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令和4年-問7 憲法 司法

Lv3

問題 更新:2023-01-17 09:59:06

裁判の公開に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 裁判は、公開法廷における対審および判決によらなければならないので、カメラ取材を裁判所の許可の下に置き、開廷中のカメラ取材を制限することは、原則として許されない。
  2. 裁判所が過料を科する場合は、それが純然たる訴訟事件である刑事制裁を科す作用と同質であることに鑑み、公開法廷における対審および判決によらなければならない。
  3. 証人尋問の際に、傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られても、審理が公開されていることに変わりはないから、裁判の公開に関する憲法の規定には違反しない。
  4. 傍聴人は法廷で裁判を見聞できるので、傍聴人が法廷でメモを取る行為は、権利として保障されている。
  5. 裁判官の懲戒の裁判は行政処分の性質を有するが、裁判官の身分に関わる手続であるから、裁判の公開の原則が適用され、審問は公開されなければならない。
  解答&解説

正解 3

解説

憲法82条1項
裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行う。

対審とは、裁判官の目の前で当事者が口頭でそれぞれの主張を述べる手続きのことである。
判決は、すべての審理が終了した後、原告の請求を認めるか否かを判断することにより、紛争解決を図る。

憲法82条1項は、裁判の公正さとそれに対する国民の信頼を確保することを目的に「裁判の対審及び判決」が公開法廷で行われるべきことを規定しており、これを「裁判公開の原則」と呼ぶ。

裁判は、公開法廷における対審および判決によらなければならないので、カメラ取材を裁判所の許可の下に置き、開廷中のカメラ取材を制限することは、原則として許されない。 1.妥当でない

「開廷中のカメラ取材を制限することは、原則として許されない。」としている点が妥当でない。

判例によると、開廷中のカメラ取材、写真撮影の許可等は裁判所の裁量に委ねられ、その許可に従わない場合制限されることは憲法に違反するものではなく、許されないとまではいえない。

「憲法が裁判の対審及び判決を公開法廷で行うことを規定しているのは、手続を一般に公開してその審判が公正に行われることを保障する趣旨にほかならないのであるから、たとい公判廷の状況を一般に報道するための取材活動であっても、その活動が公判廷における審判の秩序を乱し被告人その他訴訟関係人の正当な利益を不当に害するがごときものは、もとより許されないところであるといわなければならない。
ところで、公判廷における写真の撮影等は、その行われる時、場所等のいかんによっては、前記のような好ましくない結果を生ずる恐れがあるので、刑事訴訟規則215条(公判廷における写真の撮影、録音又は放送は、裁判所の許可を得なければ、これをすることができない。)は写真撮影の許可等を裁判所の裁量に委ね、その許可に従わないかぎりこれらの行為をすることができないことを明らかにしたのであって、右規則は憲法に違反するものではない(北海タイムス事件:最判昭和33年2月17日)。」

裁判所が過料を科する場合は、それが純然たる訴訟事件である刑事制裁を科す作用と同質であることに鑑み、公開法廷における対審および判決によらなければならない。 2.妥当でない

判例によると、裁判所が過料を科する場合、公開法廷における対審および判決によらなければならないわけではない。

「民事上の秩序罰としての過料を科する作用は、国家のいわゆる後見的民事監督の作用であり、その実質においては、一種の行政処分としての性質を有するものであるから、必ずしも裁判所がこれを科することを憲法上の要件とするものではなく、行政庁がこれを科する(地方自治法149条3号、255条の2参照)ことにしても、なんら違憲とすべき理由はない。
従って、法律上、裁判所がこれを科することにしている場合でも、過料を科する作用は、もともと純然たる訴訟事件としての性質の認められる刑事制裁を科する作用とは異なるのであるから、憲法82条、32条の定めるところにより、公開の法廷における対審及び判決によって行なわれなければならないものではない(最大判昭和41年12月27日)。」

証人尋問の際に、傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られても、審理が公開されていることに変わりはないから、裁判の公開に関する憲法の規定には違反しない。 3.妥当である

証人尋問の際に、傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られる行為が、裁判の公開の原則に違反するかについて判例は「証人尋問が公判期日において行われる場合、傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られ、あるいはビデオリンク方式によることとされ、さらには、ビデオリンク方式によった上で傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られても、審理が公開されていることに変わりはないから、これらの規定は、憲法82条1項、37条1項に違反するものではない(最判平成17年4月14日)。」としている。

憲法37条1項
すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

傍聴人は法廷で裁判を見聞できるので、傍聴人が法廷でメモを取る行為は、権利として保障されている。 4.妥当でない

判例によると、法廷でメモを取る行為は「尊重に値する」ものの、権利として保障されているとまではいえない。

「憲法82条1項の規定は、・・・傍聴人に対して法廷においてメモを取ることを権利として保障しているものでない・・・(しかし)傍聴人が法廷においてメモを取ることは、その見聞する裁判を認識、記憶するためになされるものである限り、尊重に値し、故なく妨げられてはならないものというべきである。(レペタ事件:最大判平成元年3月8日)」

裁判官の懲戒の裁判は行政処分の性質を有するが、裁判官の身分に関わる手続であるから、裁判の公開の原則が適用され、審問は公開されなければならない。 5.妥当でない

裁判官の懲戒の裁判について裁判公開の原則が適用され、審問は公開されなければならないかについて判例は「裁判官に対する懲戒は、裁判所が裁判という形式をもってすることとされているが、一般の公務員に対する懲戒と同様、その実質においては裁判官に対する行政処分の性質を有するものである。
したがって、裁判官に懲戒を課する作用は、固有の意味における司法権の作用ではなく、懲戒の裁判は、純然たる訴訟事件についての裁判にはあたらないことが明らかである。・・・分限事件は、訴訟とは全く構造を異にするというほかはない。
したがって、分限事件については憲法82条1項の適用はないものというべきである(寺西判事補事件:最大判平成10年12月1日)」

分限事件
心身の故障または本人の希望により免職を決定する場合や、裁判官として相応しくない行為をしたなどの理由で懲戒処分を下す必要のあるとき、裁判所で行われる審理。
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