令和3年-問43 多肢選択式 行政法
Lv3
問題 更新:2022-01-08 01:53:21
次の文章の空欄[ ア ]~[ エ ]に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。
行政手続法14条1項本文が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の[ ア ]と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて[ イ ]に便宜を与える趣旨に出たものと解される。そして、同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは、上記のような同項本文の趣旨に照らし、当該処分の根拠法令の規定内容、当該処分に係る[ ウ ]の存否及び内容並びに公表の有無、当該処分の性質及び内容、当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである。
この見地に立って建築士法・・・(略)・・・による建築士に対する懲戒処分について見ると、・・・(略)・・・処分要件はいずれも抽象的である上、これらに該当する場合に・・・(略)・・・所定の戒告、1年以内の業務停止又は免許取消しのいずれの処分を選択するかも処分行政庁の裁量に委ねられている。そして、建築士に対する上記懲戒処分については、処分内容の決定に関し、本件[ ウ ]が定められているところ、本件[ ウ ]は、[ エ ]の手続を経るなど適正を担保すべき手厚い手続を経た上で定められて公にされており、・・・(略)・・・多様な事例に対応すべくかなり複雑なものとなっている。
そうすると、建築士に対する上記懲戒処分に際して同時に示されるべき理由としては、処分の原因となる事実及び処分の根拠法条に加えて、本件[ ウ ]の適用関係が示されなければ、処分の名宛人において、上記事実及び根拠法条の提示によって処分要件の該当性に係る理由は知り得るとしても、いかなる理由に基づいてどのような[ ウ ]の適用によって当該処分が選択されたのかを知ることは困難であるのが通例であると考えられる。
(最三小判平成23年6月7日民集65巻4号2081頁)
- 公平
- 審査基準
- 名宛人以外の第三者
- 弁明
- 条例
- 意見公募
- 説明責任
- 根拠
- 慎重
- 紛争の一回解決
- 要綱
- 諮問
- 処分基準
- 利害関係人
- 議会の議決
- 規則
- 不服の申立て
- 審査請求
- 適法性
- 聴聞
- ア
-
- イ
-
- ウ
-
- エ
-
正解
- ア9
- イ17
- ウ13
- エ6
解説
本判例の事案は、1級建築士Xが建築基準法令上の耐震構造基準に満たない建築設計等を行ったため、国土交通大臣がXに対して、1級建築士取消処分(不利益処分)を下したが、その際の理由提示には、事実関係と根拠法律が記されているのみで、処分基準がどのように適用されているか記されていなかった。
そこで、Xは、行政手続法14条1項の要件を欠いた違法な処分であるとして、取消訴訟を提起した。
行政手続法14条1項
行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。
本問の抜粋部分は、その理由部分であり、結論としては「行政手続法14条1項本文の趣旨に照らし、同項本文の要求する理由提示としては十分でない」として、当該不利益処分は取り消されることとなった。
なおこの判例は過去問で頻出であり(平成25年-問13は抜粋部分が全く同じ)、繰り返し学習して理解を深めてほしい。
空欄を補充した文章はつぎのとおり。
行政手続法14条1項本文が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の[ア:慎重]と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて[イ:不服の申立て]に便宜を与える趣旨に出たものと解される。そして、同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは、上記のような同項本文の趣旨に照らし、当該処分の根拠法令の規定内容、当該処分に係る[ウ:処分基準]の存否及び内容並びに公表の有無、当該処分の性質及び内容、当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである。
この見地に立って建築士法・・・(略)・・・による建築士に対する懲戒処分について見ると、・・・(略)・・・処分要件はいずれも抽象的である上、これらに該当する場合に・・・(略)・・・所定の戒告、1年以内の業務停止又は免許取消しのいずれの処分を選択するかも処分行政庁の裁量に委ねられている。そして、建築士に対する上記懲戒処分については、処分内容の決定に関し、本件[ウ:処分基準]が定められているところ、本件[ウ:処分基準]は、[エ:意見公募]の手続を経るなど適正を担保すべき手厚い手続を経た上で定められて公にされており、・・・(略)・・・多様な事例に対応すべくかなり複雑なものとなっている。
そうすると、建築士に対する上記懲戒処分に際して同時に示されるべき理由としては、処分の原因となる事実及び処分の根拠法条に加えて、本件[ウ:処分基準]の適用関係が示されなければ、処分の名宛人において、上記事実及び根拠法条の提示によって処分要件の該当性に係る理由は知り得るとしても、いかなる理由に基づいてどのような[ウ:処分基準]の適用によって当該処分が選択されたのかを知ることは困難であるのが通例であると考えられる。
(最三小判平成23年6月7日民集65巻4号2081頁)