令和3年-問38 商法 会社法Ⅰ
Lv2
問題 更新:2023-01-27 21:13:53
株券が発行されない株式会社の株式であって、振替株式ではない株式の質入れに関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。
- 株主が株式に質権を設定する場合には、質権者の氏名または名称および住所を株主名簿に記載または記録しなければ、質権の効力は生じない。
- 株主名簿に質権者の氏名または名称および住所等の記載または記録をするには、質権を設定した者は、質権者と共同して株式会社に対してそれを請求しなければならない。
- 譲渡制限株式に質権を設定するには、当該譲渡制限株式を発行した株式会社の取締役会または株主総会による承認が必要である。
- 株主名簿に記載または記録された質権者は、債権の弁済期が到来している場合には、当該質権の目的物である株式に対して交付される剰余金の配当(金銭に限る。)を受領し、自己の債権の弁済に充てることができる。
- 株主名簿に記載または記録された質権者は、株主名簿にしたがって株式会社から株主総会の招集通知を受け、自ら議決権を行使することができる。
正解 4
解説
株主が株式に質権を設定する場合には、質権者の氏名または名称および住所を株主名簿に記載または記録しなければ、質権の効力は生じない。 1.誤り
株券が発行されない株式会社の株式への質権の効力は当事者の意思表示で完了する。
このことが法律で明文化されているわけではないが、株券発行会社の株式の質入れが「当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。(会社法146条2項)」と規定されていることへの反対解釈とされている。
これは証書の存在しない場合の権利質の効力発生について準じる。
株主名簿への記載は質権の対象となる株式を発行する株式会社への対抗要件であり、当事者間の効力には影響を与えない。
株主名簿に質権者の氏名または名称および住所等の記載または記録をするには、質権を設定した者は、質権者と共同して株式会社に対してそれを請求しなければならない。 2.誤り
質権設定者は単独で株式会社に対して株主名簿への記載または記録の請求をすることができる(会社法148条)。
問題文は株式譲渡の際に株主名簿への記載の請求を譲受人と譲渡人とで共同で行う手続きなどと混同させているようである。
譲渡制限株式に質権を設定するには、当該譲渡制限株式を発行した株式会社の取締役会または株主総会による承認が必要である。 3.誤り
譲渡制限株式に質権を設定するために、株式会社の取締役会または株主総会の承認は不要である。
判例によると、譲渡制限株式は、もっぱら会社にとって好ましくない者が株主となることを防止することにあると解される(最判昭和46年10月14日)。
株式の質入れの効果は、株主が受け取る経済的利益に存在し、議決権のような会社の経営に影響を与える者への効果はない。
株主名簿に記載または記録された質権者は、債権の弁済期が到来している場合には、当該質権の目的物である株式に対して交付される剰余金の配当(金銭に限る。)を受領し、自己の債権の弁済に充てることができる。 4.正しい
登録株式質権者は、会社法151条1項の金銭等(金銭に限る。)又は同条第2項の金銭を受領し、他の債権者に先立って自己の債権の弁済に充てることができる(会社法154条1項)。
株主名簿に記載または記録された質権者は、株主名簿にしたがって株式会社から株主総会の招集通知を受け、自ら議決権を行使することができる。 5.誤り
そのような規定はないため、株主名簿に記載または記録された質権者は、株主名簿にしたがって株式会社から株主総会の招集通知を受け、自ら議決権を行使することはできない。