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令和3年-問33 民法 債権

Lv3

問題 更新:2023-11-20 17:17:11

Aが甲建物(以下「甲」という。)をBに売却する旨の売買契約に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定に照らし、誤っているものはいくつあるか。

ア.甲の引渡しの履行期の直前に震災によって甲が滅失した場合であっても、Bは、履行不能を理由として代金の支払いを拒むことができない。

イ.Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合、Bは、Aに対して、履行の追完または代金の減額を請求することができるが、これにより債務不履行を理由とする損害賠償の請求は妨げられない。

ウ.Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合、履行の追完が合理的に期待できるときであっても、Bは、その選択に従い、Aに対して、履行の追完の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。

エ.Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合において、その不適合がBの過失によって生じたときであっても、対価的均衡を図るために、BがAに対して代金の減額を請求することは妨げられない。

オ.Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合において、BがAに対して損害賠償を請求するためには、Bがその不適合を知った時から1年以内に、Aに対して請求権を行使しなければならない。

  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
  5. 五つ
  解答&解説

正解 4

解説

ア、ウ、エ、オが誤り。

甲の引渡しの履行期の直前に震災によって甲が滅失した場合であっても、Bは、履行不能を理由として代金の支払いを拒むことができない。 ア.誤り

B(債権者)は、履行不能を理由として代金の支払いを拒むことができないとしているため、誤りである。

条文によると、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができるとされている(民法536条1項)。

条文上、債務の履行について、当事者双方に帰責事由がなければ、債権者は、反対給付の履行を拒むことが可能である。

Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合、Bは、Aに対して、履行の追完または代金の減額を請求することができるが、これにより債務不履行を理由とする損害賠償の請求は妨げられない。 イ.正しい

買主の追完請求権や買主の代金減額請求権の規定は、債務不履行による損害賠償の請求及び解除権の行使を妨げない(民法564条)。

したがって、債務不履行を理由とする損害賠償の請求も可能である。

Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合、履行の追完が合理的に期待できるときであっても、Bは、その選択に従い、Aに対して、履行の追完の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。 ウ.誤り

BはAに対して、催告をせず直ちに代金の減額を請求するのではなく、履行の追完を催告してから代金の減額を請求しなければならないため、誤りである。

条文によると、契約の内容に適合しない場合、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる(民法563条1項)。
条文上、原則的には、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない場合において、まずは履行の追完を催告し、その期間内に履行の追完がないときに、代金減額が可能となる。
本肢では、「履行の追完が合理的に期待できるときであっても」とあるので、原則どおり、履行の追完を催告してから、代金減額を行うことになる。

なお、催告なしでも直ちに代金減額をすることができるケースは以下のとおりである(民法563条2項)。

①:履行の追完が不能であるとき
②:売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき
③:契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき
④:①②③の場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき

③は、クリスマスケーキやお祝い品等、その日、その時でないと意味がないものをイメージすればよい。
④は、①、②、③のどれにもあてはまらないとき等、「催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかである」と解釈論で使われるための受け皿規定である。

Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合において、その不適合がBの過失によって生じたときであっても、対価的均衡を図るために、BがAに対して代金の減額を請求することは妨げられない。 エ.誤り

買主Bの過失によって不適合が生じたときは、BはAに対して代金の減額を請求することはできないため誤りである。

条文によると、不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、買主の代金減額請求権や、催告によらない代金減額請求権による代金の減額の請求をすることができないとされている(民法563条3項)。

Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合において、BがAに対して損害賠償を請求するためには、Bがその不適合を知った時から1年以内に、Aに対して請求権を行使しなければならない。 オ.誤り

Bは不適合を知った時から1年以内にAに対して通知をすればよく、請求権の行使までは必要ないので誤りである。

条文によると、売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができないとされている(民法566条)。
条文上、「買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、」となっているため、不適合を知った時から1年以内に通知をすればよく、請求権を行使することまでは求められていない。

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