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令和4年-問35 民法 相続

Lv3

問題 更新:2023-01-17 10:38:03

相続に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときを除き、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
  2. 相続人は、相続開始の時から、一身専属的な性質を有するものを除き、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するが、不法行為による慰謝料請求権は、被害者自身の精神的損害を填補するためのものであるから相続財産には含まれない。
  3. 相続財産中の預金債権は、分割債権であるから、相続開始時に共同相続人に対してその相続分に応じて当然に帰属し、遺産分割の対象とはならない。
  4. 相続開始後、遺産分割前に共同相続人の1人が、相続財産に属する財産を処分した場合、当該財産は遺産分割の対象となる相続財産ではなくなるため、残余の相続財産について遺産分割を行い、共同相続人間の不公平が生じたときには、別途訴訟等により回復する必要がある。
  5. 共同相続人は、相続の開始後3ヵ月を経過した場合、いつでもその協議で遺産の全部または一部の分割をすることができる。
  解答&解説

正解 1

解説

系譜、祭具及び墳墓の所有権は、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときを除き、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。 1.妥当である

系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定(相続の一般的効力)にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する(民法897条1項)。

相続人は、相続開始の時から、一身専属的な性質を有するものを除き、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するが、不法行為による慰謝料請求権は、被害者自身の精神的損害を填補するためのものであるから相続財産には含まれない。 2.妥当でない

不法行為による慰謝料請求権は、相続財産に含まれる。

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない(民法896条)。
不法行為による慰謝料請求権が一身専属的な性質を有し相続財産に含まれないかどうかについて判例は、「被害者がこの請求権を放棄したものと解しうる特別の事情のない限り、生前に請求の意思を表明しなくても、その相続人は、当然にこの慰謝料請求権を相続する(最大判昭和42年11月1日)」としている。

なお、即死時における損害賠償請求権についても、相続人への承継がされる(大判大正15年2月16日)。

相続財産中の預金債権は、分割債権であるから、相続開始時に共同相続人に対してその相続分に応じて当然に帰属し、遺産分割の対象とはならない。 3.妥当でない

預金債権は、遺産分割の対象となる。

共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる(最大決平成28年12月19日)。

従前、預貯金は当事者全員の合意がある場合にのみ、遺産分割の対象とすることとされており、このような合意がない場合には、遺産分割の対象にならないとしていた(最三判平成16年4月20日など)。
しかしその場合、特別受益や寄与分がある場合においては実際上大きな差異を生じることとなる。
遺産分割は共同相続人間の実質的公平を図るためであり、被相続人の財産をできる限り幅広く対象とすることが望ましいことから、預貯金も遺産分割の対象になるとした(最大決平成28年12月19日)。

相続開始後、遺産分割前に共同相続人の1人が、相続財産に属する財産を処分した場合、当該財産は遺産分割の対象となる相続財産ではなくなるため、残余の相続財産について遺産分割を行い、共同相続人間の不公平が生じたときには、別途訴訟等により回復する必要がある。 4.妥当でない

遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる(民法906条の2第1項)。
また、共同相続人の1人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない(民法906条の2第2項)。

相続開始後、遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合、当該財産を考慮せず残された財産を遺産として分割してしまうと、処分をした相続人が得をしてしまい不公平が生じるから、これを防ぐためである。
よって、処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができるので、別途訴訟等により回復する必要はない。

共同相続人は、相続の開始後3ヵ月を経過した場合、いつでもその協議で遺産の全部または一部の分割をすることができる。 5.妥当でない

「相続の開始後3ヵ月を経過した場合」としている点が誤り。3ヵ月を経過しなくてもできる。

共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合又は分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。(民法907条1項)。

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