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令和6年-問8 行政法 行政総論

Lv3

問題 更新:2025-01-10 00:45:43

行政行為(処分)に関する次の記述のうち、法令の定めまたは最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 処分に瑕疵があることを理由とする処分の取消しは、行政事件訴訟法上の取消訴訟における判決のほか、行政不服審査法上の不服申立てにおける裁決または決定によってのみすることができる。
  2. 金銭納付義務を課す処分の違法を理由として国家賠償請求をするためには、事前に当該処分が取り消されていなければならない。
  3. 処分取消訴訟の出訴期間が経過した後に当該処分の無効を争うための訴訟としては、行政事件訴訟法が法定する無効確認の訴えのみが許されている。
  4. 処分Aの違法がこれに後続する処分Bに承継されることが認められる場合であっても、処分Aの取消訴訟の出訴期間が経過している場合には、処分Bの取消訴訟において処分Aの違法を主張することは許されない。
  5. 瑕疵が重大であるとされた処分は、当該瑕疵の存在が明白なものであるとまでは認められなくても、無効とされる場合がある。
  解答&解説

正解 5

解説

処分に瑕疵があることを理由とする処分の取消しは、行政事件訴訟法上の取消訴訟における判決のほか、行政不服審査法上の不服申立てにおける裁決または決定によってのみすることができる。 1.妥当でない

処分の取消しは、本肢以外に行政処分の職権取消しもあるので妥当ではない。

行政処分の職権取消しとは、当該行政処分が違法ないし不当になされたことを理由にその効力を処分がなされた時に遡ってなかったことにする行政行為である。

行政行為の取消しの実質的根拠は、適法性の回復あるいは合目的性の回復にあり、処分行政庁が職権により取り消す場合には、法律の根拠は必要ではない。ただし、相手に利益を与える授益的行政行為の場合には、職権取消しが利益衡量原則により制限されることがある。

「行政処分が違法または不当であれば、それが、たとえ、当然無効と認められず、また、すでに法定の不服申立期間の徒過により争訟手続によってその効力を争い得なくなったものであっても、処分をした行政庁その他正当な権限を有する行政庁においては、自らその違法または不当を認めて、処分の取消によって生ずる不利益と、取消をしないことによってかかる処分に基づきすでに生じた効果をそのまま維持することの不利益とを比較考量し、しかも該処分を放置することが公共の福祉の要請に照らし著しく不当であると認められるときに限り、これを取り消すことができる(最判昭和43年11月7日)。」

金銭納付義務を課す処分の違法を理由として国家賠償請求をするためには、事前に当該処分が取り消されていなければならない。 2.妥当でない

「事前に当該処分が取り消されていなければならない」が妥当でない。

判例は「行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ処分の救済または無効確認の判決を得る必要はない」としている(最判昭和36年4月21日)。

処分取消訴訟の出訴期間が経過した後に当該処分の無効を争うための訴訟としては、行政事件訴訟法が法定する無効確認の訴えのみが許されている。 3.妥当でない

「行政事件訴訟法が法定する無効確認の訴えのみが許されている。」としているので妥当でない。

処分取消訴訟の出訴期間が経過した後に当該処分の無効を争うための訴訟は、行政事件訴訟法が法定する無効確認の訴えのほか、民事訴訟または当事者訴訟でも主張することも可能である。

処分Aの違法がこれに後続する処分Bに承継されることが認められる場合であっても、処分Aの取消訴訟の出訴期間が経過している場合には、処分Bの取消訴訟において処分Aの違法を主張することは許されない。 4.妥当でない

「処分Bの取消訴訟において処分Aの違法を主張することは許されない」は、妥当ではない。

いわゆる「違法性の承継」と呼ばれるものだが、関連のある連続する別個の行政行為において、先行する行政行為が違法であっても、後行の行政行為には影響を及ぼさないのが原則である。

ただし、例外的に先行行為と後行行為の目的が共通しており、相結合して同一の法的効果を生じる場合は、先行行為は後行行為の準備行為にすぎないため違法性の承継が認められる(最判昭和25年9月15日)。

違法を主張することが許されるかが争点となった判例[建築確認の取消訴訟において先行する建築安全条例による安全認定(異なる機関による処分であり、既に出訴期間が徒過している)]は、「建築確認と安全認定は、避難または通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるもので、結合して初めて建築主に一定の地位を付与するという効果を発揮する点や安全認定についてその適否を争うための手続的保障が十分ではなく、その段階では判断が難しいことを理由に先行する安全認定の違法を主張することは許される」としている(最判平成21年12月17日)。

この判例を踏まえれば、先行の行政行為であるA処分の出訴期間が過ぎていても、後行の行政行為であるB処分の取消訴訟を提起して、先行の行政行為であるA処分の違法性を主張することができることになる。

瑕疵が重大であるとされた処分は、当該瑕疵の存在が明白なものであるとまでは認められなくても、無効とされる場合がある。 5.妥当である

判例は、「課税処分が課税庁と被課税者との間にのみ存するもので、処分の存在を信頼する第三者の保護を考慮する必要のないこと等を勘案すれば、当該処分における内容上の過誤が課税要件の根幹についてのそれであって、徴税行政の安定とその円滑な運営の要請を斟酌してもなお、不服申立期間の徒過による不可争的効果の発生を理由として被課税者に右処分による不利益を甘受させることが、著しく不当と認められるような例外的な事情のある場合には、前記の過誤による瑕疵は、当該処分を当然無効ならしめるものと解するのが相当である(最一小判昭和48年4月26日)」とし、例外的な事情がある場合は、必ずしも明白性は要件とならず、当然無効になる場合があることを判示している。

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