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令和3年-問35 民法 相続

Lv2

問題 更新:2023-11-20 17:18:32

Aが死亡し、Aの妻B、A・B間の子CおよびDを共同相続人として相続が開始した。相続財産にはAが亡くなるまでAとBが居住していた甲建物がある。この場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。なお、次の各記述はそれぞれが独立した設例であり相互に関連しない。

ア.Aが、Aの死後、甲建物をBに相続させる旨の遺言をしていたところ、Cが相続開始後、法定相続分を持分とする共同相続登記をしたうえで、自己の持分4分の1を第三者Eに譲渡して登記を了した。この場合、Bは、Eに対し、登記なくして甲建物の全部が自己の属することを対抗することができる。

イ.Aの死後、遺産分割協議が調わない間に、Bが無償で甲建物の単独での居住を継続している場合、CおよびDは自己の持分権に基づき、Bに対して甲建物を明け渡すよう請求することができるとともに、Bの居住による使用利益等について、不当利得返還請求権を有する。

ウ.Aが遺言において、遺産分割協議の結果にかかわらずBには甲建物を無償で使用および収益させることを認めるとしていた場合、Bは、原則として終身にわたり甲建物に無償で居住することができるが、甲建物が相続開始時にAとAの兄Fとの共有であった場合には、Bは配偶者居住権を取得しない。

エ.家庭裁判所に遺産分割の請求がなされた場合において、Bが甲建物に従前通り無償で居住し続けることを望むときには、Bは、家庭裁判所に対し配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出ることができ、裁判所は甲建物の所有者となる者の不利益を考慮してもなおBの生活を維持するために特に必要があると認めるときには、審判によってBに配偶者居住権を与えることができる。

オ.遺産分割の結果、Dが甲建物の所有者と定まった場合において、Bが配偶者居住権を取得したときには、Bは、単独で同権利を登記することができる。

  1. ア・イ
  2. ア・オ
  3. イ・エ
  4. ウ・エ
  5. ウ・オ
  解答&解説

正解 4

解説

ウ、エが正しい。

Aが、Aの死後、甲建物をBに相続させる旨の遺言をしていたところ、Cが相続開始後、法定相続分を持分とする共同相続登記をしたうえで、自己の持分4分の1を第三者Eに譲渡して登記を了した。この場合、Bは、Eに対し、登記なくして甲建物の全部が自己の属することを対抗することができる。 ア.誤り

法定相続分と異なる権利を取得したBは、その旨の登記をしなければ、権利を取得した第三者Eに対し、甲建物の全部について自己の権利を主張することができない。

条文によると、相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、法定相続分及び代襲相続人の相続分により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができないと規定されている(民法899条の2第1項)。
平成30年改正により、相続による権利の承継は、法定相続分を超える部分については、対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができないように立法化されている。

Aの死後、遺産分割協議が調わない間に、Bが無償で甲建物の単独での居住を継続している場合、CおよびDは自己の持分権に基づき、Bに対して甲建物を明け渡すよう請求することができるとともに、Bの居住による使用利益等について、不当利得返還請求権を有する。 イ.誤り

Aの死後、遺産分割協議が調わない間、Bは居住建物について無償で使用する権利(配偶者短期居住権)を有するため、Bに対する明渡請求や不当利得返還請求はできない。

配偶者短期居住権については条文で、配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(居住建物)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(居住建物取得者)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利(配偶者短期居住権)を有すると規定されている(民法1037条1項)。
そして、居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合、遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6ヵ月を経過する日のいずれか遅い日、と期間が定められている(民法1037条1項1号)。

Aが遺言において、遺産分割協議の結果にかかわらずBには甲建物を無償で使用および収益させることを認めるとしていた場合、Bは、原則として終身にわたり甲建物に無償で居住することができるが、甲建物が相続開始時にAとAの兄Fとの共有であった場合には、Bは配偶者居住権を取得しない。 ウ.正しい

配偶者居住権は、「被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合は」と除外規定を設けている(民法1028条ただし書き)。

条文によると、被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、①遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき、②配偶者居住権が遺贈の目的とされたときは、居住建物の全部について無償で使用及び収益をする権利(配偶者居住権)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでないと規定されている(民法1028条1項)。
したがって、甲建物が相続開始時にAとAの兄Fとの共有であったため、Bは配偶者居住権を取得しない。

家庭裁判所に遺産分割の請求がなされた場合において、Bが甲建物に従前通り無償で居住し続けることを望むときには、Bは、家庭裁判所に対し配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出ることができ、裁判所は甲建物の所有者となる者の不利益を考慮してもなおBの生活を維持するために特に必要があると認めるときには、審判によってBに配偶者居住権を与えることができる。 エ.正しい

配偶者居住権については、条文で次のように規定されている。

遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、次に掲げる場合に限り、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができる(民法1029条)。

①共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき。
②配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき(前号に掲げる場合を除く。)。

遺産分割の結果、Dが甲建物の所有者と定まった場合において、Bが配偶者居住権を取得したときには、Bは、単独で同権利を登記することができる。 オ.誤り

配偶者居住権の設定登記は、原則として、単独で登記することはできない。

居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う(民法1031条1項)。
賃貸人に登記義務のない不動産賃借権との大きな違いである。
また、権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない(不動産登記法60条)。

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