令和2年-問27 民法 総則
Lv3
問題 更新:2023-01-28 11:50:22
制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはどれか。
- 未成年者について、親権を行う者が管理権を有しないときは、後見が開始する。
- 保佐人は、民法が定める被保佐人の一定の行為について同意権を有するほか、家庭裁判所が保佐人に代理権を付与する旨の審判をしたときには特定の法律行為の代理権も有する。
- 家庭裁判所は、被補助人の特定の法律行為につき補助人の同意を要する旨の審判、および補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
- 被保佐人が保佐人の同意を要する行為をその同意を得ずに行った場合において、相手方が被保佐人に対して、一定期間内に保佐人の追認を得るべき旨の催告をしたが、その期間内に回答がなかったときは、当該行為を追認したものと擬制される。
- 制限行為能力者が、相手方に制限行為能力者であることを黙秘して法律行為を行った場合であっても、それが他の言動と相まって相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときは、詐術にあたる。
正解 4
解説
未成年者について、親権を行う者が管理権を有しないときは、後見が開始する。 1.正しい
未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき、後見が開始する(民法838条)。
親権を行う者が管理権を有しないときだけではなく、親権を行う者がないときにも後見が開始する。
保佐人は、民法が定める被保佐人の一定の行為について同意権を有するほか、家庭裁判所が保佐人に代理権を付与する旨の審判をしたときには特定の法律行為の代理権も有する。 2.正しい
被保佐人が、重要な財産に関する行為をする場合には、保佐人の同意を得なければならない(民法13条1項)。
また、家庭裁判所は、請求権者の請求により、保佐人に代理権付与の審判をすることができる(民法876条の4)。
家庭裁判所は、被補助人の特定の法律行為につき補助人の同意を要する旨の審判、および補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。 3.正しい
補助開始の審判は、①補助人の同意を要する旨の審判等、または、②補助人に代理権を付与する旨の審判とともにしなければならない(民法15条3項)。
補助開始の審判時には、①または②のどちらか一方が行われていればよいことになっており(民法17条1項、民法876条の9第1項)、①と②を同時に行うことも否定されていない。
つまり、①と②を同時に行うことも可能である。
被保佐人が保佐人の同意を要する行為をその同意を得ずに行った場合において、相手方が被保佐人に対して、一定期間内に保佐人の追認を得るべき旨の催告をしたが、その期間内に回答がなかったときは、当該行為を追認したものと擬制される。 4.誤り
制限行為能力者の相手方が、被保佐人に対して催告権を行使した場合において、確答をもらえないときにどうなるのか(民法20条4項後段)を問うものである。
原則的には、制限行為能力者の相手方が催告権を行使し、確答がもらえないケースにおいては、追認擬制の効果をもたらす(民法20条1項)。例外として、被保佐人と被補助人に対して催告権を行使した場合には、取消擬制の効果をもたらす(民法20条4項)。
本肢の場合、相手方が被保佐人に対し催告権を行使しているため、確答がなければ取消擬制となるが、「追認したものと擬制される」としているので誤りである。
追認擬制 | 制限行為能力者の相手方が、自分で決められる人(行為能力者)に対して催告権を行使した場合 |
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取消擬制 | 自分で決められない人(制限行為能力者)に対して催告権を行使した場合 |
なお、未成年者と成年被後見人は、催告の受領能力(民法98条の2)を持っていないので、催告の問題にはならないことも合わせて確認しておきたい。
制限行為能力者が、相手方に制限行為能力者であることを黙秘して法律行為を行った場合であっても、それが他の言動と相まって相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときは、詐術にあたる。 5.正しい
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない(民法21条)。
判例は「無能力者であることを黙秘することは、無能力者の他の言動などと相まって、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときには、民法20条にいう詐術にあたるが、黙秘することのみでは右詐術にあたらない」(最判昭和44年2月13日)としている。