2025/8/20更新
行政書士の業務に関し必要な法令等
行政書士の試験科目のうち「行政書士の業務に関し必要な法令等」に関しては、憲法、行政法(行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法および地方自治法を中心とする)、民法、商法および基礎法学の中からそれぞれ出題し、試験を実施する日の属する年度の4月1日現在施行されている法令に関して出題されています。
2025年度以降に改正施行される主な法令については、以下のとおりです。※随時更新
①行政事件訴訟法(被告を誤った訴えの救済)
>この法律は、公布の日から起算して4年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
公布日 2022年05月25日 施行日 未定
(改正前) |
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取消訴訟において、原告が故意または重大な過失によらないで被告とすべき者を誤ったときは、裁判所は、原告の申立てにより、決定をもって、被告を変更することを許すことができ(行政事件訴訟法15条1項)、 『この決定は、書面でするものとし、その正本を新たな被告に送達しなければならない(行政事件訴訟法15条2項)。』 |
(改正後) |
取消訴訟において、原告が故意または重大な過失によらないで被告とすべき者を誤ったときは、裁判所は、原告の申立てにより、決定をもって、被告を変更することを許すことができ(行政事件訴訟法15条1項)、 『この決定は、電子決定書を作成してするものとし、その電子決定書を新たな被告に送達しなければならない(行政事件訴訟法15条2項)。』 |
②民法(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)
>この法律は、一部の規定を除き、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
公布日 2024年05月17日 施行日 未定
【背景・課題】
・父母の離婚が子の養育に与える深刻な影響、子の養育の在り方の多様化
・現状では養育費・親子交流は取決率も履行率も低調
・離婚後も、父母双方が適切な形で子を養育する責任を果たすことが必要
1.親の責務等に関する規律を新設
・婚姻関係の有無にかかわらず父母が子に対して負う責務を明確化(民法817条の12)
・親権が子の利益のために行使されなければならないものであることを明確化(民法818条等)
2.親権・監護等に関する規律の見直し
・離婚後の親権者に関する規律を見直し(民法819条等)
→協議離婚の際は、父母の協議により父母双方または一方を親権者と指定することができる。
→協議が調わない場合、裁判所は、子の利益の観点から、父母双方または一方を親権者と指定する。
→親権者変更にあたって協議の経過を考慮することを明確化
・婚姻中を含めた親権行使に関する規律を整備(民法824条の2等)
→父母双方が親権者であるときは共同行使することとしつつ、親権の単独行使が可能な場合を明確化
→父母の意見対立を調整するための裁判手続を新設
・監護の分掌に関する規律や、監護者の権利義務に関する規律を整備(民法766条、民法824条の3等)
3.養育費の履行確保に向けた見直し
・養育費債権に優先権(先取特権)を付与(債務名義がなくても差押え可能に)(民法306条、民法308条の2等)
・法定養育費制度を導入(父母の協議等による取決めがない場合にも、養育費請求が可能に)(民法766条の3等)
4.安全・安心な親子交流の実現に向けた見直し
・婚姻中別居の場面における親子交流に関する規律を整備(民法817条の13等)
・父母以外の親族(祖父母等)と子との交流に関する規律を整備(民法766条の2等)
5.その他の見直し
・養子縁組後の親権者に関する規律の明確化、養子縁組の代諾等に関する規律を整備(民法797条、民法818条等)
・財産分与の請求期間を2年から5年に伸長、考慮要素を明確化(民法768条等)
(婚姻中の財産取得・維持に対する寄与の割合を原則1/2ずつに)
・夫婦間契約の取消権、裁判離婚の原因等の見直し(民法754条、民法770条)
③民法(譲渡担保契約および所有権留保契約に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律について)
>この法律は、一部の規定を除き、公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
公布日 2025年6月6日 施行日 未定
1.債権譲渡担保権と同様に、債権質権者は目的である債権全額を取り立てることができることとするなどの改正を行う(民法366条関係)
2.動産譲渡担保権と同様に、抵当権は、被担保債権の不履行があれば未収取に及ぶこととする(民法371条関係)
行政書士の業務に関し必要な基礎知識
一般知識、行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令、情報通信・個人情報保護および文章理解
①情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)
>公布日 2024年5月17日 施行日 2025年4月1日(令和7年度の試験から適用されます)
通称「プロバイダ責任制限法」が今回の法改正に伴い、情報流通プラットフォーム対処法へと名称変更となった。
