令和6年-問22 行政法 地方自治法
Lv3
問題 更新:2025-01-10 00:56:24
普通地方公共団体の事務に関する次の記述のうち、地方自治法の定めに照らし、妥当なものはどれか。
- 普通地方公共団体が処理する事務には、地域における事務と、その他の事務で法律またはこれに基づく政令により処理することとされるものとがある。
- 都道府県の法定受託事務とは、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律またはこれに基づく政令に特に定めるものであり、都道府県知事が国の機関として処理することとされている。
- 市町村の法定受託事務とは、国または都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律またはこれに基づく政令に特に定めるものであるから、これにつき市町村が条例を定めることはできない。
- 法定受託事務は、普通地方公共団体が当該団体自身の事務として処理するものであるから、地方自治法上の自治事務に含まれる。
- 地方自治法は、かつての同法が定めていた機関委任事務制度のような仕組みを定めていないため、現行法の下で普通地方公共団体が処理する事務は、その全てが自治事務である。
正解 1
解説
普通地方公共団体が処理する事務には、地域における事務と、その他の事務で法律またはこれに基づく政令により処理することとされるものとがある。 1.妥当である
普通地方公共団体は、地域における事務およびその他の事務で法律またはこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する(地方自治法2条2項)。
その他の事務で法律またはこれに基づく政令により処理することとされるものの具体例としては、北方領土問題解決のための特別措置に関する法律に基づき、北方領土に本籍を有する者の戸籍の事務を根室市が処理していることなどが挙げられる。
都道府県の法定受託事務とは、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律またはこれに基づく政令に特に定めるものであり、都道府県知事が国の機関として処理することとされている。 2.妥当でない
「都道府県知事が国の機関として処理すること」とはされていない。
法定受託事務は、国などから法令によって地方公共団体に委ねられているものであり、地方自治法では以下のように規定されている(地方自治法2条9項)。
第一号法定受託事務 |
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法律またはこれに基づく政令により都道府県、市町村または特別区が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであって、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律またはこれに基づく政令に特に定めるもの(地方自治法2条9項1号) |
第二号法定受託事務 |
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法律またはこれに基づく政令により市町村または特別区が処理することとされる事務のうち、都道府県が本来果たすべき役割に係るものであって、都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律またはこれに基づく政令に特に定めるもの(地方自治法2条9項2号) |
そして都道府県の法定受託事務である第一号法定受託事務は、都道府県、市町村または特別区が処理することとされているが、都道府県知事が処理するとはされていない。
市町村の法定受託事務とは、国または都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律またはこれに基づく政令に特に定めるものであるから、これにつき市町村が条例を定めることはできない。 3.妥当でない
「市町村が条例を定めることはできない」は妥当でない。
法令に違反しない限りにおいて、条例を制定することができる。
市町村の法定受託事務とは、「第二号法定受託事務」といい、法律またはこれに基づく政令により市町村または特別区が処理することとされる事務のうち、都道府県が本来果たすべき役割に係るものであって、都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律またはこれに基づく政令に特に定めるものである(地方自治法2条9項2号)。
法令に基づいて都道府県が本来果たすべき役割に係る事務の一部を市町村や特別区が処理することとされた事務である。
普通地方公共団体は、地域における事務およびその他の事務で法律またはこれに基づく政令により処理することとされるものを処理し(地方自治法2条2項)、法令に違反しない限りにおいて、条例を制定することができる(地方自治法14条1項)。
法定受託事務は、普通地方公共団体が当該団体自身の事務として処理するものであるから、地方自治法上の自治事務に含まれる。 4.妥当でない
「地方自治法上の自治事務に含まれる」は妥当でない。
地方自治法において「自治事務」とは、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものをいう(地方自治法2条8項)。
なお、法定受託事務に関しては地方自治法2条9号に定められており、肢2,3の解説や具体的な内容を含めて確認しておきたい。
地方自治法は、かつての同法が定めていた機関委任事務制度のような仕組みを定めていないため、現行法の下で普通地方公共団体が処理する事務は、その全てが自治事務である。 5.妥当でない
「普通地方公共団体が処理する事務の全てが自治事務」ではない。
1999年の地方分権一括法の施行により、これまで中央集権型の行政システムの中核的部分を形づくってきた機関委任事務制度が廃止されたが、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものが「自治事務」である(地方自治法2条8項)。
肢4参照。