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令和6年-問6 憲法 参政権

Lv4

問題 更新:2025-01-10 00:44:35

選挙制度の形成に関する国会の裁量についての次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 都道府県が歴史的にも政治的、経済的、社会的にも独自の意義と実体を有する単位である以上、参議院の選挙区選出議員に都道府県代表的な意義を付与し、その枠内で投票価値の平等の実現を図ることは、憲法上許容される。
  2. 小選挙区制は、死票を多く生む可能性があることは否定し難いが、死票はいかなる制度でも生ずるものであり、結局のところ選挙を通じて国民の総意を議席に反映させる一つの合理的方法ということができる。
  3. 同時に行われる二つの選挙に同一の候補者が重複して立候補することを認めるか否かは、国会が裁量により決定することができる事項であり、衆議院議員選挙で小選挙区選挙と比例代表選挙との重複立候補を認める制度は憲法に違反しない。
  4. 政党を媒体として国民の政治意思を国政に反映させる名簿式比例代表制を採用することは国会の裁量に属し、名簿登載者個人には投票したいがその属する政党には投票したくないという意思を認めない非拘束名簿式比例代表制もまた同様である。
  5. 参議院の比例代表選出議員について、政党が優先的に当選者となるべき候補者を定めることができる特定枠制度は、選挙人の総意によって当選人が決定される点で、選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異ならず、憲法に違反しない。
  解答&解説

正解 1

解説

都道府県が歴史的にも政治的、経済的、社会的にも独自の意義と実体を有する単位である以上、参議院の選挙区選出議員に都道府県代表的な意義を付与し、その枠内で投票価値の平等の実現を図ることは、憲法上許容される。 1.妥当でない

「議会制民主主義をとる我が憲法の下においては、国権の最高機関である国会を構成する衆議院および参議院の各議員を選挙する権利は、国民の国政への参加の機会を保障する基本的権利であって、憲法は、その重要性にかんがみ、憲法14条1項の定める法の下の平等の原則の政治の領域における適用として、成年者による普通選挙を保障するとともに、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産または収入によって選挙人の資格を差別してはならないものとしている(憲法15条3項、憲法44条)。
そして、この選挙権の平等の原則は、単に選挙人の資格における差別を禁止するにとどまらず、選挙権の内容の平等、すなわち議員の選出における各選挙人の投票の有する価値の平等をも要求するものと解するのが相当である。」
「しかしながら、もともと投票価値は、議会制民主主義の下において国民各自、各層のさまざまな利害や意見を公正かつ効果的に議会に代表させるための方法としての具体的な選挙制度の仕組みをどのように定めるかによってなんらかの差異を生ずることを免れない性質のものである。
そして、憲法は、国会両議院の議員の選挙について、およそ議員は全国民を代表するものでなければならないという制約の下で、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとし(憲法43条、憲法47条)、どのような選挙の制度が国民の利害や意見を公正かつ効果的に国会に反映させることになるかの決定を国会の極めて広い裁量に委ねているのである。」
「それゆえ、憲法は、投票価値の平等を選挙制度の仕組みの決定における唯一、絶対の基準としているものではなく、国会は、正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由をもしん酌して、その裁量により衆議院議員および参議院議員それぞれについて選挙制度の仕組みを決定することができるのであって、国会が具体的に定めたところのものがその裁量権の行使として合理性を是認しうるものである限り、それによって投票価値の平等が損なわれることとなっても、やむをえないものと解すべきである。」(最大判昭和58年4月27日)

「都道府県が歴史的にも政治的、経済的、社会的にも独自の意義と実体を有し、政治的に一つのまとまりを有する単位として捉え得ることに照らし、都道府県を各選挙区の単位とすることによりこれを構成する住民の意思を集約的に反映させ得る旨の指摘をしていたが、この点についても、都道府県を参議院議員の各選挙区の単位としなければならないという憲法上の要請はなく、むしろ、都道府県を各選挙区の単位として固定する結果、その間の人口較差に起因して上記のように投票価値の大きな不平等状態が長期にわたって継続している状況の下では、上記の都道府県の意義や実体等をもって上記の選挙制度の仕組みの合理性を基礎付けるには足りなくなっているものといわなければならない。」(最大判平成26年11月26日)

大都市への人口集中、地方の過疎化によって、投票価値の著しい不平等状態が生じており、近年の最高裁判決を経て、2つの県を跨いだ選挙区である合区や、選挙区議員定数の是正を行う改正がなされている。

