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令和3年-問10 行政法 行政総論

Lv4

問題 更新:2023-06-22 10:31:32

行政立法についての最高裁判所の判決に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 国家公務員の退職共済年金受給に伴う退職一時金の利子相当額の返還について定める国家公務員共済組合法の規定において、その利子の利率を政令で定めるよう委任をしていることは、直接に国民の権利義務に変更を生じさせる利子の利率の決定という、本来法律で定めるべき事項を政令に委任するものであり、当該委任は憲法41条に反し許されない。
  2. 監獄法(当時)の委任を受けて定められた同法施行規則(省令)において、原則として被勾留者と幼年者との接見を許さないと定めていることは、事物を弁別する能力のない幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであるとしても、法律によらないで被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって、法の委任の範囲を超えるものといえ、当該施行規則の規定は無効である。
  3. 薬事法(当時)の委任を受けて、同法施行規則(省令)において一部の医薬品について郵便等販売をしてはならないと定めることについて、当該施行規則の規定が法律の委任の範囲を逸脱したものではないというためには、もっぱら法律中の根拠規定それ自体から、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が明確に読み取れることを要するものというべきであり、その判断において立法過程における議論を考慮したり、根拠規定以外の諸規定を参照して判断をすることは許されない。
  4. 児童扶養手当法の委任を受けて定められた同法施行令(政令)の規定において、支給対象となる婚姻外懐胎児童について「(父から認知された児童を除く。)」という括弧書きが設けられていることについては、憲法に違反するものでもなく、父の不存在を指標として児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲を画することはそれなりに合理的なものともいえるから、それを設けたことは、政令制定者の裁量の範囲内に属するものであり、違憲、違法ではない。
  5. 銃砲刀剣類所持等取締法が、銃砲刀剣類の所持を原則として禁止した上で、美術品として価値のある刀剣類の所持を認めるための登録の方法や鑑定基準等を定めることを銃砲刀剣類登録規則(省令)に委任している場合に、当該登録規則において登録の対象を日本刀に限定したことについては、法律によらないで美術品の所有の自由を著しく制限するものであって、法の委任の範囲を超えるものといえ、当該登録規則の規定は無効である。
  解答&解説

正解 2

解説

国家公務員の退職共済年金受給に伴う退職一時金の利子相当額の返還について定める国家公務員共済組合法の規定において、その利子の利率を政令で定めるよう委任をしていることは、直接に国民の権利義務に変更を生じさせる利子の利率の決定という、本来法律で定めるべき事項を政令に委任するものであり、当該委任は憲法41条に反し許されない。 1.妥当でない

判例は、国公共済法附則12条の12第4項及び厚年法改正法附則30条1項は、退職一時金に付加して返還すべき利子の利率の定めを白地で包括的に政令に委任するものということはできず、憲法41条及び73条6号に違反するものではない、としている。

「国家公務員共済組合法附則12条の12は、同一の組合員期間に対する退職一時金と退職共済年金等との重複支給を避けるための調整措置として、従来の年金額からの控除という方法を改め、財政の均衡を保つ見地から、脱退一時金の金額の算定方法に準じ、退職一時金にその予定運用収入に相当する額を付加して返還させる方法を採用したものと解される。
このような同条の趣旨等に照らすと、同条4項は、退職一時金に付加して返還すべき利子の利率について、予定運用収入に係る利率との均衡を考慮して定められる利率とする趣旨でこれを政令に委任したものと理解することができる。
そして、国公共済法附則12条の12の経過措置を定める厚年法改正法附則30条1項についても、これと同様の趣旨で退職一時金利子加算額の返還方法についての定めを政令に委任したものと理解することができる。
したがって、国公共済法附則12条の12第4項及び厚年法改正法附則30条1項は、退職一時金に付加して返還すべき利子の利率の定めを白地で包括的に政令に委任するものということはできず、憲法41条及び73条6号に違反するものではないと解するのが相当である(最判平成27年12月14日)」

監獄法(当時)の委任を受けて定められた同法施行規則(省令)において、原則として被勾留者と幼年者との接見を許さないと定めていることは、事物を弁別する能力のない幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであるとしても、法律によらないで被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって、法の委任の範囲を超えるものといえ、当該施行規則の規定は無効である。 2.妥当である

被拘留者と幼年者との接見を原則として禁止し、例外的に監獄長の裁量でこれを許す旨を定めていた監獄法施行規則について、接見に関する制限を命令に委任していた監獄法(当時)の委任の範囲を超えるとした事例である。

判例は、「たとえ事物を弁別する能力の未発達な幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであるとしても、それ自体、法律によらないで、被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって、法50条の委任の範囲を超えるものといわなければならない。・・・
被勾留者も当該拘禁関係に伴う一定の制約の範囲外においては原則として一般市民としての自由を保障されるのであり、幼年者の心情の保護は元来その監護にあたる親権者等が配慮すべき事柄であることからすれば、法が一律に幼年者と被勾留者との接見を禁止することを予定し、容認しているものと解することは、困難である。
そうすると、規則120条(及び124条)は、原審のような限定的な解釈を施したとしても、なお法の容認する接見の自由を制限するものとして、法50条の委任の範囲を超えた無効のものというほかはない。
そうだとすれば、規則120条(及び124条)は、結局、被勾留者と幼年者との接見を許さないとする限度において、法50条の委任の範囲を超えた無効のものと断ぜざるを得ない」としている(最判平成3年7月9日)。

