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令和4年-問28 民法 物権

Lv3

問題 更新:2023-01-17 10:21:09

占有権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. Aが所有する動産甲(以下「甲」という。)の保管をAから委ねられ占有しているBが、甲を自己の物と称してCに売却した場合、甲に対するCの即時取得の成立要件について、占有開始におけるCの平穏、公然、善意および無過失は推定される。
  2. Aが所有する乙土地(以下「乙」という。)をBが20年以上にわたって占有し、所有権の取得時効の成否が問われる場合、Aが、Bによる乙の占有が他主占有権原に基づくものであることを証明しない限り、Bについての他主占有事情が証明されても、Bの所有の意思が認められる。
  3. Aが所有する丙土地(以下「丙」という。)を無権利者であるBがCに売却し、Cが所有権を取得したものと信じて丙の占有を開始した場合、Aから本権の訴えがないときは、Cは、丙を耕作することによって得た収穫物を取得することができる。
  4. Aが所有する動産丁(以下「丁」という。)を保管することをBに寄託し、これに基づいてBが丁を占有していたところ、丁をCに盗取された場合、Bは、占有回収の訴えにより、Cに対して丁の返還を請求することができる。
  5. Aが所有する動産戊(以下「戊」という。)を保管することをBに寄託し、これをBに引き渡した後、Aは戊をCに譲渡した場合、Aが、Bに対して以後Cの所有物として戊を占有するよう指示し、Cが、これを承諾したときは、戊についてAからCへの引渡しが認められる。
  解答&解説

正解 2

解説

Aが所有する動産甲(以下「甲」という。)の保管をAから委ねられ占有しているBが、甲を自己の物と称してCに売却した場合、甲に対するCの即時取得の成立要件について、占有開始におけるCの平穏、公然、善意および無過失は推定される。 1.妥当である

民法186条1項により、善意、平穏に、かつ、公然が推定され、民法188条により無過失が推定される。

民法186条1項
占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。

また判例は、「およそ占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定される以上(民法188条)、譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについては過失のないものと推定され、占有取得者自身において過失のないことを立証することを要しないものと解すべきである(最判昭41年6月9日)」とし、無過失の推定を受けるものとされている。

民法188条
占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。

Aが所有する乙土地(以下「乙」という。)をBが20年以上にわたって占有し、所有権の取得時効の成否が問われる場合、Aが、Bによる乙の占有が他主占有権原に基づくものであることを証明しない限り、Bについての他主占有事情が証明されても、Bの所有の意思が認められる。 2.妥当でない

「Bについての他主占有事情が証明されても、Bの所有の意思が認められる」としている点が妥当でない。
他主占有事情が証明されれば、自主占有が否定され、所有の意思は認められないことになる。

所有権の取得時効の成否が問題になる事案において、必要になる占有は、「自主占有」である。

自主占有とは、所有の意思を持って行う占有のことである(民法162条)。
所有の意思の有無は、外形的・客観的に判断される。簡単に説明すると、ある物を自分の物にする意思が、外形的・客観的に認められるか否かである。
一般的に、人から借りた物(賃貸借、使用貸借の関係)等については、所有の意思がない、すなわち、自主占有ではないと判断される。
ただし、民法186条により、所有の意思は推定されることにも注意したい。

判例は、「占有者がその性質上所有の意思のないものとされる権原に基づき占有を取得した事実が証明されるか、又は占有者が占有中、・・・外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったものと解される事情が証明されるときは、占有者の内心の意思のいかんを問わず、その所有の意思を否定し、時効による所有権取得の主張を排斥しなければならないものである(最判昭和58年3月24日)。」としている。

Aが所有する丙土地(以下「丙」という。)を無権利者であるBがCに売却し、Cが所有権を取得したものと信じて丙の占有を開始した場合、Aから本権の訴えがないときは、Cは、丙を耕作することによって得た収穫物を取得することができる。 3.妥当である

善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する(民法189条1項)。

善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす(民法189条2項)。

よって、所有権を取得したものとして信じて占有を開始した、いわゆる善意の占有者であるCは、Aから本権の訴えがないときは、丙を耕作することによって得た収穫物を取得することができる。

Aが所有する動産丁(以下「丁」という。)を保管することをBに寄託し、これに基づいてBが丁を占有していたところ、丁をCに盗取された場合、Bは、占有回収の訴えにより、Cに対して丁の返還を請求することができる。 4.妥当である

占有者は、占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も、同様とする(民法197条)。
占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる(民法200条1項)。
民法197条の占有者には、寄託者も含まれる。

よって、動産丁を保管しているBは寄託者にあたり、占有回収の訴え(民法200条)により、盗取したCに対して丁の返還を請求することができる。

なお、占有回収の訴えは、「占有を奪われたとき」に提起できるのであり、騙されて自主的に物を交付した場合(詐欺等)には、提起することができないので、注意したい。

Aが所有する動産戊(以下「戊」という。)を保管することをBに寄託し、これをBに引き渡した後、Aは戊をCに譲渡した場合、Aが、Bに対して以後Cの所有物として戊を占有するよう指示し、Cが、これを承諾したときは、戊についてAからCへの引渡しが認められる。 5.妥当である

物権変動における動産の対抗要件は、引渡し(民法178条)であるが、ここにいう引渡しには現実の引渡しの他に「簡易の引渡」「占有改定」「指図による占有移転」も含まれるとされている。
本肢は「指図による占有移転(民法184条)」である。

代理人Bによって占有をする場合において、本人Aがその代理人Bに対して以後第三者Cのためにその物を占有することを命じ、その第三者Cがこれを承諾したときは、その第三者Cは、占有権を取得する。

指図による占有移転の要件をみたしているので、戊についてAからCへの引渡しが認められる。

簡易の引渡 譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる(民法182条2項)。
占有改定 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する(民法183条)。
指図による占有移転 代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する(民法184条)。
簡易の引渡
譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる(民法182条2項)。
占有改定
代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する(民法183条)。
指図による占有移転
代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する(民法184条)。
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