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令和2年-問28 民法 物権

Lv3

問題 更新:2023-11-20 15:46:29

占有改定等に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア.即時取得が成立するためには占有の取得が必要であるが、この占有の取得には、外観上従来の占有事実の状態に変更を来たさない、占有改定による占有の取得は含まれない。

イ.留置権が成立するためには他人の物を占有することが必要であるが、この占有には、債務者を占有代理人とした占有は含まれない。

ウ.先取特権の目的動産が売買契約に基づいて第三取得者に引き渡されると、その後は先取特権を当該動産に対して行使できないこととなるが、この引渡しには、現実の移転を伴わない占有改定による引渡しは含まれない。

エ.質権が成立するためには目的物の引渡しが必要であるが、この引渡しには、設定者を以後、質権者の代理人として占有させる、占有改定による引渡しは含まれない。

オ.動産の譲渡担保権を第三者に対抗するためには目的物の引渡しが必要であるが、この引渡しには、公示性の乏しい占有改定による引渡しは含まれない。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・エ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ
  解答&解説

正解 4

解説

ウ、オが妥当でない。

占有改定
民法183条 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。

即時取得が成立するためには占有の取得が必要であるが、この占有の取得には、外観上従来の占有事実の状態に変更を来たさない、占有改定による占有の取得は含まれない。 ア.妥当である

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する(民法192条)。

この「占有」について、判例は、「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条(即時取得)によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもっては足らない」(最判昭和35年2月11日)としている。

留置権が成立するためには他人の物を占有することが必要であるが、この占有には、債務者を占有代理人とした占有は含まれない。 イ.妥当である

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない(民法295条)。

この占有は、第三者による代理占有によっても成立する。
しかし、債務者は第三者ではないため、債務者を占有代理人とした占有は含まれない。

先取特権の目的動産が売買契約に基づいて第三取得者に引き渡されると、その後は先取特権を当該動産に対して行使できないこととなるが、この引渡しには、現実の移転を伴わない占有改定による引渡しは含まれない。 ウ.妥当でない

先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない(民法333条)。

判例は、この「引き渡し」には「占有改定を含む(大判大正6年7月26日)」としている。

質権が成立するためには目的物の引渡しが必要であるが、この引渡しには、設定者を以後、質権者の代理人として占有させる、占有改定による引渡しは含まれない。 エ.妥当である

質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる(民法344条)。

民法は、178条により物権変動については意思主義を採用しているが、民法344条は、意思主義の例外的規定となり、質権の要物性を認めている。
質権は、設定者から物を奪うことにより留置的効力を生ずるため、設定者の手元に質物を残してしまう占有改定は、民法344条に規定する「引き渡す」の要件を満たさない。

なお、民法344条の「引き渡す」には、「現実の引渡し及び簡易引渡し」「指図による引渡し」が含まれるので、あわせて押さえておきたい。

動産の譲渡担保権を第三者に対抗するためには目的物の引渡しが必要であるが、この引渡しには、公示性の乏しい占有改定による引渡しは含まれない。 オ.妥当でない

動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない(民法178条)。

動産譲渡担保権を第三者に対抗するための要件は、民法178条に規定されている「引渡し」である。
民法178条の「引渡し」は、現実の引渡し(民法182条)だけではなく、簡易引渡し(民法182条2項)、指図による占有移転(民法184条)も含まれる。

また、占有改定が含まれるか否について、判例は、「債務者が動産を売渡担保に供し引きつづきこれを占有する場合においては、債権者は、契約の成立と同時に、占有改定によりその物の占有権を取得し、その所有権取得をもって第三者に対抗することができる」(最判昭和30年6月2日)としている。すなわち、民法178条における引き渡しには、占有改定を含むとしている。

【占有改定の横断整理の一例】
占有改定でも許されるもの
  • 動産の引渡(民法178条)
  • 先取特権と第三取得者(民法333条)
占有改定では満たされないもの
  • 即時取得(民法192条)
  • 質権(民法344条)
  • 留置権(民法295条)
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