誹謗中傷等のインターネット上の違法・有害情報に対処するため、大規模プラットフォーム事業者が指定されることとなり、指定された事業者等は、①対応の迅速化、②運用状況の透明化に係る措置を義務づけられる。
②個人情報の保護に関する法律
2022年に刑法の一部が改正され、懲役と禁錮の両刑を一元化し、これらに代えて『拘禁刑』が創設されました。これに伴い、令和4年(2022年)6月17日に公布された「刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律」により個人情報保護法が一部改正されました。
>一部の規定を除き、刑法等の一部を改正する法律の施行の日(公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日)
公布日 2022年6月17日 施行日 2025年6月1日(令和8年度の試験から適用されます)
個人情報の保護に関する法律の一部を次のように改正する。
・個人情報保護法48条3号イ、113条4号および136条3号中「禁錮」を「拘禁刑」に改める。
・176条から181条までの規定中「懲役」を「拘禁刑」に改める。
上記の個人情報保護法以外にも、会社法・国家公務員法・地方自治法・行政不服審査法等で規程されている懲役および禁錮は、拘禁刑に改正されます。
③行政書士法の一部を改正する法律
>施行日 2026年1月1日(令和8年度の試験から適用されます)
デジタル社会の進展など、近時の行政書士制度を取り巻く状況の変化を踏まえ、国民の利便の更なる向上等を図る見地から、特定行政書士の業務範囲を拡大する等の措置を講ずるものであり、その主な内容は次のとおりである。
①行政書士の目的から使命へと規定変更
現行の目的規定を改め、行政書士の使命を明らかにする規定を設ける。
(改正前) |
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第1条:(目的) |
この法律は、行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もって国民の権利利益の実現に資することを目的とする。 |
(改正後) |
第1条:(行政書士の使命) |
行政書士は、その業務を通じて、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もって国民の権利利益の実現に資することを使命とするものとすること。 |
②職責の創設
行政書士の職責を明らかにする規定を創設し、デジタル社会の進展を踏まえた対応等を職責として規定する。
(新設) |
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第1条の2第1項 |
行政書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令および実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。 |
第1条の2第2項 |
行政書士は、その業務を行うにあたっては、デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用その他の取組を通じて、国民の利便の向上および当該業務の改善進歩を図るよう努めなければならない。 |
③特定行政書士の業務範囲の拡大
特定行政書士の業務範囲を拡大し、特定行政書士は、行政書士が「作成することができる」官公署に提出する書類に係る許認可等に関する不服申立ての手続について代理等をすることができる規定を設ける。
(改正前) |
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第1条の3第1項2号 |
行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、およびその手続について官公署に提出する書類を作成すること。 |
(改正後) |
第1条の4第1項2号 |
行政書士が作成することができる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、およびその手続について官公署に提出する書類を作成すること。 |
④業務の制限規定の趣旨の明確化
行政書士または行政書士法人でない者による業務の制限規定を改正し、趣旨の明確化を図る。
第19条1項 |
行政書士または行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第1条の3に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合および定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験または能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。 |
⑤両罰規定の法整備
行政書士または行政書士法人でない者による業務の制限違反等に対する罰則や行政書士法人による義務違反に対する罰則について、両罰規定を整備する。
第23条の3 |
法人の代表者または法人もしくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人または人の業務に関し、第21条の2、第22条の4、第23条第2項または前条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人または人に対して各本条の罰金刑を科する。 |