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平成24年-問8 行政法 行政総論

Level3

問題 更新:2019-07-11 15:37:45

行政法における信頼保護に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。

  1. 地方公共団体が、将来にわたって継続すべき一定内容の施策を決定した後に、社会情勢の変動等が生じたとしても、決定された施策に応じた特定の者の信頼を保護すべき特段の事情がある場合には、当該地方公共団体は、信義衡平の原則により一度なされた当該決定を変更できない。
  2. 公務員として採用された者が有罪判決を受け、その時点で失職していたはずのところ、有罪判決の事実を秘匿して相当長期にわたり勤務し給与を受けていた場合には、そのような長期にわたり事実上勤務してきたことを理由に、信義誠実の原則に基づき、新たな任用関係ないし雇用関係が形成される。
  3. 課税処分において信義則の法理の適用により当該課税処分が違法なものとして取り消されるのは、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお、当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に限られる。
  4. 課税庁が課税上の取扱いを変更した場合において、それを通達の発出などにより納税者に周知する措置をとらなかったとしても、そのような事情は、過少申告加算税が課されない場合の要件として国税通則法に規定されている「正当な理由があると認められる」場合についての判断において考慮の対象とならない。
  5. 従来課税の対象となっていなかった一定の物品について、課税の根拠となる法律所定の課税品目に当たるとする通達の発出により新たに課税の対象とすることは、仮に通達の内容が根拠法律の解釈として正しいものであったとしても、租税法律主義及び信義誠実の原則に照らし、違法である。
  解答&解説

正解 3

解説

1.誤り。

A会社へB村の村長が積極的に工場建設を促して工場誘致し、A会社は設備の発注等具体的な準備を進めたが、後に住民反対運動を経てB村の新村長が、その協力を拒否したためにA会社は工場建設を断念した事案について判例は、「勧告等に動機づけられて前記のような活動に入った者がその信頼に反して所期の活動を妨げられ、社会観念上看過することのできない程度の積極的損害を被る場合に、地方公共団体において右損害を補償するなどの代償的措置を講ずることなく施策を変更することは、それがやむをえない客観的事情によるのでない限り、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして違法性を帯び、地方公共団体の不法行為責任を生ぜしめるものといわなければならない。」としている(最判昭和56年1月27日)。
したがって、損害を補償するなどの代償的措置を講ずれば、一度なされた決定を変更できる。

2.誤り。

公務員として採用された者が、禁錮以上の刑に処せられたという失職事由が発生した後も約26年11ヵ月にわたり勤務を継続したという事案について判例は、国が当該公務員は国家公務員法に基づき失職した旨を主張しても、当該公務員が失職事由の発生を隠して事実上勤務を継続し給与の支給を受け続けていたにすぎないという事情の下では、信義則に反し権利の濫用に当たるということはできないとしている(最判平成19年12月13日)。
したがって、新たな任用関係ないし雇用関係が形成されるわけではない。

3.正しい。

「法の一般原理である信義則の法理の適用により、右課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても、法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、右法理の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて右法理の適用の是非を考えるべきものである。」(最判昭和62年10月30日)

4.誤り。

ストックオプションの権利益を一時所得で申告し、更正処分を受けた事案で判例は「課税庁が従来の取扱いを変更しようとする場合には、法令の改正によることが望ましく、仮に法令の改正によらないとしても、通達を発するなどして変更後の取扱いを納税者に周知させ、これが定着するよう必要な措置を講ずべきものである。」とし、当該事案について過少申告加算税を賦課することは不当又は酷になるから、国税通則法にいう「正当な理由」があるとしている(最判平成18年10月24日、最判平成19年7月6日)。
したがって、納税者に周知する措置をとらないことは、国税通則法の「正当な理由があると認められる」場合の判断考慮の対象となる。

5.誤り。

パチンコ球遊器は当時課税対象外であったのが、通達を機縁として課税対象になったことについて判例は「課税がたまたま所論通達を機縁として行われたものであっても、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、本件課税処分は法の根拠に基く処分と解するに妨げがな(い)」(最判昭和33年3月28日)とし、すなわち、通達の内容が法の正しい解釈に合致している以上、その課税は法の根拠に基づく処分であるから、租税法律主義及び信義誠実の原則に反しないとしている。

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