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令和4年-問5 憲法 人身の自由

Lv3

問題 更新:2023-01-17 09:57:28

適正手続に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 告知、弁解、防御の機会を与えることなく所有物を没収することは許されないが、貨物の密輸出で有罪となった被告人が、そうした手続的保障がないままに第三者の所有物が没収されたことを理由に、手続の違憲性を主張することはできない。
  2. 憲法は被疑者に対して弁護人に依頼する権利を保障するが、被疑者が弁護人と接見する機会の保障は捜査権の行使との間で合理的な調整に服さざるを得ないので、憲法は接見交通の機会までも実質的に保障するものとは言えない。
  3. 審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められる異常な事態が生じた場合であっても、法令上これに対処すべき具体的規定が存在しなければ、迅速な裁判を受ける権利を根拠に救済手段をとることはできない。
  4. 不利益供述の強要の禁止に関する憲法の保障は、純然たる刑事手続においてばかりだけでなく、それ以外にも、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、等しく及ぶ。
  5. 不正な方法で課税を免れた行為について、これを犯罪として刑罰を科すだけでなく、追徴税(加算税)を併科することは、刑罰と追徴税の目的の違いを考慮したとしても、実質的な二重処罰にあたり許されない。
  解答&解説

正解 4

解説

告知、弁解、防御の機会を与えることなく所有物を没収することは許されないが、貨物の密輸出で有罪となった被告人が、そうした手続的保障がないままに第三者の所有物が没収されたことを理由に、手続の違憲性を主張することはできない。 1.妥当でない

「手続の違憲性を主張することはできない。」としている点が妥当でない。
判例によると、手続的保障がないままに第三者の所有物が没収されたことを理由として手続の違憲性を主張することは可能である。

「第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であって、憲法の容認しないところであるといわなければならない」とし、続いて「かかる没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であっても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは、当然である。のみならず、被告人としても没収に係る物の占有権を剥奪され、またはこれが使用、収益をなしえない状態におかれ、更には所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかであるから、上告によりこれが救済を求めることができるものと解すべきである。(最大判昭和37年11月28日第三者没収事件)」としている。

憲法は被疑者に対して弁護人に依頼する権利を保障するが、被疑者が弁護人と接見する機会の保障は捜査権の行使との間で合理的な調整に服さざるを得ないので、憲法は接見交通の機会までも実質的に保障するものとは言えない。 2.妥当でない

「接見交通の機会までも実質的に保障するものとは言えない。」としている点が妥当でない。

接見交通権とは、刑事事件の被疑者・被告人として身柄拘束を受けている者が、弁護士等と面談する(接見)権利、物品を受領する(交通)権利である。

判例によると、憲法は接見交通の機会を実質的に保障している。

「憲法34条前段は、「何人も、理由を直ちに告げられ、かつ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留又は拘禁されない。」と定める。
この弁護人に依頼する権利は、身体の拘束を受けている被疑者が、拘束の原因となっている嫌疑を晴らしたり、人身の自由を回復するための手段を講じたりするなど自己の自由と権利を守るため弁護人から援助を受けられるようにすることを目的とするものである。
したがって、右規定は、単に被疑者が弁護人を選任することを官憲が妨害してはならないというにとどまるものではなく、被疑者に対し、弁護人を選任した上で、弁護人に相談し、その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障しているものと解すべきである(最大判平成11年3月24日)。」

審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められる異常な事態が生じた場合であっても、法令上これに対処すべき具体的規定が存在しなければ、迅速な裁判を受ける権利を根拠に救済手段をとることはできない。 3.妥当でない

判例によると、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められる異常な事態が生じた場合であれば、法令上これに対処すべき具体的規定が存在しなくても、迅速な裁判を受ける権利を根拠に救済手段をとることが可能である。
高田事件(最大判昭和47年12月20日)では、公判が、特段の理由なく15年以上にわたって中断されていたという事案において、迅速な裁判を受ける被告人の権利が侵害されたとして、免訴を言い渡している。

「憲法37条1項の保障する迅速な裁判をうける権利は、憲法の保障する基本的な人権の一つであり、右条項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判をうける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、これに対処すべき具体的規定がなくても、もはや当該被告人に対する手続の続行を許さず、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定であると解する(最大判昭和47年12月20日高田事件)。」

不利益供述の強要の禁止に関する憲法の保障は、純然たる刑事手続においてばかりだけでなく、それ以外にも、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、等しく及ぶ。 4.妥当である

憲法38条1項は、自己に不利益な供述を強要されないことを保障しており、これを不利益供述強要の禁止という。
自己に不利益な供述とは、有罪判決の基礎となる事実や量刑上不利益となる事実などの供述を指し、強要されないとは、拷問による直接的な強要は当然として、供述しないと法律上の不利益が科されるといった間接的な強要も認めないという意味である。

本項は、刑事手続きについて規定しているが、これは行政手続きにも及ぶのかどうかについて判例は、「憲法38条1項の法意が、何人も自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障したものであると解すべきことは、当裁判所大法廷の判例(昭和27年(あ)第838号同32年2月20日判決・刑集11巻2号802頁)とするところであるが、右規定による保障は、純然たる刑事手続においてばかりではなく、それ以外の手続においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、ひとしく及ぶものと解するのを相当とする(最大判昭和47年11月22日川崎民商事件)。」としている。

不正な方法で課税を免れた行為について、これを犯罪として刑罰を科すだけでなく、追徴税(加算税)を併科することは、刑罰と追徴税の目的の違いを考慮したとしても、実質的な二重処罰にあたり許されない。 5.妥当でない

「実質的な二重処罰にあたり許されない。」としている点が妥当でない。

脱税行為に対して犯罪としての刑罰に併せて追徴税(加算税)を科することは、二重処罰の禁止(憲法39条)に違反しない。
その理由として、法人税の逋脱(ほだつ)に対する刑罰は、脱税者の不正行為の反社会性・反道徳性に対する制裁であるのに対して、追徴税(加算税)を科すことは、納税義務違反を防止するための行政上の措置であって刑罰とは性格を異にするからである。

「憲法39条の規定は刑罰たる罰金と追徴税とを併科することを禁止する趣旨を含むものでないと解するのが相当である(最大判昭和33年4月30日)。」

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