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  4. 問18

令和4年-問18 行政法 行政事件訴訟法

Lv3

問題 更新:2023-01-17 10:07:59

抗告訴訟の対象に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 都市計画法に基づいて、公共施設の管理者である行政機関等が行う開発行為への同意は、これが不同意であった場合には、開発行為を行おうとする者は後続の開発許可申請を行うことができなくなるため、開発を行おうとする者の権利ないし法的地位に影響を及ぼすものとして、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。
  2. 都市計画区域内において用途地域を指定する決定は、地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課すものではあるが、その効果は、新たにそのような制約を課する法令が制定された場合と同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なものにすぎず、当該地域内の個人の具体的な権利を侵害するものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当しない。
  3. 市町村の施行に係る土地区画整理事業計画の決定により、事業施行地区内の宅地所有者等は、所有権等に対する規制を伴う土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされるため、当該計画の決定は、その法的地位に直接的な影響を及ぼし、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。
  4. 地方公共団体が営む水道事業に係る条例所定の水道料金を改定する条例の制定行為は、同条例が上記水道料金を一般的に改定するものであって、限られた特定の者に対してのみ適用されるものではなく、同条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできないから、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当しない。
  5. 特定の保育所の廃止のみを内容とする条例は、他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により各保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童およびその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る法的地位を奪う結果を生じさせるものであるから、その制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得るものということができ、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。
  解答&解説

正解 1

解説

都市計画法に基づいて、公共施設の管理者である行政機関等が行う開発行為への同意は、これが不同意であった場合には、開発行為を行おうとする者は後続の開発許可申請を行うことができなくなるため、開発を行おうとする者の権利ないし法的地位に影響を及ぼすものとして、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。 1.妥当でない

「開発を行おうとする者の権利ないし法的地位に影響を及ぼすものとして、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する」としている点が妥当でない。

「行政機関等が公共施設の管理権限を有する場合には、行政機関等が都市計画法32条の同意を求める相手方となり、・・・この同意が得られなければ、公共施設に影響を与える開発行為を適法に行うことはできないが、これは、法が要件を満たす場合に限ってこのような開発行為を行うことを認めた結果にほかならないのであって、同意を拒否する行為それ自体は、開発行為を禁止又は制限する効果をもつものとはいえない。
したがって、開発行為を行おうとする者が、同意を得ることができず、開発行為を行うことができなくなったとしても、その権利ないし法的地位が侵害されたものとはいえないから、同意を拒否する行為が、国民の権利ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすものであると解することはできない
公共施設の管理者である行政機関等が法23条所定の同意を拒否する行為は、抗告訴訟の対象となる処分にはあたらない(最判平成7年3月23日)」。

都市計画法

第32条 開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為に関係がある公共施設の管理者と協議し、その同意を得なければならない。

2項 開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為又は開発行為に関する工事により設置される公共施設を管理することとなる者その他政令で定める者と協議しなければならない。

3項 前二項に規定する公共施設の管理者又は公共施設を管理することとなる者は、公共施設の適切な管理を確保する観点から、前二項の協議を行うものとする。

都市計画区域内において用途地域を指定する決定は、地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課すものではあるが、その効果は、新たにそのような制約を課する法令が制定された場合と同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なものにすぎず、当該地域内の個人の具体的な権利を侵害するものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当しない。 2.妥当である

「都市計画区域内において高度地区を指定する決定は、当該地区内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できないが、かかる効果は、あたかも新たに制約を課する法令が制定された場合におけると同様の当該地区内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに右地区内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったものとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできない。」とし、さらに「高度地区指定の決定は、抗告訴訟の対象となる処分にはあたらないと解するのが相当」と判示している(最判昭和57年4月22日)。

市町村の施行に係る土地区画整理事業計画の決定により、事業施行地区内の宅地所有者等は、所有権等に対する規制を伴う土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされるため、当該計画の決定は、その法的地位に直接的な影響を及ぼし、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。 3.妥当である

市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は、施行地区内の宅地所有者等の法的地位に変動をもたらすものであって、抗告訴訟の対象とするに足りる法的効果を有するものということができ、実効的な権利救済を図るという観点から見ても、これを対象とした抗告訴訟の提起を認めるのが合理的である。
したがって、上記事業計画の決定は、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為」にあたると解するのが相当である(最判平成20年9月10日)。

最判平成20年9月10日は、従来、当該計画は青写真にすぎないとして(青写真論)処分性が否定されていたものを、判例変更して処分性を肯定したものであるが、今後、他の行政計画にも当該判例の影響が及ぶ可能性があるのではないかと指摘されている。

拘束的計画では、その計画ごとによって、処分性の判断が異なっている。
主なものは以下を参照されたい。

①処分性が否定された例
  • 都市計画法に基づく用途地域・高度地区の指定(最判昭和57年4月22日)
  • 道路に関する都市計画変更決定(最判昭和62年9月22日)
  • 都市計画法に基づく地区計画(最判平成6年4月22日)
②処分性が肯定された例
  • 土地区画整理組合の認可(最判昭和60年12月17日)
  • 土地改良事業計画における事業施行の認可(最判昭和61年2月13日)
  • 第二種市街地再開発事業計画の決定・公告(最判平成4年11月26日)
  • 土地区画整理事業計画の決定(最判平成20年9月10日)

地方公共団体が営む水道事業に係る条例所定の水道料金を改定する条例の制定行為は、同条例が上記水道料金を一般的に改定するものであって、限られた特定の者に対してのみ適用されるものではなく、同条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできないから、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当しない。 4.妥当である

普通地方公共団体が営む水道事業に係る条例所定の水道料金を改定する条例の制定行為は、同条例が水道料金を一般的に改定するものであって、限られた特定の者に対してのみ適用されるものではなく、同条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできないから行政処分には該当しない(最判平成18年7月14日)。

特定の保育所の廃止のみを内容とする条例は、他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により各保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童およびその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る法的地位を奪う結果を生じさせるものであるから、その制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得るものということができ、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。 5.妥当である

各保育所の廃止のみを内容とする本件改正条例は、他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により各保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る法的地位を奪う結果が生じるから、行政処分に該当する(最判平成21年11月26日)。

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