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  4. 問17

令和4年-問17 行政法 行政事件訴訟法

Lv3

問題 更新:2023-01-17 10:07:21

行政事件訴訟法の定めに関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟である抗告訴訟として適法に提起できる訴訟は、行政事件訴訟法に列挙されているものに限られる。
  2. 不作為の違法確認の訴えに対し、請求を認容する判決が確定した場合、当該訴えに係る申請を審査する行政庁は、当該申請により求められた処分をしなければならない。
  3. 不作為の違法確認の訴えは、処分または裁決についての申請をした者に限り提起することができるが、この申請が法令に基づくものであることは求められていない。
  4. 「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しない行為については、民事保全法に規定する仮処分をする余地がある。
  5. 当事者訴訟については、具体的な出訴期間が行政事件訴訟法において定められているが、正当な理由があるときは、その期間を経過した後であっても、これを提起することができる。
  解答&解説

正解 4

解説

行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟である抗告訴訟として適法に提起できる訴訟は、行政事件訴訟法に列挙されているものに限られる。 1.妥当でない

「行政事件訴訟法に列挙されているものに限られる」という点が妥当でない。
法律で定められていない訴訟も提起できる余地がある。

抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう(行政事件訴訟法3条1項)。
具体的には、処分の取消しの訴え、裁決の取消しの訴え、無効等確認の訴え、不作為の違法確認の訴え、義務付けの訴え、及び差止めの訴えが法定されている。

そして、法律で定められていない訴訟類型として無名抗告訴訟がある。これは、文字どおり「無名の訴訟」、法定外抗告訴訟とも呼ばれる。
義務付け訴訟や差止訴訟は、従来は無名抗告訴訟の典型としてあげられていたが、現在は法定抗告訴訟である(行政事件訴訟法3条6項・7項、37条の2、4、5)。
これらが法定化されたことによって、無名抗告訴訟の意義は薄まったといえるが、存在自体が否定されたわけではない。
例えば命令権限の不行使が違法であることの確認を求める義務確認訴訟(東京地判平成13年12月4日)など、無名抗告訴訟として提起する余地がある。

不作為の違法確認の訴えに対し、請求を認容する判決が確定した場合、当該訴えに係る申請を審査する行政庁は、当該申請により求められた処分をしなければならない。 2.妥当でない

「当該申請により求められた処分をしなければならない」という点が妥当でない。

不作為の違法確認の訴えとは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう(行政事件訴訟法3条5項)。

私人がある申請をし、この申請に対して行政庁が応答しない場合、処分や裁決が存在しない状態となっているので取消訴訟での救済はできない。このような申請者を救済するための訴訟類型として、不作為の違法確認の訴えがある。
この不作為の違法確認の訴えでは、行政庁の申請に対する不作為の状態を違法であることを確認するのみで、裁判所が行政庁に代わって何らかの行政処分を行うことを求めることはできない。

不作為の違法確認の訴えによって、不作為が違法であると裁判所が判断した以上、判決の拘束力により行政庁はなんらかの処分をすることを迫られるが、あくまでも不作為について違法が確認されたに過ぎず、裁判所が処分の内容について判断したり、命令したりしているわけではない。
したがって、行政庁は拒否及び却下処分をすることが可能である。

なお、不作為の違法確認の訴えを提起した後に行政庁が拒否処分を行った場合、不作為状態が解消され訴えの利益がなくなるので裁判所は却下判決を下すことになるが、この拒否処分を争うために、不作為の違法確認訴訟を拒否処分の取消訴訟に変更することは可能であるとされている。

不作為の違法確認の訴えは、処分または裁決についての申請をした者に限り提起することができるが、この申請が法令に基づくものであることは求められていない。 3.妥当でない

「この申請が法令に基づくものであることは求められていない」という点が妥当でない。

不作為の違法確認の訴えとは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう(行政事件訴訟法3条5項)。
また、訴えを提起できる者は、処分又は裁決についての申請をした者に限られる(行政事件訴訟法37条)。これは、行政不服審査法における不作為の不服申立てと同様である。

ここにいう「法令に基づく申請」には、法令で「申請」と表現しているものに限られない。法令の解釈上、申請権が認められているものが含まれる。
また、正規の法令に限られず、内規や要綱なども含まれると解されており、例えば国立大学の学部内規による申請も対象となる。

「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しない行為については、民事保全法に規定する仮処分をする余地がある。 4.妥当である

民事訴訟では、勝訴しても無意味とならないように、民事保全法にて仮処分という制度を設けているところ、行政事件訴訟では、執行不停止を原則としつつも、必要に応じて執行停止が行政事件訴訟法で認められているので(行政事件訴訟法25条)、行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為について、民事保全法に規定する仮処分をすることができない(行政事件訴訟法44条)。

よって、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しない行為については、民事保全法に規定する仮処分をする余地がある」は、妥当といえる。

当事者訴訟については、具体的な出訴期間が行政事件訴訟法において定められているが、正当な理由があるときは、その期間を経過した後であっても、これを提起することができる。 5.妥当でない

「当事者訴訟については、具体的な出訴期間が行政事件訴訟法において定められているが」という点が妥当でない。
「当事者訴訟の具体的な出訴期間」は、行政事件訴訟法で定められているわけではない。

行政事件訴訟法では、法令に出訴期間の定めがある当事者訴訟は、その法令に別段の定めがある場合を除き、正当な理由があるときは、その期間を経過した後であっても、これを提起することができると規定している(行政事件訴訟法40条1項)。

当事者訴訟は、行政と国民とが対等の立場で当事者として争う訴訟である(行政事件訴訟法4条)が、そのうち形式的当事者訴訟は抗告訴訟と同様の性質があるので、当該訴訟を定める法律の多くが出訴期間の規定を設けている。
たとえば土地収用に伴う損失補償金の増額請求訴訟の場合、土地収用法では「収用委員会の裁決のうち損失の補償に関する訴えは、裁決書の正本の送達を受けた日から6ヵ月以内に提起しなければならない」(土地収用法133条2項)と規定され、例外的な延長を認めていない。
そこで行政事件訴訟法40条で、「正当な理由があるときは、その期間を経過した後であっても、これを提起することができる」とし、法令に出訴期間の定めがある当事者訴訟の期間の延長を認めていることになる。

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