令和6年-問2 基礎法学 裁判制度
Lv4
問題 更新:2025-01-10 00:41:49
訴訟の手続の原則に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
- 民事訴訟手続において、裁判長は、口頭弁論の期日または期日外に、訴訟関係を明確にするため、事実上および法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、または立証を促すことができる。
- 刑事訴訟手続において、検察官は、犯人の性格、年齢および境遇、犯罪の軽重および情状ならびに犯罪後の状況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
- 非訟事件手続において、裁判所は、利害関係者の申出により非公開が相当と認められる場合を除き、その手続を公開しなければならない。
- 民事訴訟手続において、裁判所は、裁判をするにあたり、口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。
- 刑事訴訟手続において、検察官は、起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添付し、またはその内容を引用してはならない。
正解 3
解説
民事訴訟手続において、裁判長は、口頭弁論の期日または期日外に、訴訟関係を明確にするため、事実上および法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、または立証を促すことができる。 1.妥当である
裁判長は、口頭弁論の期日または期日外において、訴訟関係を明瞭にするため、事実上および法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、または立証を促すことができる(民事訴訟法149条1項)。
このような裁判官の行為を釈明権の行使という。
刑事訴訟手続において、検察官は、犯人の性格、年齢および境遇、犯罪の軽重および情状ならびに犯罪後の状況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。 2.妥当である
犯人の性格、年齢および境遇、犯罪の軽重および情状ならびに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる(刑事訴訟法248条)。
刑事訴訟法では検察官に公訴を提起するかどうかについての裁量を認めている。これを起訴便宜主義という。
非訟事件手続において、裁判所は、利害関係者の申出により非公開が相当と認められる場合を除き、その手続を公開しなければならない。 3.妥当でない
非訟事件の手続は、公開しない。ただし、裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる(非訟事件手続法30条)。
なお、民事訴訟に関しては「純然たる訴訟事件としての性質の認められる刑事制裁を科する作用とは異なるから、憲法82条、憲法32条の定めるところにより、公開の法廷における対審および判決によって行なわれなければならないものではない(最判昭和41年12月27日)」などの判例がある。
民事訴訟手続において、裁判所は、裁判をするにあたり、口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。 4.妥当である
裁判所は、判決をするにあたり、口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する(民事訴訟法247条)。
これを自由心証主義という。
また自由心証主義により、提出された証拠にどれくらいの証拠力を認定するかについては、裁判所の自由な判断に委ねられる。
刑事訴訟手続において、検察官は、起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添付し、またはその内容を引用してはならない。 5.妥当である
起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめるおそれのある書類その他の物を添付し、またはその内容を引用してはならない(刑事訴訟法256条6項)。
公訴の提起は裁判官に予断を抱かせないようにするために、起訴状1枚の提出のみで行う。
これを起訴状一本主義という。