令和4年-問24 行政法 地方自治法
Lv3
問題 更新:2023-01-17 10:14:38
都道府県の事務にかかる地方自治法の規定に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 都道府県は、都道府県知事の権限に属する事務の一部について、条例の定めるところにより、市町村が処理するものとすることができるとされている。
- 都道府県の事務の根拠となる法律が、当該事務について都道府県の自治事務とする旨を定めているときに限り、当該事務は自治事務となるとされている。
- 都道府県知事がする処分のうち、法定受託事務にかかるものについての審査請求は、すべて総務大臣に対してするものとするとされている。
- 都道府県は、その法定受託事務の処理に対しては、法令の規定によらずに、国の関与を受けることがあるとされている。
- 都道府県は、その自治事務について、独自の条例によって、法律が定める処分の基準に上乗せした基準を定めることができるとされている。
正解 1
解説
都道府県は、都道府県知事の権限に属する事務の一部について、条例の定めるところにより、市町村が処理するものとすることができるとされている。 1.妥当である
条例による事務処理の特例により、都道府県知事の権限に属する事務の一部を、都道府県の条例で定めるところにより、市町村が処理することとすることができる(地方自治法252条の17の2第1項前段)。
この制度により、市町村の意見も反映しつつ、都道府県が主導し、市町村に対する多くの事務・権限の移譲が進められている。
都道府県の事務の根拠となる法律が、当該事務について都道府県の自治事務とする旨を定めているときに限り、当該事務は自治事務となるとされている。 2.妥当でない
「当該事務について都道府県の自治事務とする旨を定めているときに限り自治事務となる」というわけではない。
地方公共団体の事務は、自治事務と法定受託事務に区分され、地方自治法において「自治事務」とは、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものをいう(地方自治法2条8項)。
したがって、都道府県の事務の根拠となる法律が、都道府県の自治事務とする旨を定めていなくとも、当該事務は自治事務になる。
都道府県知事がする処分のうち、法定受託事務にかかるものについての審査請求は、すべて総務大臣に対してするものとするとされている。 3.妥当でない
「すべて総務大臣に対してするものとする」としている点が妥当でない。
法定受託事務に係る審査請求(地方自治法255条の2第1項柱書き) | |
---|---|
処分を行った執行機関 | 審査請求の相手方 |
都道府県知事その他の都道府県の執行機関の処分 | 処分にかかる事務を規定する法令を所管する各大臣 |
市町村長その他の市町村の執行機関 (教育委員会及び選挙管理委員会を除く) | 都道府県知事 |
市町村教育委員会 | 都道府県教育委員会 |
市町村選挙管理委員会 | 都道府県選挙管理委員会 |
上記表のように、法定受託事務に係る審査請求の相手先は、処分を行った執行機関によって異なる。
そして、法定受託事務に係る都道府県知事その他の都道府県の執行機関の処分についての審査請求は、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、当該処分に係る事務を規定する法律又はこれに基づく政令を所管する各大臣に対してすることになっており(地方自治法255条の2第1項1号)、全て総務大臣に対してするわけではない。
なお、不作為についての審査請求は、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、上記表に記載した者に代えて、当該不作為に係る執行機関に対してすることができる。
都道府県は、その法定受託事務の処理に対しては、法令の規定によらずに、国の関与を受けることがあるとされている。 4.妥当でない
「法令の規定によらずに、国の関与を受けることがあるとされている」としているので妥当でない。
普通地方公共団体は、その事務の処理に関し、法律又はこれに基づく政令によらなければ、普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与を受け、又は要することとされることはない(地方自治法245条の2)。
これは法定受託事務であっても同じである。
都道府県は、その自治事務について、独自の条例によって、法律が定める処分の基準に上乗せした基準を定めることができるとされている。 5.妥当でない
「独自の条例によって」としている点が妥当でない。
原則、条例で法律より強い規制等を行うことはできないが、「法令に違反しない限りにおいて」条例の制定は認められている(地方自治法14条1項)。
「法令に違反しているかどうか」について判例は、法令と条例の規制目的に共通点があったとしても、条例が直ちに法令違反となるものではなく、条例が法令の規定に違反するかどうかは、「両者の対象事項と規定文言を対比するのみならず、それぞれの趣旨、目的、内容および効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによって決定しなければならない」としている(徳島市公安条例事件:最判昭和50年9月10日)。
「趣旨、目的、内容および効果を比較」したうえで例外的に認められることもある。