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令和4年-問22 行政法 地方自治法

Lv3

問題 更新:2023-01-17 10:13:26

A市議会においては、屋外での受動喫煙を防ぐために、繁華街での路上喫煙を禁止し、違反者に罰金もしくは過料のいずれかを科することを定める条例を制定しようとしている。この場合に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. この条例に基づく過料は、行政上の秩序罰に当たるものであり、非訟事件手続法に基づき裁判所が科する。
  2. 条例の効力は属人的なものであるので、A市の住民以外の者については、この条例に基づき処罰することはできない。
  3. この条例で過料を定める場合については、その上限が地方自治法によって制限されている。
  4. 地方自治法の定める上限の範囲内であれば、この条例によらず、A市長の定める規則で罰金を定めることもできる。
  5. この条例において罰金を定める場合には、A市長は、あらかじめ総務大臣に協議しなければならない。
  解答&解説

正解 3

解説

この条例に基づく過料は、行政上の秩序罰に当たるものであり、非訟事件手続法に基づき裁判所が科する。 1.妥当でない

前半部分は正しいが、条例に基づく過料を科することは、裁判所ではなく普通地方公共団体の長が担っているため、妥当ではない。

秩序罰とは、行政上の義務違反のうち、軽微な違反行為について過料を科すものをいう。
秩序罰による過料の場合は、刑罰ではないため、刑法総則及び刑事訴訟法の適用はうけず、法令に別段の定めがある場合を除き、法律に根拠がある過料の場合は地方裁判所が非訟事件手続法の定めに従って科すことになり、本問のように条例に根拠がある過料の場合には、地方自治法に基づいて地方自治体の長が行政処分によって科すことになる。

なお、地方自治体の長が過料の処分をしようとする場合には、あらかじめ告知と弁明の機会を付与しなければならず(地方自治法255条の3)、指定期限までに納付がない場合には地方税の滞納処分の例により強制徴収することができる(地方自治法231条の3第1項・3項)。

条例の効力は属人的なものであるので、A市の住民以外の者については、この条例に基づき処罰することはできない。 2.妥当でない

条例の効力は「属地的なもの」であるので、たとえA市の住民以外の者であっても、A市域内の繁華街で路上喫煙に及んだ場合、本条例に基づき処罰することができる。

「条例を制定する権能もその効力も、法律の認める範囲を越えることを得ないとともに、法律の範囲内に在るかぎり原則としてその効力は当然属地的に生ずるものと解すべきである。
それゆえ本件条例は、新潟県の地域内においては、この地域に来れる何人に対してもその効力を及ぼすものといわなければならない。」(最判昭和29年11月24日)

この条例で過料を定める場合については、その上限が地方自治法によって制限されている。 3.妥当である

普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる(地方自治法14条3項)とし、上限が地方自治法によって制限されている。

地方自治法の定める上限の範囲内であれば、この条例によらず、A市長の定める規則で罰金を定めることもできる。 4.妥当でない

本条例にかえて長の規則で違反者に罰金を科することは許されない。

普通地方公共団体の長は、5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができるが(地方自治法15条2項)、罰金(刑罰の一種)を科する旨の規定を設けることはできない。

なお、条例中に罰金を課する旨を定めることは認められているが、長が普通地方公共団体の規則中に罰金を科することを認める条文はない。

この条例において罰金を定める場合には、A市長は、あらかじめ総務大臣に協議しなければならない。 5.妥当でない

「あらかじめ総務大臣に協議しなければならない」としている点が妥当でない。

条例中に罰金を定める場合には、「国民の公選した議員をもって組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから、条例によって刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておればたりると解するのが正当」(最判昭和37年5月30日)とされており、地方自治法14条3項で、普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる、と具体的に授権している。

したがって事前に総務大臣に協議せずに条例で罰金を定めることができる。

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