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  4. 問20

平成24年-問20 国家賠償法

レベル2

問題 更新:2019-03-02 16:18:35

国家賠償制度に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。

  1. 国家賠償法4条に定める「民法の規定」には失火責任法*も含まれるが、消防署職員の消火活動上の失火による国家賠償責任については、消防署職員が消火活動の専門家であることから、失火責任法の適用はない。
  2. 国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動が含まれるが、課外クラブ活動中に教師が生徒に対して行う監視・指導は「公権力の行使」には当たらない。
  3. 税務署長のした所得税の更正処分が、税務署長が所得金額を過大に認定したとして判決によって取り消された場合、当該更正処分は直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受ける。
  4. 警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が事故を起こして第三者に損害を与えた場合、損害の直接の原因が逃走車両の運転手にあるとしても、当該追跡行為は国家賠償法1条1項の適用上違法となり得る。
  5. 同一行政主体に属する数人の公務員による一連の職務上の行為の過程で他人に損害が生じた場合、被害者が国家賠償を請求するためには、損害の直接の原因となった公務員の違法行為を特定する必要がある。

(注)* 失火ノ責任ニ関スル法律

  解答&解説

正解 4

解説

1.誤り。

消防職員の消火ミスに係る火災の再燃について判例は「公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任については、国家賠償法4条により失火責任法が適用され、当該公務員に重大な過失のあることを必要とするものといわなければならない。」としている(最判昭和53年7月17日)。

2.誤り。

国家賠償法1条は公務員の違法な公権力の行使によって生じた損害を金銭的に賠償する私人救済の制度であるが、ここにいう「公権力の行使」については、権力的作用のみならず、非権力的作用であっても公益的な行政作用はこれに含まれるとされており、その対象は純粋な私経済作用及び国家賠償法2条の対象となるものを除いたすべての活動であると解されている(広義説、東京高判昭和56年11月13日)。
公権力の行使に含まれる非権力的作用としては、公立中学校の課外クラブ活動中の事故における教師の監督責任等、教師の教育活動などがこれにあたる(最判昭和58年2月18日、最判昭和62年2月6日)。
一方、公権力の行使に含まれない純粋な私経済作用としては、市営バス、市営地下鉄の運営や事務用品の購入などがこれにあたり、賠償責任が発生した場合は民法によって救済される。

課外クラブ活動における生徒同士の喧嘩によって失明した事案において判例は、国家賠償請求の対象であることを前提にして、「課外のクラブ活動であっても、それが学校の教育活動の一環として行われるものである以上、その実施について、顧問の教諭を始め学校側に、生徒を指導監督し事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務のあることを否定することはできない。しかしながら、課外のクラブ活動が本来生徒の自主性を尊重すべきものであることに鑑みれば、何らかの事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のある場合は格別、そうでない限り、顧問の教諭としては、個々の活動に常時立会い、監視指導すべき義務までを負うものではない」とした(最判昭和58年2月18日)。

3.誤り。

抗告訴訟上の違法と国家賠償法上の違法は、同一の内容なのか、それとも別の内容なのかという問題がある。
この点、更正処分(税金を加算する行政処分)の取消訴訟で違法と判断された事案でその後の国家賠償請求訴訟で判例は「税務署長のする所得税の更正は、所得金額を過大に認定していたとしても、そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、税務署長が資料を収集し、これに基づき課税要件事実を認定、判断する上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合に限り、右の評価を受ける」とした上で違法ではないとした(最判平成5年3月11日)。
本判例の考え方は、違法性の概念が取消訴訟と国家賠償では異なるという立場に立って(「違法性二元論」や「違法性相対説」と呼ばれる)、職務上通常尽くすべき注意義務違反の有無の観点から国家賠償法上の違法性を判断(「職務行為基準説」と呼ばれる)したものである。

4.正しい。

パトカーによる追跡中の事故について判例は「追跡行為が違法であるというためには、右追跡が当該職務目的を遂行する上で不必要であるか、又は逃走車両の逃走の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無及び内容に照らし、追跡の開始・継続若しくは追跡の方法が不相当であることを要するものと解すべきである。」としている(最判昭和61年2月27日)。
本判例では、その結論として原告の国家賠償請求を棄却しているが、国家賠償請求が認められる要件を示しているため、国家賠償法1条1項の適用上違法となることもある。

5.誤り。

国家賠償法1条における賠償責任の性質は、代位責任とするのが判例の立場であり、すなわち公務員個人が負っている責任を国が代位したものとされている(※1参照)。
代位責任説を厳密に貫こうとするならば、元の責任を明らかにするため、どの公務員のどのような違法行為によるものであるかの特定が必要ともいえるが、判例は、国民の権利保護・被害者救済という観点を重視して、公務員による一連の職務上の行為の過程で生じているなどの要件の下に、加害行為不特定の故をもって損害賠償責任を免れることができないとし、柔軟な対処がなされている(※2参照)。

※1 最高裁で代位責任説を明示判断したものはないが、最判昭和44年2月18日は「公務員が違法な行為を行ったときは、国家の行為ではなく、公務員個人の行為であって当該公務員が責任を負うべきであるが、当該公務員のみに責任を負担させていたのでは、その個人財産(責任財産)に限度があるので、被害者の救済が十分に行われない虞があり、また、公務員の活動が萎縮して十分な行政権の行使ができなくなる虞がある。そこで、公務員の使用者である国が公務員個人に代わってその損害賠償責任を負担することにしたものである」とした原審判決を維持している。

※2 「具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものであるかを特定することができなくても、右の一連の行為のうちのいずれかに行為者の故意又は過失による違法行為があったのでなければ右の被害が生ずることはなかったであろうと認められ、かつ、それがどの行為であるにせよこれによる被害につき行為者の属する国又は公共団体が法律上賠償の責任を負うべき関係が存在するときは、国又は公共団体は、加害行為不特定の故をもって国家賠償法又は民法上の損害賠償責任を免れることができない」(最判昭和57年4月1日)

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