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平成30年-問27 民法 総則

Lv4

問題 更新:2023-01-30 14:30:23

公序良俗および強行規定等の違反に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

  1. 食品の製造販売を業とする者が、有害物質の混入した食品を、食品衛生法に抵触するものであることを知りながら、あえて製造販売し取引を継続していた場合には、当該取引は、公序良俗に反して無効である。
  2. 債権の管理または回収の委託を受けた弁護士が、その手段として訴訟提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受ける行為は、たとえそれが弁護士法に違反するものであったとしても、司法機関を利用して不当な利益を追求することを目的として行われた等の事情がない限り、直ちにその私法上の効力が否定されるものではない。
  3. 組合契約において、組合員はやむを得ない事由があっても任意に脱退することができない旨の約定が存する場合であっても、組合員の脱退に関する民法の規定は強行規定ではないから、かかる約定の効力が否定されるものではない。
  4. 契約が公序に反することを目的とするものであるかどうかは、当該契約が成立した時点における公序に照らして判断すべきである。
  5. 男子の定年年齢を60歳、女子の定年年齢を55歳とする旨の会社の就業規則は、経営上の観点から男女別定年制を設けなければならない合理的理由が認められない場合、公序良俗に反して無効である。
  解答&解説

正解 3

解説

食品の製造販売を業とする者が、有害物質の混入した食品を、食品衛生法に抵触するものであることを知りながら、あえて製造販売し取引を継続していた場合には、当該取引は、公序良俗に反して無効である。 1.妥当である。

公序良俗とは、公の秩序又は善良の風俗の略語であり、これに反する法律行為は無効とされる(民法90条)。
しかしながら、公序良俗という表現は抽象的であり、どのような法律行為が無効となるのか明らかにするために、いくつかの分類に分けられて考えられている。

①正義観念、社会的倫理に反する行為
②家族道徳に反する行為
③人格の尊厳、自由を制限する行為
④法令違反行為
⑤暴利行為
⑥射幸的効
⑦動機の不法

分類された後、個別具体的に判断の参考に供される。

本肢の事例は、判例によると、「有毒性物質である硼砂(ホウシャ)の混入したアラレを販売すれば、食品衛生法4条2号に抵触し、処罰を免れないことは多弁を要しないところであるが、その理由だけで、右アラレの販売は民法90条に反し無効のものとなるものではない。
しかしながら、前示のようにアラレの製造販売を業とする者が硼砂の有毒性物質であり、これを混入したアラレを販売することが食品衛生法の禁止しているものであることを知りながら、敢えてこれを製造の上、同じ販売業者である者の要請に応じて売り渡し、その取引を継続したという場合には、一般大衆の購買のルートに乗せたものと認められ、その結果公衆衛生を害するに至るであろうことはみやすき道理であるから、そのような取引は民法90条に抵触し無効のものと解するを相当とする(最判昭和39年1月23日)」としている。

上記の①と④に分類され、無効と判断された。

債権の管理または回収の委託を受けた弁護士が、その手段として訴訟提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受ける行為は、たとえそれが弁護士法に違反するものであったとしても、司法機関を利用して不当な利益を追求することを目的として行われた等の事情がない限り、直ちにその私法上の効力が否定されるものではない。 2.妥当である。

判例によると、「債権の管理又は回収の委託を受けた弁護士が、その手段として本案訴訟の提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受ける行為は、他人間の法的紛争に介入し、司法機関を利用して不当な利益を追求することを目的として行われたなど、公序良俗に反するような事情があれば格別、仮にこれが弁護士法28条に違反するものであったとしても、直ちにその私法上の効力が否定されるものではない(最判平成21年8月12日)」としている。

肢1の④に分類され、無効でないと判断された。

組合契約において、組合員はやむを得ない事由があっても任意に脱退することができない旨の約定が存する場合であっても、組合員の脱退に関する民法の規定は強行規定ではないから、かかる約定の効力が否定されるものではない。 3.妥当でない。

強行法規とは、当事者が規定に反する内容の合意をした場合、その合意を無効にする法規をいう。

判例によると、「民法678条は、組合員は、やむを得ない事由がある場合には、組合の存続期間の定めの有無にかかわらず、常に組合から任意に脱退することができる旨を規定しているものと解されるところ、同条のうち右の旨を規定する部分は、強行法規であり、これに反する組合契約における約定は効力を有しないものと解するのが相当である。
けだし、やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約は、組合員の自由を著しく制限するものであり、公の秩序に反するものというべきだからである(最判平成11年2月23日)」としている。

契約が公序に反することを目的とするものであるかどうかは、当該契約が成立した時点における公序に照らして判断すべきである。 4.妥当である。

公序良俗の内容は、時間の経過とともに変化する可能性があり、法律行為の当時は、公序良俗に反していなかったが、その後に法律行為の内容が公序良俗に反することがある。

これについて判例は、「法律行為が公序に反することを目的とするものであるとして無効になるかどうかは、法律行為がされた時点の公序に照らして判断すべきである(最判平成15年4月18日)」としている。

男子の定年年齢を60歳、女子の定年年齢を55歳とする旨の会社の就業規則は、経営上の観点から男女別定年制を設けなければならない合理的理由が認められない場合、公序良俗に反して無効である。 5.妥当である。

判例によると、「会社がその就業規則中に定年年齢を男子60歳、女子55歳と定めた場合において、会社の企業経営上定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由が認められないときは、右就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効である(最判昭和56年3月24日)」としている。

肢1の①に分類され、無効と判断された。

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