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令和6年-問9 行政法 行政総論

Lv3

問題 更新:2025-01-10 00:46:20

行政立法に関する次の記述のうち、法令の定めまたは最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 行政手続法が定める意見公募手続の対象となるのは、法規命令のみであり、行政規則はその対象とはされていない。
  2. 法律の規定を実施するために政令を定めるのは内閣の事務であるが、その法律による委任がある場合には、政令に罰則を設けることもできる。
  3. 法律による委任の範囲を逸脱して定められた委任命令は違法となるが、権限を有する機関が取り消すまでは有効なものとして取り扱われる。
  4. 通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合には、当該通達に対して取消訴訟を提起することができる。
  5. 行政手続法が適用される不利益処分の処分基準において、過去に処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定が加重される旨の定めがある場合には、当該処分基準の定めに反する後行の処分は当然に無効となる。
  解答&解説

正解 2

解説

行政立法とは、行政機関による規範の定立であり、国会中心立法の例外にあたる。
国会が作る法律で基本を定め、細則的事項は法律の委任を受けて行政権で決定できることが認められている。

行政立法は、法規たる性質の有無により「法規命令」と「行政規則」に分類される。

法規とは国民の権利・義務に関する規範を意味しており、法規命令は国民の権利を制限し、義務を課すものであって、本来は法律で定められる事項を命令で定めることから法律の委任が必要である。

行政規則は、行政組織のあり方や事務処理手続き等を定めた法規の性質を持たない命令をいい、法律の委任を必要としない。
また、命令の形式をとる必要がなく、内規、要綱、通達などの形式で定めることができる。

行政法テキスト7参照。

行政手続法が定める意見公募手続の対象となるのは、法規命令のみであり、行政規則はその対象とはされていない。 1.妥当でない

「法規命令のみであり、行政規則はその対象とはされていない。」としているので妥当でない。

意見公募手続について、行政手続法39条は「命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案(命令等で定めようとする内容を示すものをいう)およびこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見(情報を含む)の提出先および意見の提出のための期間(意見提出期間)を定めて広く一般の意見を求めなければならない」と規定している。

この「命令等」として「等」が入っている場合には、法律に基づく命令または規則の他に審査基準、処分基準および行政指導指針も含まれ(行政手続法2条8号)、行政規則も意見公募手続の対象となる。

法律の規定を実施するために政令を定めるのは内閣の事務であるが、その法律による委任がある場合には、政令に罰則を設けることもできる。 2.妥当である

行政立法は、法律の委任がある場合は、罰則を設けることはできる(憲法73条6号)。
政令および省令は、法律の委任があれば、罰則を設けることができる(憲法73条6号ただし書き、国家行政組織法12条3項)。

法律による委任の範囲を逸脱して定められた委任命令は違法となるが、権限を有する機関が取り消すまでは有効なものとして取り扱われる。 3.妥当でない

委任命令とは、行政が法律の委任に基づき、法律の内容を補充・具体化し、新たに国民の権利を制限し義務を課す命令である。
法律の委任があれば罰則を設けることができるが、法律の範囲を逸脱して定められた委任命令は無効であり、「権限を有する機関が取り消すまでは有効なものとして取り扱われる」とはいえない。

未決勾留により拘禁された者と14歳未満の者との接見を許さないとする監獄法施行規則120条および124条(法規命令のうち委任命令)は、監獄法50条(法律)の委任の範囲を超え、無効(最判平成3年7月9日)

父から認知された婚姻外懐胎児童を「(父から認知された児童を除く)」とかっこ書きにより児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲から除外した(旧)児童扶養手当法施行令1条の2第3号(法規命令のうち委任命令)は、児童扶養手当法4条1項5号(法律)の委任の範囲を逸脱した違法な規定として、無効(最判平成14年1月31日)

通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合には、当該通達に対して取消訴訟を提起することができる。 4.妥当でない

「当該通達に対して取消訴訟を提起することができる」は妥当でない。

「元来、通達は、原則として、法規の性質をもつものではなく、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものである」
「このような通達は関係下級行政機関および職員に対する行政組織内部における命令にすぎないから、これらのものがその通達に拘束されることはあっても、一般の国民は直接これに拘束されるものではない」
「通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合においても別段異なるところはない」
したがって取消を求める訴えを提起することはできないとしている(最判昭和43年12月24日)。

行政手続法が適用される不利益処分の処分基準において、過去に処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定が加重される旨の定めがある場合には、当該処分基準の定めに反する後行の処分は当然に無効となる。 5.妥当でない

「当該処分基準の定めに反する後行の処分は当然に無効となる」は妥当でない。

当然に無効となるわけではなく、行政事件訴訟法30条に基づき裁量権の逸脱または濫用があった場合に限り、裁判所が処分を取り消すことができる。

「行政庁が行政手続法12条1項の規定により定めて公にしている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に、当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば、裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱またはその濫用にあたることとなる。」
「行政手続法12条1項の規定により定められ公にされている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合には、先行の処分にあたる処分を受けた者は、将来において後行の処分にあたる処分の対象となり得るときは、先行の処分にあたる処分の効果が期間の経過によりなくなった後においても当該処分基準の定めにより不利益な取扱いを受けるべき期間内はなお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するものと解するのが相当である」(最判平成27年3月3日)

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