平成29年-問44 記述式 行政法
Lv4
問題 更新:2026-01-10 17:39:30
A市は、市内へのパチンコ店の出店を規制するため、同市内のほぼ全域を出店禁止区域とする条例を制定した。しかし、事業者Yは、この条例は国の法令に抵触するなどと主張して、禁止区域内でのパチンコ店の建設に着手した。これに対して、A市は、同条例に基づき市長名で建設の中止命令を発したが、これをYが無視して建設を続行しているため、A市は、Yを被告として建設の中止を求める訴訟を提起した。最高裁判所の判例によれば、こうした訴訟は、どのような立場でA市が提起したものであるとされ、また、どのような理由で、どのような判決がなされるべきこととなるか。40字程度で記述しなさい。
正解例 行政権の主体として提起した訴訟であり、法律上の争訟ではなく、訴え却下の判決がなされる。(43字)
解説
本問は、宝塚パチンコ店建設中止命令事件(最判平成14年7月9日)を題材としている。
宝塚市の条例に基づく、建築工事の中止命令に従わない市民に対し、長が同工事を続行してはならない旨の裁判を求めた事案について、判例は「行政事件を含む民事事件において裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は、裁判所法3条1項にいう『法律上の争訟』、すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる。
国または地方公共団体がもっぱら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許されるものと解される。
したがって本件訴訟は、裁判所法3条1項にいう法律上の争訟にあたらず、これを認める特別の規定もないから、不適法というべきである。」(最判平成14年7月9日)とした。
国または地方公共団体などの行政権の主体(行政権を行使するもの)が、行政上の義務履行確保を求めて裁判を用いることは、法律に特別の規定がない限り認められないということである。