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平成27年-問30 民法 物権Ⅱ

Lv2

問題 更新:2021-12-30 19:28:50

留置権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. Aは自己所有の建物をBに売却し登記をBに移転した上で、建物の引渡しは代金と引換えにすることを約していたが、Bが代金を支払わないうちにCに当該建物を転売し移転登記を済ませてしまった場合、Aは、Cからの建物引渡請求に対して、Bに対する代金債権を保全するために留置権を行使することができる。
  2. Aが自己所有の建物をBに売却し引き渡したが、登記をBに移転する前にCに二重に売却しCが先に登記を備えた場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することができる。
  3. AがC所有の建物をBに売却し引き渡したが、Cから所有権を取得して移転することができなかった場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することはできない。
  4. Aが自己所有の建物をBに賃貸したが、Bの賃料不払いがあったため賃貸借契約を解除したところ、その後も建物の占有をBが続け、有益費を支出したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する有益費償還請求権を保全するために留置権を行使することはできない。
  5. Aが自己所有の建物をBに賃貸しBからAへ敷金が交付された場合において、賃貸借契約が終了したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する敷金返還請求権を保全するために、同時履行の抗弁権を主張することも留置権を行使することもできない。
  解答&解説

正解 2

解説

留置権についての問題である。いずれも基本的な知識であるから、本問はぜひとも得点して欲しい。なお留置権が成立するか否かを問う問題は頻出であるが、下記選択肢2の解説で紹介することはぜひとも覚えていただきたい。

1.妥当である。

転売のケースについて判例は、留置権が成立したのち債務者からその目的物を譲り受けた者に対しても、債権者がその留置権を主張しうることは、留置権が物権であることに照らして明らかであるとしている(最判昭和47年11月16日)。判例が述べるとおり、留置権は「物権」なのであるから、債権と違って特定の者(債務者)にしか行使できないわけではない。
本問にあてはめると、AB間でAの留置権が成立している以上、物権たる留置権をAはCにも行使して、建物の引渡しを拒絶することが可能である。
したがって、一度成立した留置権を債務者以外の者に行使できるとする本肢は妥当である。

2.妥当でない。

判例によると、不動産の二重譲渡において、登記を得られなかった者が取得した損害賠償請求債権を担保するために、留置権を行使することはできないとされている(最判昭和43年11月21日)。
したがって、第一譲受人が有する損害賠償請求権のために留置権を行使することができるとする本肢は妥当でない。
ところで本肢にかかる知識は、留置権の制度趣旨を覚えていれば、判例を知らずとも(当該判例は有名であるため知っておくべきであるが)解ける問題である。留置権制度の趣旨は、物を留置することで、債務者に心理的圧迫を与え、債務の弁済を促すことである。
とするならば、本件が「債権者が留置権を行使することで、債務者に心理的圧迫が与えられ、債務の弁済を促すこと」につながるかどうかを考えたらよい。つながるのなら、留置権は成立することが多いのである。
債権者はBであり、損害賠償債務を負うのはAであり、そして建物の引渡請求をしているのは第二譲受人のCである。Cからの請求に対し、Bが留置権を行使しても、債務者Aは損害賠償債務について履行を促される関係(つまりBが留置権を行使しても、Aは心理的圧迫が加えられ、債務を弁済したくなる関係)ではない。なぜなら二重譲渡をするAのことであるから、BからもCからも売買代金は既に受け取っているであろうから、Aにとってはもう本件建物などどうでもよいのである。
法律の勉強をするときは、常に趣旨を考えながら勉強をすること。

3.妥当である。

判例によると、他人物売買の買主は、所有者の目的物の返還請求に対し、所有権を移転するはずであった売主の債務不履行による損害賠償債権のために、留置権を主張しえないとされている(最判昭和51年6月17日)。
したがって、本肢は妥当である。
これも選択肢2と同様に、判例を知らずとも、留置権制度の趣旨から導くことができる(留置権制度の趣旨は上記選択肢2の解説を参照のこと)。
他人物売買の買主Bは、売主Aへの債務不履行に基づく損害賠償請求権を有しており、この債権を担保するために、建物所有者Cからの請求に対して留置権を行使できるのかが問題となっている。
ここで制度趣旨を当てはめて考えてみる。BがCに対して「Aが賠償金を支払うまでは、建物は渡さない!」と言ったところで、債務者Aが心理的に圧迫され、債務の履行を促されることはない。建物はもともとAのものではないためである。ゆえに留置権の出る幕はない。
くどいようだが、法律の勉強は「趣旨」や「制度の狙い」をおさえて欲しい。

4.妥当である。

留置権は占有が不法行為によって始まった場合には、成立しない(民法295条2項参照)。
ところで本肢の場面は、占有開始当初は、占有は賃借権に基づいたものであって、「占有が不法行為によって始まった」とはいえない。しかしながら民法295条2項の趣旨は公平(つまり不法行為によって占有を始めた者にまで留置権を認めるのは公平に反するという考え方)なのであるから、賃料不払いのために賃貸借契約を解除された者についても、民法295条2項を適用し、留置権を認めないとするのがよいのではなかろうか。
判例は、元賃借人(占有者)について、本件建物の賃貸借契約が解除された後は当該建物を占有すべき権原のないことを知りながら不法にこれを占有していた場合は、占有者が本件建物につき支出した有益費の償還請求権については、民法295条2項の類推適用により、占有者は本件建物につき、有益費償還請求権に基づく留置権を主張することができないと解すべきであるとしている(最判昭和46年7月16日)。留置権制度の趣旨の一つには、「当事者間の公平」がある。本件の状況で留置権を認めるのは、公平に反すると裁判所も判断したのである。
したがって、賃料不払いのために賃貸借契約を解除された者について留置権を認めないとした本肢は妥当である。

5.妥当である。

判例によると、「敷金契約は、賃貸人が賃借人に対して取得することのある債権を担保するために締結されるものであって、賃貸借契約に附随するものではあるが、賃貸借契約そのものではないから、賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、一個の双務契約によって生じた対価的債務の関係にあるものとすることはできず、また、両債務の間には著しい価値の差が存しうることからしても、両債務を相対立させてその間に同時履行の関係を認めることは、必ずしも公平の原則に合致するものとはいいがたい(最判昭和49年9月2日)」として、賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務は、同時履行の関係には立たないとしている。
また、判例は留置権の成立について「賃貸人は、特別の約定のないかぎり、賃借人から家屋明渡を受けた後に敷金を返還すれば足りるものと解すべく、・・・このように賃借人の家屋明渡債務が賃貸人の敷金返還債務に対し先履行の関係に立つと解すべき場合にあっては、賃借人は賃貸人に対し敷金返還請求権をもって家屋につき留置権を取得する余地はない(最判昭和49年9月2日)」ともしている。
したがって、同時履行の抗弁権を主張することも留置権を行使することもできないとする本肢は妥当である。
ところで本問は、上記判例をそのまま覚えていなくても解けた者もいるであろう。おそらくは「敷金返還請求権は明渡があってはじめて発生する」ということ自体は覚えていたのではなかろうか。すると、敷金返還請求権を担保するために留置権を行使して建物を留置し、明け渡しを拒むことはできないはずである。さらに留置権と同時履行の抗弁権の機能は実質的に同じなのであるから、留置権がダメなら、同時履行の抗弁権もダメであると、考えることができたのではないだろうか。

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