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  4. 問30

平成27年-問30 民法 物権

Lv2

問題 更新:2024-01-04 16:15:39

留置権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. Aは自己所有の建物をBに売却し登記をBに移転した上で、建物の引渡しは代金と引換えにすることを約していたが、Bが代金を支払わないうちにCに当該建物を転売し移転登記を済ませてしまった場合、Aは、Cからの建物引渡請求に対して、Bに対する代金債権を保全するために留置権を行使することができる。
  2. Aが自己所有の建物をBに売却し引き渡したが、登記をBに移転する前にCに二重に売却しCが先に登記を備えた場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することができる。
  3. AがC所有の建物をBに売却し引き渡したが、Cから所有権を取得して移転することができなかった場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することはできない。
  4. Aが自己所有の建物をBに賃貸したが、Bの賃料不払いがあったため賃貸借契約を解除したところ、その後も建物の占有をBが続け、有益費を支出したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する有益費償還請求権を保全するために留置権を行使することはできない。
  5. Aが自己所有の建物をBに賃貸しBからAへ敷金が交付された場合において、賃貸借契約が終了したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する敷金返還請求権を保全するために、同時履行の抗弁権を主張することも留置権を行使することもできない。
  解答&解説

正解 2

解説

Aは自己所有の建物をBに売却し登記をBに移転した上で、建物の引渡しは代金と引換えにすることを約していたが、Bが代金を支払わないうちにCに当該建物を転売し移転登記を済ませてしまった場合、Aは、Cからの建物引渡請求に対して、Bに対する代金債権を保全するために留置権を行使することができる。 1.妥当である。

転売のケースについて判例は、留置権が成立したのち債務者からその目的物を譲り受けた者に対しても、債権者がその留置権を主張しうることは、留置権が物権であることに照らして明らかであるとしている(最判昭和47年11月16日)。
判例が述べるとおり、留置権は「物権」なのであるから、債権と違って特定の者(債務者)にしか行使できないわけではない。

本問にあてはめると、AB間でAの留置権が成立している以上、物権たる留置権をAはCにも行使して、建物の引渡しを拒絶することが可能である。

Aが自己所有の建物をBに売却し引き渡したが、登記をBに移転する前にCに二重に売却しCが先に登記を備えた場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することができる。 2.妥当でない。

判例は、不動産の二重譲渡において、登記を得られなかった者が取得した損害賠償請求債権を担保するために、留置権を行使することはできないとしている(最判昭和43年11月21日)。

なお、試験的な観点として、債権が「損害賠償請求権」であるときには、ほぼ留置権は成立しない。すなわち、牽連性(債権と物の間に一定の関係性があること)が否定される傾向が強い。
留置権が成立しない債権は、「損害賠償請求権」「敷金返還請求権」「造作買取代金請求権」等である。

AがC所有の建物をBに売却し引き渡したが、Cから所有権を取得して移転することができなかった場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することはできない。 3.妥当である。

判例は、他人物売買の買主は、所有者の目的物の返還請求に対し、所有権を移転するはずであった売主の債務不履行による損害賠償債権のために、留置権を主張しえないとしている(最判昭和51年6月17日)。

留置権が成立しない債権については肢2解説を参照。

Aが自己所有の建物をBに賃貸したが、Bの賃料不払いがあったため賃貸借契約を解除したところ、その後も建物の占有をBが続け、有益費を支出したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する有益費償還請求権を保全するために留置権を行使することはできない。 4.妥当である。

留置権は占有が不法行為によって始まった場合には、成立しない(民法295条2項)。

本肢の場合占有開始当初は占有は賃借権に基づいたものであって、「占有が不法行為によって始まった」とはいえない。
その点判例は、元賃借人(占有者)について、本件建物の賃貸借契約が解除された後は当該建物を占有すべき権原のないことを知りながら不法にこれを占有していた場合は、占有者が本件建物につき支出した有益費の償還請求権については、民法295条2項の類推適用により、占有者は本件建物につき、有益費償還請求権に基づく留置権を主張することができないと解すべきであるとしている(最判昭和46年7月16日)。

Aが自己所有の建物をBに賃貸しBからAへ敷金が交付された場合において、賃貸借契約が終了したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する敷金返還請求権を保全するために、同時履行の抗弁権を主張することも留置権を行使することもできない。 5.妥当である。

判例は「敷金契約は、賃貸人が賃借人に対して取得することのある債権を担保するために締結されるものであって、賃貸借契約に附随するものではあるが、賃貸借契約そのものではないから、賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、一個の双務契約によって生じた対価的債務の関係にあるものとすることはできず、また、両債務の間には著しい価値の差が存しうることからしても、両債務を相対立させてその間に同時履行の関係を認めることは、必ずしも公平の原則に合致するものとはいいがたい(最判昭和49年9月2日)」として、賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務は、同時履行の関係には立たないとしている。

また、留置権の成立について「賃貸人は、特別の約定のないかぎり、賃借人から家屋明渡を受けた後に敷金を返還すれば足りるものと解すべく、・・・このように賃借人の家屋明渡債務が賃貸人の敷金返還債務に対し先履行の関係に立つと解すべき場合にあっては、賃借人は賃貸人に対し敷金返還請求権をもって家屋につき留置権を取得する余地はない(最判昭和49年9月2日)」ともしている。

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