小選挙区制は、死票を多く生む可能性があることは否定し難いが、死票はいかなる制度でも生ずるものであり、結局のところ選挙を通じて国民の総意を議席に反映させる一つの合理的方法ということができる。 2.妥当である

「小選挙区制の下においては死票を多く生む可能性があることは否定し難いが、死票はいかなる制度でも生ずるものであり、・・・小選挙区制は、選挙を通じて国民の総意を議席に反映させる一つの合理的方法ということができ、これによって選出された議員が全国民の代表であるという性格と矛盾抵触するものではない(最大判平成11年11月10日)」

同時に行われる二つの選挙に同一の候補者が重複して立候補することを認めるか否かは、国会が裁量により決定することができる事項であり、衆議院議員選挙で小選挙区選挙と比例代表選挙との重複立候補を認める制度は憲法に違反しない。 3.妥当である

最高裁は、選挙制度の選択が立法裁量に委ねられていることを前提に、小選挙区比例代表並立制も違憲ではないと判断している。

「重複立候補制を採用し、小選挙区選挙において落選した者であっても比例代表選挙の名簿順位によっては同選挙において当選人となることができるものとしたことについては、小選挙区選挙において示された民意に照らせば、議論があり得るところと思われる。
しかしながら、前記のとおり、選挙制度の仕組みを具体的に決定することは国会の広い裁量にゆだねられているところ、同時に行われる二つの選挙に同一の候補者が重複して立候補することを認めるか否かは、右の仕組みの一つとして、国会が裁量により決定することができる事項である」
「改正公選法87条は重複立候補を原則として禁止しているが、これは憲法から必然的に導き出される原理ではなく、立法政策としてそのような選択がされているものであり、改正公選法86条の2第4項が政党本位の選挙を目指すという観点からこれに例外を設けたこともまた、憲法の要請に反するとはいえない。
したがって、重複立候補制を採用したこと自体が憲法前文、憲法43条1項、憲法14条1項、憲法15条3項、憲法44条に違反するとはいえない(最大判平成11年11月10日)。」

政党を媒体として国民の政治意思を国政に反映させる名簿式比例代表制を採用することは国会の裁量に属し、名簿登載者個人には投票したいがその属する政党には投票したくないという意思を認めない非拘束名簿式比例代表制もまた同様である。 4.妥当である

「国会が、参議院議員の選挙制度の仕組みを決定するにあたり、政党の上記のような国政上の重要な役割にかんがみて、政党を媒体として国民の政治意思を国政に反映させる名簿式比例代表制を採用することは、その裁量の範囲に属する」
「名簿式比例代表制は、政党の選択という意味を持たない投票を認めない制度であるから、参議院名簿登載者個人には投票したいが、その者の所属する参議院名簿届出政党等には投票したくないという投票意思が認められないことが、国民の選挙権を侵害し、憲法15条に違反するものとまではいえない。」
「名簿式比例代表制の下においては、名簿登載者は、各政党に所属する者という立場で候補者となっているのであるから、参議院名簿登載者の氏名の記載のある投票を参議院名簿登載者の所属する参議院名簿届出政党等に対する投票としてその得票数を計算するものとしていることには、合理性が認められ、国会の裁量権の限界を超えるものではない(最大判平成16年1月14日)。」

参議院の比例代表選出議員について、政党が優先的に当選者となるべき候補者を定めることができる特定枠制度は、選挙人の総意によって当選人が決定される点で、選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異ならず、憲法に違反しない。 5.妥当である

「参議院(比例代表選出)議員の選挙制度は、政党等にあらかじめ候補者の氏名および特定枠の候補者を定める場合にはその氏名等を記載した名簿を届け出させた上、選挙人が名簿登載者または政党等を選択して投票を行い、各政党等の得票数(当該政党等に係る各参議院名簿登載者の得票数を含む)に基づきその当選人数を決定した上、各政党等の名簿に記載された特定枠の順位および各候補者の得票数の多寡に応じて当選人を決定する選挙制度である」
「投票の結果すなわち選挙人の総意により当選人が決定される点において、選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異なるところはない。」
「参議院(比例代表選出)議員の選挙に関する公職選挙法の規定は憲法43条1項等の憲法の規定に違反するものではない(最判令和2年10月23日)。」

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