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令和4年-問12 行政法 行政手続法

Lv2

問題 更新:2023-01-17 10:04:07

行政手続法(以下、本問において「法」という。)が定める不利益処分の手続に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 申請拒否処分は、申請により求められた許認可等を拒否するものとして、法の定義上、不利益処分に該当するので、それを行うにあたっては、申請者に対して意見陳述の機会を与えなければならない。
  2. 行政庁は、不利益処分がされないことにより権利を害されるおそれがある第三者がいると認めるときは、必要に応じ、その意見を聴く機会を設けるよう努めなければならない。
  3. 弁明の機会の付与は、処分を行うため意見陳述を要する場合で、聴聞によるべきものとして法が列挙している場合のいずれにも該当しないときに行われ、弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明書の提出により行われる。
  4. 法が定める「聴聞」の節の規定に基づく処分またはその不作為に不服がある場合は、それについて行政不服審査法に基づく審査請求をすることができる。
  5. 聴聞は、行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰するが、聴聞を主宰することができない者について、法はその定めを政令に委任している。
  解答&解説

正解 3

解説

申請拒否処分は、申請により求められた許認可等を拒否するものとして、法の定義上、不利益処分に該当するので、それを行うにあたっては、申請者に対して意見陳述の機会を与えなければならない。 1.妥当でない

申請により求められた許認可等を拒否する申請拒否処分は、不利益処分には該当しないので、申請者に対して意見陳述の機会を与える必要はない。

行政手続法上、不利益処分とは、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいうが(行政手続法2条4号本文)、申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分は除かれる(行政手続法2条4号ロ)。
行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、不利益処分の名あて人となるべき者について、意見陳述のための手続を執らなければならないが(行政手続法13条)、上記のように申請により求められた許認可等を拒否するものは、不利益処分に該当しないため、申請者に対して意見陳述の機会を与える必要はない。

行政庁は、不利益処分がされないことにより権利を害されるおそれがある第三者がいると認めるときは、必要に応じ、その意見を聴く機会を設けるよう努めなければならない。 2.妥当でない

公聴会の開催は、申請に対する処分における申請者以外の者に対応する努力義務の意見陳述の手続きであって(行政手続法10条)、不利益処分における意見陳述の手続きとしては、公聴会の開催について規定されていない。

なぜなら、不利益処分における聴聞では、利害関係を有するものも参加させることができるので(行政手続法17条1項)、そもそも公聴会の開催をする必要がないからである。

なお、不利益処分とは、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう(行政手続法2条4号本文)。

弁明の機会の付与は、処分を行うため意見陳述を要する場合で、聴聞によるべきものとして法が列挙している場合のいずれにも該当しないときに行われ、弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明書の提出により行われる。 3.妥当である

行政庁は、不利益処分をする場合は、原則として聴聞又は弁明の機会の付与の手続を執らなければならない(行政手続法13条1項)。

行政庁が不利益処分をしようとするときに原則として執らなければならない意見陳述のための手続としては、聴聞と弁明の機会の付与があるが、聴聞は許認可等の取消しや資格又は地位のはく奪といった重大な不利益処分が対象となっており(行政手続法13条1項1号)、そのほかの比較的軽微な不利益処分は、弁明の機会の付与が対応している(行政手続法13条1項2号)。

弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明を記載した書面(弁明書)を提出してする(行政手続法29条1項)。原則として、書面審理主義である。
また、弁明をするときは、証拠書類等を提出することができる(行政手続法29条2項)。

法が定める「聴聞」の節の規定に基づく処分またはその不作為に不服がある場合は、それについて行政不服審査法に基づく審査請求をすることができる。 4.妥当でない

「行政不服審査法に基づく審査請求をすることができる」としているので妥当でない。

聴聞の規定に基づいてした処分又はその不作為には、行政不服審査法による審査請求をすることができない(行政手続法27条)。

たとえば聴聞において、主宰者が関係人の参加を不許可処分した場合(行政手続法17条1項)、行政庁が文書の閲覧請求を拒否処分した場合(行政手続法18条1項)、主宰者が補佐人の出頭を不許可処分した場合(行政手続法20条3項)など、これらの聴聞の過程で個々に行われる処分(中間的付随的処分)について審査請求できないということである。
仮に中間的付随的処分に瑕疵があっても、最終的な不利益処分を審査請求又は取消訴訟で取り消せば、当事者の権利利益は保護されるため、手続の遅延・行政事務負担増大という点に配慮して、当該制限を設けたものである。

なお、聴聞の規定に基づく処分又は不作為について審査請求ができない以上は、当然に当該処分をする場合に審査請求に関する教示の義務は生じないことになる。

聴聞は、行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰するが、聴聞を主宰することができない者について、法はその定めを政令に委任している。 5.妥当でない

「聴聞を主宰することができない者について、法はその定めを政令に委任している」という点が妥当でない。
聴聞主宰者の欠格事由は行政手続法19条2項で定めている。

聴聞は、行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰する(行政手続法19条1項)。
次の者は、聴聞を主宰することができない(行政手続法19条2項)。

① 当該聴聞の当事者又は参加人
② ①の配偶者、四親等内の親族又は同居の親族
③ ①の代理人又は補佐人
④ ①~③であったことのある者
⑤ ①の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人
⑥ 参加人以外の関係人

なお、上記の聴聞主宰者の欠格事由は、聴聞の当事者を含めた私人側に関係する者だけであり、処分をする行政庁側に関与がある者については、欠格事由などの制限する規定は置かれてない。
そのため条文上は、当該不利益処分に関与した担当者を行政庁が主宰者として指名することも可能であるが、直接関与した担当者を主宰者にすれば、聴聞への信頼は失われその機能を無意味にしてしまうおそれがあるので、実務上は主宰者から除外すべきであろう。

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