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令和4年-問9 行政法 行政総論

Lv3

問題 更新:2023-11-20 18:47:30

行政契約に関する次のア~オの記述のうち、法令または最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.行政手続法は、行政契約につき定義規定を置いており、国は、それに該当する行政契約の締結及び履行にあたっては、行政契約に関して同法の定める手続に従わなければならない。

イ.地方公共団体が必要な物品を売買契約により調達する場合、当該契約は民法上の契約であり、専ら民法が適用されるため、地方自治法には契約の締結に関して特別な手続は規定されていない。

ウ.水道事業者たる地方公共団体は、給水契約の申込みが、適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、水道法の定める「正当の理由」があるものとして、給水契約を拒むことができる。

エ.公害防止協定など、地方公共団体が締結する規制行政にかかる契約は、法律に根拠のない権利制限として法律による行政の原理に抵触するため、法的拘束力を有しない。

オ.法令上、随意契約によることができない契約を地方公共団体が随意契約で行った場合であっても、当該契約の効力を無効としなければ法令の規定の趣旨を没却する結果となる特別の事情が存在しない限り、当該契約は私法上有効なものとされる。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ
  解答&解説

正解 4

解説

ウ、オが妥当である。

行政手続法は、行政契約につき定義規定を置いており、国は、それに該当する行政契約の締結及び履行にあたっては、行政契約に関して同法の定める手続に従わなければならない。 ア.妥当でない

行政契約手続きに関しては定めていない。

(目的等)行政手続法1条
この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。
規定されている 処分、行政指導、届出、命令
規定されていない 計画策定、行政契約、行政調査、即時強制、入札手続、事後的な救済手続きなど
規定されている
処分、行政指導、届出、命令
規定されていない
計画策定、行政契約、行政調査、即時強制、入札手続、事後的な救済手続きなど

地方公共団体が必要な物品を売買契約により調達する場合、当該契約は民法上の契約であり、専ら民法が適用されるため、地方自治法には契約の締結に関して特別な手続は規定されていない。 イ.妥当でない

「地方自治法には契約の締結に関して特別な手続は規定されていない」としている点が妥当ではない。

売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする(地方自治法234条1項)。

地方公共団体が必要な物品を売買契約により調達するような私法上の契約の場合は、民法などによる契約自由の原則が適用されるが、契約事業の公正の確保や公金の効率的運用を図るとともに、財政民主主義を担保するために、地方自治法にて特別の規制がされている。

水道事業者たる地方公共団体は、給水契約の申込みが、適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、水道法の定める「正当の理由」があるものとして、給水契約を拒むことができる。 ウ.妥当である

水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならない(水道法15条1項)と規定している。

これについて判例は「漫然と新規の給水申込みに応じていると、近い将来需要に応じきれなくなり深刻な水不足を生ずることが予測される状態にあるということができる。
このようにひっ迫した状況の下においては、被上告人が、新たな給水申込みのうち、需要量が特に大きく、住宅を供給する事業を営む者が住宅を分譲する目的であらかじめしたものについて契約の締結を拒むことにより、急激な水道水の需要の増加を抑制する施策を講ずることも、やむを得ない措置として許されるものというべきである。
そして、上告人の給水契約の申込みは、マンション420戸を分譲するという目的のためにされたものであるから、所論のように、建築計画を数年度に分け、井戸水を併用することにより水道水の使用量を押さえる計画であることなどを考慮しても、被上告人がこれを拒んだことには水道法15条1項にいう「正当の理由」があるものと認めるのが相当である(最判平成11年1月21日)」としている。

なお、給水拒否に関しては、「水道事業者としては、たとえ指導要綱に従わない事業主らからの給水契約の申込であっても、その締結を拒むことは許されないというべきであるから、被告人らには本件給水契約の締結を拒む正当の理由がなかったと判断した点も、是認することができる。」とした判例(最判平成元年11月8日)がある。

前者の判例は、資源水がひっ迫していることに鑑みてやむをえない措置の給水拒否は正当な理由があるとしているが、後者の判例は、指導要綱に従わない事業主らからの給水契約の申込であっても、その締結を拒むことは許されず給水契約を拒む正当な理由がなかったとしており、最高裁は異なる判断をしているので留意されたい。

公害防止協定など、地方公共団体が締結する規制行政にかかる契約は、法律に根拠のない権利制限として法律による行政の原理に抵触するため、法的拘束力を有しない。 エ.妥当でない

「法律に根拠のない権利制限として法律による行政の原理に抵触するため、法的拘束力を有しない」わけではないので、妥当ではない。

公害防止協定の法的性質・効力については議論のあるところではあるが、大きく分けると「紳士協定説」と「契約説」がある。
「紳士協定説」は、企業責任として紳士的・道義的に宣言したに過ぎないから法的拘束力はないとするのに対し、「契約説」は、契約である以上、根拠法令があるかどうかにかかわらず一定の拘束力があるとする。

この点、判例(最判平成21年7月10日)は、法的性質等への言及はしていないが、当該協定に一定の拘束力があることを前提として、産業廃棄物処理施設を操業の差止めを認めていることから、「契約説」の立場、つまり、法的拘束力を有すると考えられている。

「処分業者が、公害防止協定において、協定の相手方に対し、その事業や処理施設を将来廃止する旨を約束することは、処分業者自身の自由な判断で行えることであり、その結果、許可が効力を有する期間内に事業や処理施設が廃止されることがあったとしても、同法に何ら抵触するものではない。
したがって、旧期限条項が同法の趣旨に反するということはできないし、同法の上記のような趣旨、内容は、その後の改正によっても、変更されていないので、本件期限条項が本件協定が締結された当時の廃棄物処理法の趣旨に反するということもできない。
そして、旧期限条項及び本件期限条項が知事の許可の本質的な部分にかかわるものではないことは、以上の説示により明らかであるから、旧期限条項及び本件期限条項は、本件条例15条が予定する協定の基本的な性格及び目的から逸脱するものでもない(最判平成21年7月10日)。」

法令上、随意契約によることができない契約を地方公共団体が随意契約で行った場合であっても、当該契約の効力を無効としなければ法令の規定の趣旨を没却する結果となる特別の事情が存在しない限り、当該契約は私法上有効なものとされる。 オ.妥当である

判例は、地方公共団体が随意契約の制限に関する法令に違反して締結した契約につき、当該契約の効力を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える法令の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り、私法上無効になるとしている。
逆をいえば、法令の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められなければ、私法上有効になる。

「随意契約の制限に関する法令に違反して締結された契約の私法上の効力については別途考察する必要があり、かかる違法な契約であっても私法上当然に無効になるものではなく、随意契約によることができる場合として前記令(地方自治法施行令)の規定の掲げる事由のいずれにもあたらないことが何人の目にも明らかである場合や契約の相手方において随意契約の方法による当該契約の締結が許されないことを知り又は知り得べかりし場合のように当該契約の効力を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える前記法(地方自治法)及び令の規定の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り、私法上無効になるものと解するのが相当である。(最判昭和62年5月19日)」

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