令和4年-問33 民法 債権
Lv4
問題 更新:2023-01-17 10:36:48
法定利率に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。
- 利息付金銭消費貸借契約において、利息について利率の定めがなかったときは、利息の利率は借主が金銭を受け取った日の法定利率による。
- 利息付金銭消費貸借契約において、当初適用された法定利率が変動したときは、当該消費貸借の利息に適用される法定利率も一緒に変動する。
- 利息付金銭消費貸借契約において、利息について利率の定めがあったが遅延損害の額の定めがなかった場合に、当該利息の約定利率が法定利率より低かったときは、遅延損害の額は法定利率によって定める。
- 不法行為に基づく損害賠償において、遅延損害金は、原則として不法行為時の法定利率によって定める。
- 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。
正解 2
解説
利息付金銭消費貸借契約において、利息について利率の定めがなかったときは、利息の利率は借主が金銭を受け取った日の法定利率による。 1.妥当である
金銭消費貸借において、利息についての特約があるときは、貸主は、借主が金銭その他の物を受け取った日以後の利息を請求することができる(民法589条2項)。
利息について定めをして、利率について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点(金銭を受け取った日)における法定利率・年3%になる(民法404条1項・2項)。
ただし、この利率は、3年ごとに見直しがされる(民法404条3項)。
利息付金銭消費貸借契約において、当初適用された法定利率が変動したときは、当該消費貸借の利息に適用される法定利率も一緒に変動する。 2.妥当でない
利息付金銭消費貸借契約において、当初適用された法定利率が変動があったとしても、当該債権に適用される利率は変動しない。
利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による(民法404条1項)との規定がある。
これは、もし法定利率の変更に伴い適用利率も変更するとした場合、時々刻々発生する利息又は遅延損害金にその時々の法定利率が適用され、法定利率適用の基準時(民法404条)という考え方自体が不要になってしまうし、金銭債務の遅延損害金に関する規定によって(民法419条1項)、ある時期は法定利率が適用され、ある時期は約定利率が適用されるというケースが生じることになってしまうからである。
利息付金銭消費貸借契約において、利息について利率の定めがあったが遅延損害の額の定めがなかった場合に、当該利息の約定利率が法定利率より低かったときは、遅延損害の額は法定利率によって定める。 3.妥当である
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による(民法419条1項)。
つまり、利息の約定利率が法定利率より低かったときは、遅延損害の額は法定利率によって定めることになる。
不法行為に基づく損害賠償において、遅延損害金は、原則として不法行為時の法定利率によって定める。 4.妥当である
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める(民法419条1項本文)。
そして、不法行為に基づく損害賠償請求権の履行遅滞に陥る時期は、不法行為の時である(最判昭和37年9月4日)。
これは、被害者救済の観点から、不法行為による損害の瞬間から加害者は支払うべき債務ととらえているからである。
よって、不法行為に基づく損害賠償において、遅延損害金は、原則として不法行為時の法定利率によって定めることになる。
将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。 5.妥当である
将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする(民法417条の2第1項)。