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令和4年-問32 民法 債権

Lv3

問題 更新:2024-01-07 12:13:47

Aは、Bとの間でA所有の甲建物の賃貸借契約を締結し、甲建物を引き渡したが、その後、Aは、同建物をCに譲渡した。Aは、同賃貸借契約締結時にBから敷金を提供され、それを受け取っていた。この場合についての次の記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはどれか。

  1. 甲建物についてのAのBに対する賃貸人たる地位は、Bの承諾を要しないで、AとCとの合意により、Cに移転させることができる。
  2. 甲建物の譲渡によるCへの賃貸人たる地位の移転は、甲建物についてAからCへの所有権移転登記をしなければ、Bに対抗することができない。
  3. AとCが甲建物の賃貸人たる地位をAに留保する旨の合意および甲建物をCがAに賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位はCに移転しない。
  4. 賃貸人たる地位がCに移転した場合、Bは、Cの承諾を得なければ、甲建物の賃借権を譲り渡すことはできないが、甲建物を転貸するときは、Cの承諾を要しない。
  5. 賃貸人たる地位がCに移転した場合、敷金の返還に係る債務はCに承継され、Cが、Bに対し、その債務を負う。
  解答&解説

正解 4

解説

甲建物についてのAのBに対する賃貸人たる地位は、Bの承諾を要しないで、AとCとの合意により、Cに移転させることができる。 1.正しい

民法605条、借地借家法10条又は31条(建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。)その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する(民法605条の2第1項)。

Bは甲建物の引渡しを受けているため、借地借家法31条に基づき賃貸借の対抗力を備えている。
したがって、甲建物についてのAのBに対する賃貸人たる地位は、Bの承諾を要しないで、Cに移転する。

なお、契約上の地位の移転について、原則は民法539条の2(契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する。)であり、賃貸借契約を締結し、対抗要件を備えている場合に当該不動産が譲渡されたときは、民法605条の2により、修正されていることに注意したい。

甲建物の譲渡によるCへの賃貸人たる地位の移転は、甲建物についてAからCへの所有権移転登記をしなければ、Bに対抗することができない。 2.正しい

賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない(民法605条の2第3項)。

AとCが甲建物の賃貸人たる地位をAに留保する旨の合意および甲建物をCがAに賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位はCに移転しない。 3.正しい

不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない(民法605条の2第2項前段)。

賃貸人たる地位がCに移転した場合、Bは、Cの承諾を得なければ、甲建物の賃借権を譲り渡すことはできないが、甲建物を転貸するときは、Cの承諾を要しない。 4.誤り

「甲建物を転貸するときは、Cの承諾を要しない。」としている点が誤り。転貸するときもCの承諾が必要である。

賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない(民法612条1項)。
また、賃借人が賃貸人の承諾を得ず第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる(民法612条2項)。

賃貸人たる地位がCに移転した場合、敷金の返還に係る債務はCに承継され、Cが、Bに対し、その債務を負う。 5.正しい

賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、費用の償還に係る債務及び敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する(民法605条の2第4項)。

よって、敷金の返還に係る債務はCに承継され、Cが、Bに対し、その債務を負う。

なお、敷金返還債務について、判例は「建物賃貸借契約において、当該建物の所有権移転に伴い賃貸人たる地位に承継があった場合には、旧賃貸人に差し入れられた敷金は、未払賃料債務があればこれに当然充当され、残額についてその権利義務関係が新賃貸人に承継される」(最判昭和44年7月17日)とし、有益費の償還義務について新賃貸人が負うとしている(最判昭和46年2月19日)。

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