令和4年-問38 商法 会社法
Lv4
問題 更新:2023-01-17 10:40:22
特別支配株主の株式売渡請求に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、誤っているものはどれか。
- 特別支配株主は、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社の他の株主(当該対象会社を除く。)の全員に対し、その有する当該対象会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。
- 株式売渡請求をしようとする特別支配株主は、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社に対し、株式売渡請求をする旨および対価として交付する金銭の額や売渡株式を取得する日等の一定の事項について通知し、当該対象会社の株主総会の承認を受けなければならない。
- 株式売渡請求をした特別支配株主は、株式売渡請求において定めた取得日に、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社の株主が有する売渡株式の全部を取得する。
- 売渡株主は、株式売渡請求が法令に違反する場合であって、売渡株主が不利益を受けるおそれがあるときは、特別支配株主に対し、売渡株式の全部の取得をやめることを請求することができる。
- 株式売渡請求において定めた取得日において公開会社の売渡株主であった者は、当該取得日から6ヵ月以内に、訴えをもってのみ当該株式売渡請求に係る売渡株式の全部の取得の無効を主張することができる。
正解 2
解説
特別支配株主は、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社の他の株主(当該対象会社を除く。)の全員に対し、その有する当該対象会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。 1.正しい
株式会社の特別支配株主は、当該株式会社の株主の全員に対し、その有する当該株式会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる(会社法179条1項)。
この制度は9割以上の議決権を有する株主(これを特別支配株主という)が少数株主を排除するときに株主総会決議を経ずに売渡請求が出来る制度である。
特別支配株主であれば株主総会の意思決定を支配できるので、結果が分かっているような株主総会を省略できるように法制化された。
株式売渡請求をしようとする特別支配株主は、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社に対し、株式売渡請求をする旨および対価として交付する金銭の額や売渡株式を取得する日等の一定の事項について通知し、当該対象会社の株主総会の承認を受けなければならない。 2.誤り
「株主総会の承認」としている点が誤り。
当該対象会社の承認は取締役会設置会社においては、取締役会の決議が必要である(会社法179条の3第3項)。
なお、非取締役会設置会社では取締役の過半数の同意が必要である(会社法348条2項)。
株式売渡請求をした特別支配株主は、株式売渡請求において定めた取得日に、株式売渡請求に係る株式を発行している対象会社の株主が有する売渡株式の全部を取得する。 3.正しい
売渡請求において定めた取得日に全部の株式を取得する(会社法179条の9第1項)。
また当該株式に譲渡制限がついている場合は、当該株式会社が譲渡の承認をしたものとみなされる(会社法179条の9第2項)。
売渡株主は、株式売渡請求が法令に違反する場合であって、売渡株主が不利益を受けるおそれがあるときは、特別支配株主に対し、売渡株式の全部の取得をやめることを請求することができる。 4.正しい
次に掲げる場合において、売渡株主が不利益を受けるおそれがあるときは、売渡株主は、特別支配株主に対し、株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得をやめることを請求することができる(会社法179条の7)。
①株式売渡請求が法令に違反する場合
②売渡株主に対する通知の規定や事前開示の規定に違反した場合
③売渡請求の対価として交付する金銭等が著しく不当である場合
株式売渡請求において定めた取得日において公開会社の売渡株主であった者は、当該取得日から6ヵ月以内に、訴えをもってのみ当該株式売渡請求に係る売渡株式の全部の取得の無効を主張することができる。 5.正しい
株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部の取得の無効は、取得日から6ヵ月以内に、訴えをもってのみ主張することができる。
ただし対象会社が公開会社でない場合は、当該取得日から1年以内となる(会社法846条の2第1項)。