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  4. 問34

令和3年-問34 民法 債権

Lv4

問題 更新:2024-01-07 12:19:56

不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りる。
  2. 損害賠償の額を定めるにあたり、被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、身体的特徴が疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、被害者の身体的特徴を斟酌(しんしゃく)することはできない。
  3. 過失相殺において、被害者たる未成年の過失を斟酌する場合には、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足りる。
  4. 不法行為の被侵害利益としての名誉とは、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価であり、名誉毀損とは、この客観的な社会的評価を低下させる行為をいう。
  5. 不法行為における故意・過失を認定するにあたり、医療過誤事件では診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準をもって、どの医療機関であっても一律に判断される。
  解答&解説

正解 5

解説

訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りる。 1.妥当である

訴訟上の因果関係の立証について、判例は「訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである(最判昭50年10月24日)。」としている。

損害賠償の額を定めるにあたり、被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、身体的特徴が疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、被害者の身体的特徴を斟酌(しんしゃく)することはできない。 2.妥当である

不法行為により傷害を被ったことに基づく損害賠償の額を定めるにあたり被害者の身体的特徴をしんしゃくすることの可否」について判例は、「不法行為により傷害を被った被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有しており、これが、加害行為と競合して傷害を発生させ、又は損害の拡大に寄与したとしても、右身体的特徴が疾患にあたらないときは、特段の事情がない限り、これを損害賠償の額を定めるにあたりしんしゃくすることはできない(最判平成8年10月29日)。」としている。

なお、類似判例として、「被害者に対する加害行為と被害者のり患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるにあたり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、被害者の当該疾患をしんしゃくすることができるものと解するのが相当である(最判平成4年6月25日)。」も併せて押さえておきたい。

過失相殺において、被害者たる未成年の過失を斟酌する場合には、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足りる。 3.妥当である

不法行為の場面で過失相殺の規定を適用するためには、被害者において「過失」が認められなければならない。
そして、その過失が認められるためには、そもそも損害の発生を避けるために必要な注意能力がある状態でなければならない。
当該注意能力がなければ、「お前は被害者かもしれないが、注意しなかったお前も悪い!」と言える状態ではなく、損害賠償額を低く調整することは妥当でないためである。

この「注意能力」については、条文ではどの程度の能力があればよいかは明らかではない。
そこで解釈になるのだが、判例によると「被害者たる未成年者の過失をしんしゃくする場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、行為の責任を弁識するに足る知能が具わっていることを要しないものと解するのが相当である(最大判昭和39年6月24日)」とされている。
つまり過失相殺の規定を使うためには事理弁識能力があればよいのであって、責任能力があることまでは求められていないのである。

不法行為の被侵害利益としての名誉とは、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価であり、名誉毀損とは、この客観的な社会的評価を低下させる行為をいう。 4.妥当である

名誉棄損について判例は、「不法行為の被侵害利益としての名誉(民法710条、民法723条)とは、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価のことであり、名誉毀損とは、この客観的な社会的評価を低下させる行為のことにほかならない(最判昭和45年12月18日)。」としている。

不法行為における故意・過失を認定するにあたり、医療過誤事件では診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準をもって、どの医療機関であっても一律に判断される。 5.妥当でない

臨床医学の実践における医療水準は、全国一律的に絶対的な基準として考えられているわけではない。

判例は、「ある新規の治療法の存在を前提にして検査・診断・治療等にあたることが診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準であるかどうかを決するについては、当該医療機関の性格、所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべきであり、右の事情を捨象して、すべての医療機関について診療契約に基づき要求される医療水準を一律に解するのは相当でない」(最判平成7年6月9日)としている。

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