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令和4年-問20 行政法 国家賠償法

Lv3

問題 更新:2023-01-17 10:09:28

国家賠償法1条1項に基づく国家賠償責任に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 検察官が公訴を提起したものの、裁判で無罪が確定した場合、当該公訴提起は、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。
  2. 指定確認検査機関による建築確認事務は、当該確認に係る建築物について確認権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体の事務であり、当該地方公共団体が、当該事務について国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う。
  3. 公立学校における教職員の教育活動は、私立学校の教育活動と変わるところはないため、原則として、国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」に当たらない。
  4. 税務署長のする所得税の更正が所得金額を過大に認定していた場合、当該更正は、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。
  5. 警察官が交通法規に違反して逃走する車両をパトカーで追跡する職務執行中に、逃走車両の走行によって第三者が負傷した場合、当該追跡行為は、当該第三者との関係において、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。
  解答&解説

正解 2

解説

国家賠償法1条1項
国又は公共団体の公権力の行使にあたる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
② 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があったときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

検察官が公訴を提起したものの、裁判で無罪が確定した場合、当該公訴提起は、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。 1.妥当でない

公訴が無罪だったとしても、当然に違法と評価されるわけではない。

公訴とは、検察官が裁判所に対して、事件の被疑者を刑事裁判にかけることを求める申立てのことである。
検察官が公訴を提起したものの、裁判で無罪が確定した場合において、検察官の公訴提起が国家賠償の評価を受けるかどうかについて判例は、「刑事事件において無罪の判決が確定したというだけで直ちに起訴前の逮捕・勾留、公訴の提起・追行、起訴後の勾留が違法となるということはない。」とし、その理由を、「逮捕・勾留はその時点において犯罪の嫌疑について相当な理由があり、かつ、必要性が認められるかぎりは適法であり、公訴の提起は、検察官が裁判所に対して犯罪の成否、刑罰権の存否につき審判を求める意思表示にほかならないのであるから、起訴時あるいは公訴追行時における検察官の心証は、その性質上、判決時における裁判官の心証と異なり、起訴時あるいは公訴追行時における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば足りるものと解するのが相当であるからである(最判昭和53年10月20日)。」としている。

指定確認検査機関による建築確認事務は、当該確認に係る建築物について確認権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体の事務であり、当該地方公共団体が、当該事務について国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う。 2.妥当である

建築物が法令に適合しているか確認検査する業務を行う民間機関を「指定確認検査機関」という。

指定確認検査機関が確認権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体の事務であるかどうかについて判例は、「指定確認検査機関による確認に関する事務は、建築主事による確認に関する事務の場合と同様に、地方公共団体の事務であり、その事務の帰属する行政主体は、当該確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体であると解するのが相当である。
したがって、指定確認検査機関の確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は、指定確認検査機関の当該確認につき行政事件訴訟法21条1項所定の「当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体」にあたる」とし、「建築確認を行う民間の指定確認検査機関による建築確認により、相手方に損害を与えてしまった場合、地方公共団体が国家賠償責任を負う(最判平成17年6月24日)」とした。

建築基準法に基づく指定を受けた民間の指定確認検査機関による建築確認も、国家賠償法1条1項の「公権力の行使」にあたるので、妥当である。

公立学校における教職員の教育活動は、私立学校の教育活動と変わるところはないため、原則として、国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」に当たらない。 3.妥当でない

国家賠償法1条は公務員の違法な公権力の行使によって生じた損害を金銭的に賠償する私人救済の制度であるが、ここにいう「公権力の行使」については、権力的作用のみならず、非権力的作用であっても公益的な行政作用はこれに含まれるとされており、その対象は純粋な私経済作用及び国家賠償法2条の対象となるものを除いたすべての活動であると解されている(広義説、東京高判昭和56年11月13日)。

公権力の行使に含まれる非権力的作用には、教師の教育活動なども含まれる(最判昭和62年2月6日)。

税務署長のする所得税の更正が所得金額を過大に認定していた場合、当該更正は、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。 4.妥当でない

「当然に違法の評価を受けることとなる」としているので妥当でない。

判例は「税務署長のする所得税の更正は、所得金額を過大に認定していたとしても、そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、税務署長が資料を収集し、これに基づき課税要件事実を認定、判断する上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合に限り、右の評価を受ける」とした上で、違法ではないとした(最判平成5年3月11日)。

警察官が交通法規に違反して逃走する車両をパトカーで追跡する職務執行中に、逃走車両の走行によって第三者が負傷した場合、当該追跡行為は、当該第三者との関係において、国家賠償法1条1項の適用上、当然に違法の評価を受けることとなる。 5.妥当でない

「当然に違法の評価を受けることとなる」としているので妥当でない。

パトカーによる追跡中の事故について判例は「追跡行為が違法であるというためには、右追跡が当該職務目的を遂行する上で不必要であるか、又は逃走車両の逃走の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無及び内容に照らし、追跡の開始・継続若しくは追跡の方法が不相当であることを要するものと解すべきである。(最判昭和61年2月27日)」としている。

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