として行われた不許可処分は、重視すべきでない考慮要素を重視するなど、考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠いており、他方、当然考慮すべき事項を十分考慮していない事は、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたもので裁量権を逸脱したものである」(最判平成18年2月7日)

公立高等学校等の教職員に対し、卒業式等の式典における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の校長の職務命令がなされた場合において、当該職務命令への違反を理由とする懲戒処分の差止めを求める訴えについて、仮に懲戒処分が反復継続的・累積加重的にされる危険があるとしても、訴えの要件である「重大な損害を生ずるおそれ」があるとは認められない。 エ.妥当でない

判例は「重大な損害を生ずるおそれ」があるとした。

「毎年度2回以上の式典を契機として懲戒処分が反復継続的かつ累積加重的にされて事後的な損害の回復が著しく困難になることを考慮すると、当該職務命令の違反を理由として一連の累次の懲戒処分がされることにより生ずる損害は、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものであるとはいえない」
「処分がされる前に差止めを命ずる方法でなければ救済を受けることが困難なものであり、その回復の困難の程度等に鑑み、当該差止めの訴えについては訴えの要件である『重大な損害を生ずるおそれ』があると認められる」(最判平成24年2月9日)

市立学校教諭が同一市内の他の中学校教諭に転任される処分を受けた場合において、当該処分が客観的、実際的見地からみて勤務場所、勤務内容等に不利益を伴うものであるとしても、当該教諭には転任処分の取消しを求める訴えの利益が認められる余地はない。 オ.妥当でない

「取消しを求める訴えの利益が認められる余地はない」は妥当でない。

「転任処分は配置換えを命じたものにすぎず、被上告人らの身分、俸給等に異動を生じるものでないことはもとより、客観的また実際的見地からみても、被上告人らの勤務場所、勤務内容等において不利益を伴うものでない」
「他に特段の事情の認められない本件においては、被上告人らについて転任処分の取消しを求める法律上の利益を肯認することはできない」(最判昭61年10月23日)
判例は、「特段の事情があれば」法律上の利益を認める可能性を残している。

なお、この判例では特段の事情を認めていないが、「もし転任処分が違法であり、これにより被上告人らの名誉・信用等がき損された場合は、国家賠償法に基づく損害賠償請求によってその救済を求めるべき」であると結論付けている。

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