最高裁は、法は、接見の時間や手続き等の制限を命令に委任しているだけで、接見を一律に禁止することまでは委任していない。よって同施行規則は、法律によらないで被拘留者の接見の自由を著しく制限するとして、法50条の委任の範囲を超え無効とした。

なお、同規則は、長きにわたって施行されてきたものであって本件処分当時までの間これらの規定の有効性につき、実務上及び裁判上において、特に論議されたこともないという事情の下では、監獄の長が本件処分当時、無効であることを予見し、又は予見すべきであったということはできないため、接見を許可しなかったことにつき国家賠償法1条1項にいう「過失」があったということはできないとしている。

薬事法(当時)の委任を受けて、同法施行規則(省令)において一部の医薬品について郵便等販売をしてはならないと定めることについて、当該施行規則の規定が法律の委任の範囲を逸脱したものではないというためには、もっぱら法律中の根拠規定それ自体から、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が明確に読み取れることを要するものというべきであり、その判断において立法過程における議論を考慮したり、根拠規定以外の諸規定を参照して判断をすることは許されない。 3.妥当でない

「その判断において立法過程における議論を考慮したり、根拠規定以外の諸規定を参照して判断をすることは許されない」としているのは妥当でない。

医薬品のインターネット販売を行っていた事業者が、法改正に伴って改正された法施行規則によって一部医薬品のネット販売が禁止されたことを受け、ネット販売の権利確認等を請求した事例である。

判例は、「旧薬事法の下では違法とされていなかった郵便等販売に対する新たな規制は、郵便等販売をその事業の柱としてきた者の職業活動の自由を相当程度制約するものであることが明らかである。
これらの事情の下で、厚生労働大臣が制定した郵便等販売を規制する新施行規則の規定が、これを定める根拠となる新薬事法の趣旨に適合するものであり、その委任の範囲を逸脱したものではないというためには、立法過程における議論をもしんしゃくした上で、新薬事法36条の5及び36条の6を始めとする新薬事法中の諸規定を見て、そこから、郵便等販売を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が、上記規制の範囲や程度等に応じて明確に読み取れることを要するものというべきである」としている(最判平成25年1月11日)。

児童扶養手当法の委任を受けて定められた同法施行令(政令)の規定において、支給対象となる婚姻外懐胎児童について「(父から認知された児童を除く。)」という括弧書きが設けられていることについては、憲法に違反するものでもなく、父の不存在を指標として児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲を画することはそれなりに合理的なものともいえるから、それを設けたことは、政令制定者の裁量の範囲内に属するものであり、違憲、違法ではない。 4.妥当でない

判例は、かっこ書きにより児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲から除外したことは法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効であり、本件かっこ書きを根拠としてされた本件処分は違法としている。

児童扶養手当の支給対象を限定する施行令を違法とした事例である。
判例は、「施行令1条の2第3号が父から認知された婚姻外懐胎児童を本件かっこ書きにより児童扶養手当の支給対象となる児童の範囲から除外したことは法の委任の趣旨に反し、本件かっこ書きは法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効と解すべきである。
そうすると、その余の点について判断するまでもなく、本件かっこ書きを根拠としてされた本件処分は違法といわざるを得ない」としている(最判平成14年1月31日)。

児童扶養手当法の目的が「父または母と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため、当該児童について児童扶養手当を支給し、もって児童の福祉の増進を図ること」(児童扶養手当法1条)にあるのだから、児童扶養手当の対象となる児童から除外することが裁量権を濫用したと認められるのは、当然といえば当然である。

銃砲刀剣類所持等取締法が、銃砲刀剣類の所持を原則として禁止した上で、美術品として価値のある刀剣類の所持を認めるための登録の方法や鑑定基準等を定めることを銃砲刀剣類登録規則(省令)に委任している場合に、当該登録規則において登録の対象を日本刀に限定したことについては、法律によらないで美術品の所有の自由を著しく制限するものであって、法の委任の範囲を超えるものといえ、当該登録規則の規定は無効である。 5.妥当でない

判例は、銃砲刀剣類所持等取締法14条1項の趣旨に沿う合理性を有する鑑定基準を定めたものというべきであるから、これをもって法の委任の趣旨を逸脱する無効のものということはできないとしている。

銃砲刀剣類所持等取締法における登録制度をめぐり、銃砲刀剣類登録規則で法律に定められていない登録対象の限定がなされていた事例である。

「規則が文化財的価値のある刀剣類の鑑定基準として、・・・美術品として文化財的価値を有する日本刀に限る旨を定め、この基準に合致するもののみを我が国において前記の価値を有するものとして登録の対象にすべきものとしたことは、(銃砲刀剣類所持等取締法)14条1項の趣旨に沿う合理性を有する鑑定基準を定めたものというべきであるから、これをもって法の委任の趣旨を逸脱する無効のものということはできない(最判平成2年2月1日)」

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