平成29年度行政書士試験、お疲れ様でした。
本試験、いかがでしたでしょうか。満足のいく出来だった方もいれば、実力を発揮できなかった方もいるでしょう。

けれども少なくとも数ヶ月、場合によっては数年、勉強に勉強を重ねて本試験会場で試験を受けることができた自分自身を、まずは褒めてあげてください。勉強の途中で挫折し、本試験会場にまでたどり着けない人はたくさんいるのですから。

私が資格スクールで講師をしていた頃の話です。開講の時点では、教室にはたくさんの受講生がいらっしゃいました。みなさんやる気に満ち溢れ、目を輝かせて勉強に取り組もうとしています。しかしながら日が経つにつれ、教室に足を運ぶ受講生はどんどん減っていくもの。これは難関試験に共通する傾向であり、非常に多くの「挫折組」がいるのです。

本試験までたどり着けたあなたは、合否の結果はどうであれ、そんな挫折組とはまったく異なります。実力を発揮できなかったという方も、その点はどうか胸を張って欲しい。本当にそう思うのです。

さて、本試験を受けたばかりでお疲れのことでしょうが、本試験後の「これから」について、ここで簡単にお話しましょう。

■本試験の振り返りが大切

本試験後で重要なのは、終わって時間が経たないうちに、今年の本試験を振り返ること。確実に合格している人はよしとしても、そうではない方は、「振り返り」をしたかどうかが来年の合否に直結するといっても過言ではありません。

振り返りは「時間が経たないうちに」するのがコツです。できれば本試験の翌日か翌々日までにはして欲しいところです。本試験から時間が経つと、本試験を受けたときの記憶が薄れ、「振り返り」が難しくなるからです。記憶が鮮明なうちに自分自身がどこで間違えたのか、どのように間違えたのかを明確にして欲しいのです。

振り返る際は、本試験会場で受験している自分の姿を思い出してください。極限の状態でどのように思考して解答したのか、その場面をありありと思い出して欲しいのです。

■本試験後の振り返り方

本試験を振り返るためには、本試験の問題と資格スクール等が公表している解答予想を用意します。正解した問題、間違えた問題、まずはこれらを分類してください。

正解した問題のうち、「確実に正解できた問題」と「たまたま正解できた問題」にさらに分類します。たまたま正解できた問題とは、たとえば選択肢を2つまで絞り込むことができて、迷ったあげく正解だった問題などです。

「たまたま正解できた問題」が多いのであれば、それはあなたの実力ではありませんから、来年に向けて勉強するのなら、インプットからやり直す必要があるといえます。

間違えた問題も同様に、「まったく分からなかった問題」、「場合によっては正解できた問題」に分類します。「場合によっては正解できた問題」とは、選択肢を2つまで絞り込むことができた問題や、本当は知っている知識が問われていたのに勘違いして間違ってしまった問題などが該当します。

間違えた問題のうち「場合によっては正解できた問題」の分析が重要です。正解できた可能性があるのに正解できなったのはなぜか、しっかり考えましょう。

選択肢を絞り切れなかった問題が多かった場合は、絶対的な知識量が足りていません。来年に向けての勉強は、もう一度「インプット」の段階からやり直しが必要です。

本当は知っている知識が問われていたのに勘違いしてしまった、ケアレスミスが多かった。このような失点が多い方は、来年に向けての勉強は「インプット」だけでは足りません。本試験慣れをするために異なる資格試験を受験してみたり、答練をいつもとは違う資格スクールで受験することでプレッシャーに負けないトレーニングを積むことも大切になります。

■本試験後1か月は何もしない……

分析が終わったら、来年の試験に向けて、どのように取り組めばよいのかが明らかになるでしょう。このようになったら、すぐに机に向かい、来年のために勉強に取り組む人がいますが、これはいただけません。

本試験直後からフルスロットルで勉強を続けていては、来年の本試験まで体力も気力も持たないものです。今から本気で勉強していると、4月や5月くらいの時期に息切れするのが目に見えているのです。

私であれば本試験後は1か月は休みます

1か月も休んで大丈夫なのだろうか? こんな声が聞こえてきます。1か月も休んでいると覚えたことは忘れしまうし、勉強のペースもつかみにくくなるのではないか……。このような不安に襲われるのです。

そんな不安はあるでしょうが、むしろ覚えたことを忘れ、勉強のペースも忘れるために休むのです。来年の試験までは長丁場ですから、一度リセットしないと、思うように集中して、勉強できなくなってしまうのですから。

本試験が終わったあなたは、試験の振り返りをしたら、あとはゆっくり休みましょう。勉強から一度離れることで、頭をからっぽにすることが来年にもつながります。

心置きなく休んでください。本試験、お疲れ様でした。

碓井 孝介(うすい こうすけ)
事務所HP:札幌で相続登記・相続手続なら 平成相続相談室
札幌出身、『司法書士平成事務所』代表。元大手資格スクール講師。勉強法、相続等の書籍出版なども手掛ける。個人サイトは『平成相続相談室』
著書:試験は暗記が9割(朝日新聞出版) アマゾンで販売中