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  4. 問11

令和6年-問11 行政法 行政手続法

Lv3

問題 更新:2025-01-10 00:49:33

会社Xは、宅地建物取引業法(以下「宅建業法」という)に基づく免許を受けて不動産取引業を営んでいる。ところが、Xの代表取締役であるAが交通事故を起こして、歩行者に重傷を負わせてしまった。その後、自動車運転過失傷害の罪でAは逮捕され、刑事裁判の結果、懲役1年、執行猶予4年の刑を受けて、判決は確定した。宅建業法の定めによれば、法人の役員が「禁錮以上の刑」に処せられた場合、その法人の免許は取り消されるものとされていることから、知事YはXの免許を取り消した(以下「本件処分」という)。

この事例への行政手続法の適用に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 本件処分は、許認可等の効力を失わせる処分であるが、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出に対する応答としてなされるものであるから、行政手続法のいう「不利益処分」にはあたらない。
  2. 本件処分は、刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官または司法警察職員がする処分を契機とするものであるので、行政手続法の規定は適用されない。
  3. 本件処分は、その根拠となる規定が法律に置かれているが、地方公共団体の機関がする処分であることから、行政手続法の規定は適用されない。
  4. 本件処分は、申請に対する処分を取り消すものであるので、本件処分をするに際して、行政庁は許認可等の性質に照らしてできる限り具体的な審査基準を定めなければならない。
  5. 本件処分は、法令上必要とされる資格が失われるに至ったことが判明した場合に必ずすることとされている処分であり、その喪失の事実が客観的な資料により直接証明されるものであるので、行政庁は聴聞の手続をとる必要はない。

(参考条文)

宅地建物取引業法

(免許の基準)
第5条① 国土交通大臣または都道府県知事は、第3条第1項の免許を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合または免許申請書もしくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、もしくは重要な事実の記載が欠けている場合においては、免許をしてはならない。

 一~四 略

 五 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

 六 以下略

② 以下略

(免許の取消し)
第66条① 国土交通大臣または都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該免許を取り消さなければならない。

 一 第5条第1項第1号、第5号から第7号まで、第10号または第14号のいずれかに該当するに至ったとき。

 二 略

 三 法人である場合において、その役員または政令で定める使用人のうちに第5条第1項第1号から第7号までまたは第10号のいずれかに該当する者があるに至ったとき。

 四 以下略

② 以下略

  解答&解説

正解 5

解説

本件処分は、許認可等の効力を失わせる処分であるが、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出に対する応答としてなされるものであるから、行政手続法のいう「不利益処分」にはあたらない。 1.妥当でない

行政手続法のいう「不利益処分」にあたるので、妥当でない。

本件処分は、法人の免許取り消しであり、行政手続法(行政手続法2条4号本文)の不利益処分に該当するのであって、事実が消滅した旨の届出、すなわち事業または業務を廃止した旨の届出(行政手続法2条4号ただし書きニ)に対する応答としてなされるものではない。

なお、この届出(行政手続法2条4号ただし書き二)とは、行政手続法2条7号の届出と同じものである。

行政手続法2条7号
届出
行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む)をいう

本件処分は、刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官または司法警察職員がする処分を契機とするものであるので、行政手続法の規定は適用されない。 2.妥当でない

本件処分は、宅地建物取引業法66条に基づき、知事Yによる法人の免許取り消しとなる不利益処分であり、刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官または司法警察職員がする処分(行政手続法3条1項5号)を契機とするものではない。
したがって行政手続法の規定は適用される。

本件処分は、その根拠となる規定が法律に置かれているが、地方公共団体の機関がする処分であることから、行政手続法の規定は適用されない。 3.妥当でない

行政手続法の規定が適用されるので、妥当でない。

地方公共団体の「処分」「行政指導」「届出」については、根拠となる規定が条例または規則に置かれているものは適用除外であるが(行政手続法3条3項)、本件処分は、その根拠となる規定が国の法律である宅地建物取引法であるから行政手続法が適用される。

本件処分は、申請に対する処分を取り消すものであるので、本件処分をするに際して、行政庁は許認可等の性質に照らしてできる限り具体的な審査基準を定めなければならない。 4.妥当でない

本件処分は申請に対する処分ではなく、「不利益処分」に該当するので、妥当でない。
そして、不利益処分をするかどうかまたはどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準は、審査基準ではなく「処分基準」に該当するので、こちらも妥当ではない。

なお、行政庁は、処分基準を定めるにあたっては、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならないとされているが、処分基準を定めること自体は努力義務とされている(行政手続法12条2項、1項)。

本件処分は、法令上必要とされる資格が失われるに至ったことが判明した場合に必ずすることとされている処分であり、その喪失の事実が客観的な資料により直接証明されるものであるので、行政庁は聴聞の手続をとる必要はない。 5.妥当である

不利益処分の手続きとして、行政手続法では、名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分をしようとするときなど、重大な不利益処分については、原則として聴聞の手続きを採らなければならない(行政手続法13条1項1号)。
しかし、法令上必要とされる資格が失われるに至ったことが判明した場合に必ずすることとされている不利益処分で、その喪失の事実が客観的な資料により直接証明されたものについては、行政手続法13条1項1号の規定は適用されない(行政手続法13条2項2号)。
したがって行政庁は聴聞の手続をとる必要はない。

行政手続法13条2項

行政手続法13条1項1号の規定が適用されない場合

①公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため、意見陳述のための手続を執ることができないとき

②法令上必要とされる資格がなかったこと・失われるに至ったことが判明した場合に必ずすることとされている不利益処分で、
・その資格の不存在
・喪失の事実について裁判所の判決書または決定書
・一定の職に就いたことを証する当該任命権者の書類
・その他の客観的な資料
により直接証明されたものをしようとするとき

③施設・設備の設置、維持・管理・物の製造、販売その他の取扱いについて、遵守すべき事項が法令において技術的な基準をもって明確にされている場合において、専ら当該基準が充足されていないことを理由として当該基準に従うべきことを命ずる不利益処分であってその不充足の事実が計測、実験その他客観的な認定方法によって確認されたものをしようとするとき

④納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、または金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分をしようとするとき

⑤当該不利益処分の性質上、それによって課される義務の内容が著しく軽微なものであるため、名あて人となるべき者の意見をあらかじめ聴くことを要しないものとして政令で定める処分をしようとするとき

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