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平成27年-問35 民法 親族

Lv2

問題 更新:2023-01-30 19:32:06

婚約、婚姻および離婚に関する以下の相談に対する回答のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.<相談> 私はAとの婚約にあたりAに対して結納金100万円を贈与したのですが、結局は婚姻に至りませんでした。私はAに対して結納金100万円の返還を請求できるでしょうか。
<回答> 結納は婚姻の成立を確証し、併せて当事者間の情宜を厚くする目的で授受される一種の贈与とされています。婚姻が解消された場合には原則として返還すべきものですので、あなたには結納金の返還を請求できる権利があります。

イ.<相談> 私は事実婚状態にあったBと合意のうえ入籍することにして婚姻届を作成しましたが、提出前にBは交通事故に遭い、現在昏睡状態にあります。こうした状態でも先に作成した婚姻届を提出すれば、私はBと正式に婚姻できるのでしょうか。
<回答> 判例によれば、婚姻が有効に成立するためには、届出時点における当事者の婚姻意思が必要です。婚姻届作成後に翻意したというような特段の事情がないとしても、現在Bは意思能力を欠いた状態ですので、婚姻届を提出したとしても婚姻の効力は生じません。

ウ.<相談> 私は配偶者Cとの間に子がいますが、Cは5年前に家を出て他で生活しており、子の養育費はすべて私が負担しています。Cに対して離婚訴訟を提起するにあたり、併せてこの間の養育費の支払いを求めることができるでしょうか。
<回答> 子の監護に要する費用は、婚姻から生じる費用です。婚姻費用の請求は婚姻の継続を前提とする請求であるのに対して、離婚訴訟は婚姻の解消を目指す訴訟ですから、このように性質が異なる訴訟を一緒に行うことはできません。離婚を申し立てる前に、監護費用の支払いを求める訴えを別途提起する必要があります。

エ.<相談> 私と配偶者であるDとの婚姻関係は既に破綻しており、離婚にむけて協議を進めています。D名義のマンションを私に贈与することをDと私とは書面により合意したのですが、離婚届を提出する前日になって、Dは、この贈与契約を取り消すと言ってきました。Dの取り消しは認められるのでしょうか。
<回答> 民法の規定によれば夫婦間の契約は婚姻中いつでも取り消すことができますが、その趣旨は、夫婦間の約束事に法は介入すべきではなく、当事者の道義に委ねるべきだというものです。婚姻が実質的に破綻しているような場合にはこの趣旨は妥当しませんので、Dはマンションの贈与契約を取り消すことができません。

  1. ア・イ
  2. ア・エ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ
  解答&解説

正解 2

解説

<相談> 私はAとの婚約にあたりAに対して結納金100万円を贈与したのですが、結局は婚姻に至りませんでした。私はAに対して結納金100万円の返還を請求できるでしょうか。
<回答> 結納は婚姻の成立を確証し、併せて当事者間の情宜を厚くする目的で授受される一種の贈与とされています。婚姻が解消された場合には原則として返還すべきものですので、あなたには結納金の返還を請求できる権利があります。
ア.妥当である。

結納金の定義について判例は、結納は、婚約の成立を確証し、あわせて、婚姻が成立した場合に当事者ないし当事者両家間の情誼を厚くする目的で授受される一種の贈与であるとしている(最判昭和39年9月4日)。

婚姻が不成立の場合、結納金の返還請求が可能であるかどうかであるが、不当利得として返還されるべきものである。

<相談> 私は事実婚状態にあったBと合意のうえ入籍することにして婚姻届を作成しましたが、提出前にBは交通事故に遭い、現在昏睡状態にあります。こうした状態でも先に作成した婚姻届を提出すれば、私はBと正式に婚姻できるのでしょうか。
<回答> 判例によれば、婚姻が有効に成立するためには、届出時点における当事者の婚姻意思が必要です。婚姻届作成後に翻意したというような特段の事情がないとしても、現在Bは意思能力を欠いた状態ですので、婚姻届を提出したとしても婚姻の効力は生じません。
イ.妥当でない。

婚姻の効力が生じないとする本肢は妥当でない。

婚姻をするためには、戸籍上の届出をする意思のみならず、真に夫婦として共同生活を営む意思まで必要であるとされている(実質的意思説)。

そして婚姻は戸籍上の届出が必要な要式行為なのであるから、婚姻意思は、婚姻の合意のときだけでなく、戸籍上の届出時にも必要であると解されている。
そこで本肢のような状況であれば、婚姻が成立しないように思えるが、判例は「事実上の夫婦共同生活関係が存続していたとすれば、その届書が係官に受理されるまでの間に同人が完全に昏睡状態に陥り、意識を失ったとしても、届書受理前に死亡した場合と異なり、届出書受理以前に翻意するなど婚姻の意思を失う特段の事情のないかぎり、当該届書の受理によって、本件婚姻は、有効に成立したものと解すべきである」としている(最判昭和44年4月3日)。

<相談> 私は配偶者Cとの間に子がいますが、Cは5年前に家を出て他で生活しており、子の養育費はすべて私が負担しています。Cに対して離婚訴訟を提起するにあたり、併せてこの間の養育費の支払いを求めることができるでしょうか。
<回答> 子の監護に要する費用は、婚姻から生じる費用です。婚姻費用の請求は婚姻の継続を前提とする請求であるのに対して、離婚訴訟は婚姻の解消を目指す訴訟ですから、このように性質が異なる訴訟を一緒に行うことはできません。離婚を申し立てる前に、監護費用の支払いを求める訴えを別途提起する必要があります。
ウ.妥当でない。

条文によると、夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担するとされている(民法760条)。

子の監護に要する費用は、婚姻費用であり、判例によると、過去に遡って、その額を形成決定することが許されない理由はないとされている(最大決昭和40年6月30日)。
さらに判例によると、離婚の訴えにおいて、別居後単独で子の監護にあたっている当事者から他方の当事者に対し、別居後離婚までの期間における子の監護費用の支払を求める旨の申立てがあった場合には、裁判所は、離婚請求を認容するに際し、当該申立てに係る子の監護費用の支払を命ずることができるものと解するのが相当であるとしている(最判平成9年4月10日)。

つまり、離婚の訴え以外に、監護費用の支払いを求める訴えを別途提起する必要はないのである。

<相談> 私と配偶者であるDとの婚姻関係は既に破綻しており、離婚にむけて協議を進めています。D名義のマンションを私に贈与することをDと私とは書面により合意したのですが、離婚届を提出する前日になって、Dは、この贈与契約を取り消すと言ってきました。Dの取り消しは認められるのでしょうか。
<回答> 民法の規定によれば夫婦間の契約は婚姻中いつでも取り消すことができますが、その趣旨は、夫婦間の約束事に法は介入すべきではなく、当事者の道義に委ねるべきだというものです。婚姻が実質的に破綻しているような場合にはこの趣旨は妥当しませんので、Dはマンションの贈与契約を取り消すことができません。
エ.妥当である。

条文によると、夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができるとされている(民法754条)。
夫婦間においては愛情の担保があるため、取り消されたとしても、不幸な結果にはならないであろうことが民法754条の根拠である。

では、夫婦関係が実質的に破綻している場合はどうであろうか。
判例は、夫婦関係が破綻に瀕しているような場合になされた夫婦間の贈与はこれを取り消しえないと解すべきであるとしている(最判昭和33年3月6日)。
夫婦関係が破綻している場合は、既に愛情がないのであるから、第三者間の契約と同様に考えるのである。

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